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21.大豊饒祭

大亀が置き土産として落としていった“糞”。


傍迷惑な・・・と思ったのも束の間、これが大変な恵みの“糞”だと気づくのにそんなに時間はかからなかった。



大亀が去るとそれはやって来た。


甲高い声が聞こえたかと思うと、悠々とそいつは飛んできた。黒い体に稲妻を纏った特大サイズの鳥。時折翼に纏った(イカズチ)が周囲に大きく広がり、それが地面へと注がれる。そして此方を見る鮮やかな朱色の目が遠くからでも分かる。


ー サンダーバード ー

アメリカ先住民に伝わる霊鳥を思い出した。 上空を旋回し様子を伺っている様だった。堂々と空を飛ぶ姿に危機感を忘れ見惚れていると、そいつは急に降下し始めた。 此方に向かってくるかと気を引き締め直したが、そうではなかった。 そいつは何かが落としたかと思うと、急上昇し飛び去ってしまった。


落とされた何かは、大亀の“糞”に 《ドボン》 と吸い込まれた。


(何だったんだ?)

サンダーバードから落ちた物に興味はあったが、あの“糞”の山から探し出そうという気にはなれなかった。

それから10分程経った頃だろうか、地中の方からズズズと何やら音と振動が響いてきた。

それは徐々に大きくなりやがて、地表にも変化が現れてきた。大亀の“糞”を中心に、地割れが起こった。

割れた穴からは植物の根の様なものが現れ、それは更に地中へと潜り、四方八方へと広がっている様だった。勿論、この植物も俺のいるところへの侵入はできないらしい。地割れすらこのエリアでは起こっていない。


振動が始まり30分程経った頃だっただろうか。大亀の“糞”にも変化が見られ、山の様だったその姿はいつのまにか高さが失われ、丘の様になっており水分も失われている様だった。

そして、《ズドン》と糞が飛び散ったかと思うと、“糞”から噴き出したかの様に、幹が天へと伸びていった。


蔓が伸びたのであれば間違いなく、ジャックと豆の木を想像したであろうこのシチュエーション。

しかし、見たこともない木だ。はるか上空で広範囲に広がる枝。

(数キロはあろうかと思われるくらい広がっているが、今もって拡がり続けている様だ)


そして、どうやら枝の下には赤い花が咲いている様で、その緑と赤のグラデーションが綺麗だ。


幹には蔦が張り巡らされている様に見えるが、どうやら蔦ではなくこの木の枝の様である。上に行くにしたがい密集している様に見える。 そしてその幹だが直径がどのくらいあるのかは全く見て取れない。


そうして、木を眺めていると、時折枝の合間から先ほどのサンダーバードが見えた。

その事から落ちてきた何かはこの木の種子であり、意図的にサンダーバードが植えたものだと判断する。


枝の下では無数の羽虫が飛んでおり、周囲の森や草原から今も集まってきている様子が見える。


そして地上では・・・

無数の気配がこの木に向かって集まってきている。先程食べた蛙もそのうちの一つ。無数の蛙が器用に張り付いて登っているのが見えた。だが、その下から、20メートルはあろうかという大きな蛇が素早く木を登り、蛙を丸のまま飲み込んだ。


蛇の他にも大型の蜥蜴や巨大なダンゴムシの様なものが次々にきに登っていっている。


そして、人型のそれ。


そいつは唐突に現れた。

翼をはためかせ悠然に降りてきた。


『久しぶりに 豊饒祭が始まったかと思えば、貴方でしたか』

そう言いつつ降りてきたその者は、此処へ連れてきたルキフグス同様の存在だと理解した。

一見少年のようなその姿、額からは角が2本ある。皮膚は浅黒いが、間違いないだろう。


『はじめまして 僕はバエル。 ルキフグスのからこの地と軍団を任されているんだ。あそこの蛙たちは僕のペット達』

木を登る蛙を指差してバエルは言った。


(あちゃー ・・・)

『あぁ・・ 殺しちゃいました? 別にかまわないよ』


「いえ・・・食っちゃいました・・・すみません」


『・・・べ、別に構いまわないよ・・・ハハハ』

呆れ顔で笑って聞き流すバエル。 ペットといったものの特別な愛着は無いようだ。


『ペットも部下も殺されたからと言って特段の感情は持たないよ。 僕自身に害がある場合は別だけどね』


「さっき豊饒祭って言ってたけど、何があるんですか?」

バエルは少し勿体ぶりながら、教えてくれた。

バエルが言うには、この木はサンダーバードの木と呼ばれるらしく、芽吹くのは実に数百年ぶりとのこと。

サンダーバードはこの木の頂上に巣を作り、卵を産む。そして、雛は成獣となり飛び立つまでの100年をこの木の上で過ごす。稀にしか芽吹かないこの木の頂上には、必ずと言っていい程サンダーバードの雛がいる為、サンダーバードの木と呼ばれているらしい。


サンダーバードの木は、芽吹くために大量の養分を必要とする。大亀の糞はまさにうってつけの土壌なのだろう。そして、次の種子を作るためにもこれまた大量の養分を必要とする。 サンダーバードの木は、自らの花の蜜で虫を誘い、さらにそれを狙う魔物を誘い込む。そうして大樹の傘の下はいつのまにか魔物の巣窟と化し、ここで爆発的に繁殖していくことになる。

そして100年後、そうサンダーバードが成獣となった時、、傘の下の魔物はサンダーバードの雷によって死滅し、サンダーバードは一気にレベルが上がり知性を得る。木はその際の死骸を養分として一気に種子を作り上げる。

サンダーバードとサンダーバードの木は互いに無くてはならない関係にあると言える。


そして、このサンダーバードの木が芽吹いてから7日間を特別な意味を込めて豊饒祭と呼ぶ。

特別な意味とは何か・・・それはこの期間に様々な精霊が祝福に訪れると言う事。 雷の精霊の頂点に位置するサンダーバードの誕生を祝福のため多様な属性の精霊が集まって来るのだという。


『辺り一帯が精霊達の影響により変化を起こすんだ。竜巻に雹に霰、地震に噴火に洪水それで・・・』


「それって、厄災なんじゃ・・」


『最後まで話を聞け! その後は、緑が生い茂り、植物は一斉に芽吹くのだ。勿論、竜巻や地震などの爪痕など微塵も残らん 精霊が溢れそれはそれは美しい世界が広がるのだ。そもそも、精霊が顕現した際に起きる程度の事象など我らは厄災とは言わぬ。 精霊の声を、力を理解できぬか弱き人間には仕方の無い事かもしれぬがな』


バエルは機嫌がいいのか饒舌に話をしてくれる。


「ところで、バエルさんだったか? 此処へは何しに?」


『あぁ そりゃ精霊達が集ってくるからねぇ。 仲間探しさ! 良い子がいたら僕の仲間に誘うんだよ』

なるほど、イフリートの様な精霊が集まってくるということか! うまく契約することができれば、火属性以外の魔法も使えるようになるんじゃないの?もしかしたら、水属性や風属性など四大精霊とも契約できるんじゃないか?そんな妄想に浸り、ちょっぴり高揚してしまった。


(あぁ コイツとがやけに饒舌なのが理解できた・・・)


「バエルさん! 精霊はどうやって仲間にするの?」


『アハハ そんなの話しをすれば良いだけだよ。 精霊は意思を持っているからね。友達になれば良いんだよ』

バエルはそう答えると、上空へ飛び去って行った。

上空には、朱色や黄金色、翡翠色などに輝く精霊が集まり始めていた。





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