幕間1
「どうだい、彼女の話は。何か思うところがあったかい?」
三人の男に老婆が語りかける。
若い男と老いた男は特に反応する様子はなかったが、幼い男は何かを言おうとして少し顔を上げた。
しかしそのままゆっくりと下げると、先程までと同じように俯いた。
その様子の真意を知ってか知らずか、老婆は話し始める。
「まだ話は終わっていないからね。私が話すのはあと二つ。それをすべて聞いてからでも遅くはないだろう」
「ここは」
先程までずっと黙っていた若い男が口を開いた。
「ここは何なんだ。俺の知っている場所なのか」
強い口調で老婆に問いかける。
けれどもその様子に気圧される様子はなかった
「ここかい? ここはね、あんた達それぞれに心当たりがあるんじゃないのかい」
「心当たりは、ある。だが……こんなに朽ち果てているとは」
「僕も、心当たりはあります」
幼い男も話し始める。
「でもここが僕の知っている場所かどうかの判断はつきません。そして、」
顔をあげて老婆を見る。
「あなたが誰なのかも」
二人の男に鋭い視線を向けられても老婆は全く動じなかった。
「私が誰でここがどこかだって? わざわざ聞かなくてもあんた達はわかっているだろうに。その質問に答えるのはとても簡単だけれども、それを答えてもあんたたちは納得できるとは思えないねえ」
柔らかな笑みを浮かべながら老婆は話す。
幼い男と若い男はそれっきり黙ってしまった。
「さて、それじゃあ話そうかね。二人目の“彼女”の話をね」
老いた男は黙っていた。