表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カヲルの場合

作者: ぬるでば

「なんで君はこんな店で働いてるんだ」


 その客は個室に入るなり説教をかましてきやがった。


「エッチが好きだから? ふふ」


 心にもないセリフと少し恥じらうような笑顔がすんなりと出てくる。

 疑問形にするのは、自己意識が低いバカな奴だと思わせるためだ。


 鳥肌が立ちそうな嫌悪感に耐えながらそいつの睾丸を舐め上げた。


「君くらいの器量がある娘がこんなところで働いてちゃダメだ。もっと自分を大事にしなさい」


 風俗店で自分の金玉を舐めさせながら説教なんかしても説得力がない。

 自分を大事にさせたいなら店に来るな。


 あ、でも来てくれないと稼ぎが減るから来い。


「お客様は、いつもびしっと叱ってくださるから素敵です」


 鼻にかかった声でほめてやった。


「ん、そうか? まあな、やっぱり人生経験をつまないといかんよ君も」


 ケツの穴を舐めさせながら言うことじゃないだろう。


 こいつは田舎者のくせに金だけは持っている。

 たまに来ては店の娘に説教をして悦に入っている。

 風俗店で説教を垂れることでしかアイデンティティを保てないような男だというのは店の娘なら全員知っている。


 だから他の娘はこいつを嫌って相手をしたがらない。


 店に入ってすぐ、フリーで来店したこいつの相手をさせられた。


 こいつがみんなから嫌われていることを誰も教えてくれなかった。


「あら、お客様、雰囲気が素敵でいらっしゃいます」


 いいか覚えとけよ。

 風俗店でこういうふわっとしたほめ方をされたときは、他にほめるところが見つからないからだ。


「そうかそうか、私は雰囲気がいいんだな」


 ところが、こいつは遊び慣れてないのか、そのほめ言葉を真に受けやがった。


 それ以来、ずっと指名され続けてる。

 また今日も指名してきやがった。


 今日はもう4人も客を回して疲れてるんだ。


「性病で入院したって言っといて」


 仮病を使った。


「なんだって! よし私が見舞ってやる。どこの病院だ?」


 逆にそいつは熱を帯びた。

 逆効果だったか。


「面会謝絶だから会えない。だけど入院するとき『あのお客様にもう一度会いたかった』と泣いていたって言っといてよ」


 言いながら笑ってしまった。


「本当かっ! カヲル、そんなに私のことを…… かわいそうなことをした」


 とうとう店の中で泣き出しやがった。


「おい、おやじ! さっさと帰れよ。今日は疲れてんだよ。また出直して来い!」


 我慢できずにそいつに怒鳴ってやった。


「か、かおる……」


 そいつはウィッグを取った俺を見て腰を抜かしやがった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ