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 人肉の表記に国名までしか入らない理由は、誰がサンプル提供者かわからないようにするためだ。


 人サンプルの培養肉を作るようになって、実際、人肉を食べること食べられることによる被害は減った。


 安全安心な肉なわけだが、それでも世の中に異常者はいるのだ。


『連続食人事件』


 まさにこれも言えよう。


 連続と言っているが、実際は一人で何もかもやっているわけではない。

 模倣犯がいて事件を起こしている。


「たしか」


『JP H 1897776』

『JP H 1582221』

『JP H 1740021』


 チラシの裏に書かれてあった番号。

 

 もしこの中のどれがおか子だとしたら一番大きい番号だろう。


 人気の肉はわかりやすい数字がつけられる。もっとも最初からわかりやすい数字というわけではない。普通、番号が大きいほど新しく登録されたものだ。


 わかりやすい番号は、人気ブランドのために最初から欠番になっている。一定数の人気が出ると、最初の番号から変更になる。

 

『JP H 1740021』だと、登録は半年以上前になっている。

 培養肉は、必ず番号を記載しなくてはいけない。どの番号代がいつごろでてきたのかはすぐに調べることが出来る。


 もし、おか子が私に嘘を言っていない限り、彼女の登録は今年の五月以降になる。

 

 念のため、私は培養肉専門サイトにつなげる。


『ここ数か月羽振りが良かった』

 

 これが本当だったら、まさに私と会ってすぐサンプルを提供しに行ったのだろう。

 

 培養肉サンプル登録から合格に至るまで約二週間。さらに製品化までは一か月かかる。

 

 実は肉として売れるか売れないかは、最初の製品化までにほぼ決まっているといっていい。


 その昔、牛が等級を付けられて売られていったように、肉の味も決まっている。


 専門家に美味いと判断された培養肉は、まず高級料理店におろされ、そこでの売れ行きを見られる。

 売れ行きが良ければ、ファミレスやスーパーなど量販店の店頭に並ぶ。


 培養肉に人気の差はあれど貴賤の差はない。


 どんなに美味い肉でも、製造過程は一緒なのだ。


 だから高級店では新しく登録された肉をどこよりも先に出すことで、差別化を図る。


 私は逆算して、ここ四か月以内で新しい肉を入れた高級料理店を探す。


 データベース化したサイトだが、どこまで本当かわからない。

 しかし、何の情報がないよりはいい。


 おか子がたとえどんな上質のサンプルを提供したとしても、最初の一年はそうそう量販店には出回らないのだ。

 たとえサンプルが合格したとして、市場に回る肉は全体の一割に満たないとされている。


 まさに宝くじを当てたことになる。


「これと、これは最近過ぎる。うーん、これは」

  

 一人ごちながら、おか子の可能性がある番号を調べる。


 五つ位に絞り込み、肉を使用しているレストランを検索する。


 どれも星付き。

 一食で一か月分の食費が飛ぶ金額もざらだ。


 さてここでもう一つ絞り込む方法を考えよう。


 この時点で私はおか子がどんな人物か知っている。

 彼女を殺した犯人は、彼女を知っていたのだろうか。

 

 仮定として、おか子を知らない犯人とする。美味な培養肉のサンプル提供者がおか子であると特定するために何が必要か。


 私は、生肉を提供する店を中心に選んでみた。

 

 培養肉は非加熱でも食べられる、安全安心の食材だ。


 肉の刺身を提供する店は三件に絞られた。さらに、使っている培養肉は二種類にまで絞られる。


 私は財布と銀行口座の残りを計算し、ゆっくり重い腰を上げる。


 今月は冷蔵庫の残り物で我慢。

 塩むすびを持って、会社にも通ってやる。


 私は、犯人を捕まえると決めた。


 必ずやり遂げなくては。

 


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