31.王都奪還
遠目に王都が見えるところまでやって来た。小隊に分散しての早駆けして来たが、ここから先は敵地に挑むようなものだ。心してかからなければならない。
小隊は事前に打ち合わせした通り、6箇所に分散し、それぞれ10名程度で隊を成している。
王都の門は、通常通り開け放たれており、商人の行き来もあるようだ。衛兵の数もいつもと変わらず・・・これは司教の見立て。
「ここから先は、相手に気づかれると命取りとなってしまいます。最小人数で任務を遂行しましょう」
「まずは、私が王都に潜入してまいります。作戦はその結果で立てましょう」
司祭=トーマスは、そう言うと馬に跨った。
「司祭様少しお待ちください・・上位の聖なる加護」
カオルが魔法を発動すると、光が司祭と馬を包み込んだ。そして、小袋を司祭に手渡した。
「精神を正常化するポーションです。時間がなかったので3本しかありませんが、非常時は使用してください」
司祭はカオルに礼を言うと、王都に向かって馬を走らせた。
「司祭様一人で大丈夫でしょうか?」
銀次はカオルに問いかけたが、カオルの表情からは不安は一切感じていないようだ。
「貴方のスキル同様、司祭様もスキルをお持ちのようです。心配は要らないでしょう」
そう言うとカオルは木陰に隠れるように腰を下ろした。それに倣うよう、他の者も司祭の帰りをひっそりと待つこととした。
2時間ほど待ったところで、トーマス司祭が一人の女性を連れて帰ってきた。
2時間ほど遡る・・・
王都内の市街地は至って平常通り。衛兵も特にかわりは無かった。
王宮の方には兵士が集まっているが、特に混乱はない。小隊毎に鎧が異なることから、貴族の私兵と思われる。
王宮の中でも特に混乱は起こっていない。使用人達は平常時と変わらず働いているようだった。
そして、司祭は事件が起こったとされる謁見の間に忍び込んだ。
謁見の間には大勢の貴族が集まっていたが、玉座には国王が座り、その近くにナベが立っていた。
幸い、国王とその周りにいる貴族達に注目が集まっていたので、司祭は、密かにナベの側まで近づくことができた。
そして念のためにナベにポーションを振りかけた。
「うわっ!」
ナベは振り向きざまに拳を振り抜くが・・・すんでのとこ司祭に気づき事なきを得た。
「司祭様?」
「・・・ふぅ。危ないところでした」
司祭は引きつった顔で笑顔をつくると同時に、ナベが正常である事に安堵した。
「どうやら、精神異常回復のポーションは不要だったようですね・・・」
ナベは頷き、「あぁ、異常はねえし今朝がた王宮の解放に成功したところですよ。 だが・・・」
「こちらの方は?」
赤髪の美女=エルザ公爵が、見知らぬ客に気づき声をかけてきた。
「こちらは聖墳墓教会のトーマス司祭です」
聖墳墓教会と聞き、エルザの目が鋭く光る。
トーマスは軽くお辞儀をし、その後ろに立つ人物に気づいた・・・国王だ。
「この度のことは使いの者より聞いております。謝って済む事ではございませんが、申し訳ございません」
司祭は膝をおり深く頭を下げた。
「貴様はなぜで此処にいるのだ?」
司祭は、銀次の一報を受け王都奪還の為、街の衛兵と探求者ギルドに協力し王都近郊まで来ていること。
王都内の状況を調査する為、潜入してきたことを説明した。
「それにしても、お主が洗脳される可能性あったのではないか? 大丈夫だと言う確信でもあったのか?」
エルザ公爵は、大司教とグルではないかと疑っている様だ。
「その点は、確かに安心しておりました」チラリとナベの方を見た後、「教会にいるカオルと言う女性に精神支配を防ぐ魔法をかけてもらっておりましたので」
エルザ公爵を始め近くにいた貴族達から、「そんな魔法があるなど信じられない」と言う様な言葉が発せられた。
「あ〜・・その点で言うと、恐らくホントの事です。カオルという女性は俺のパーティーメンバーなんで」
「司祭様、すまないがみんなを連れてきてくれないですか? 俺が行ってもいいが・・・精神支配されてると疑われてもいけないし」
「では私が同行しよう」
「えっ!」
エリザ公爵が自ら同行する事を申し出た。
<王都郊外>
「お待たせしました。 皆さん、すぐに王都へ参りましょう。」
司祭は馬から降りると、他の小隊へも伝令を伝えるよう、衛兵に指示した。
「司祭様、そちらの女性はどなたですか?」
「これは失礼しました。こちらは、公爵家のエルザ様です」
「カオルさん、王宮で大司教に洗脳されていた人です!」
銀次が叫ぶ。
「既に、洗脳は解けています。 何なら、魔法をかけてみても結構だが?」
さぁ早く魔法をかけなさい! と言わんばかりに、カオルを見つめた。
「・・・では、確認させていただきます。 上位の聖なる加護」
エルザ公爵が光に包まれる。
「ほぉ・・・、確かに暖かく包まれる様な感覚だ。 どうだ? 疑いははれたか?」
カオル達は、既に精神支配から解放されている事を確認し、エルザは未知の魔法の存在を確認したのだった。




