20.食料問題
ただ一人取り残された俺。
教会の地下墳墓ではリッチーにやられはしたものの敵なしだった。だが、此処ではまるで勝手が違う。
恐らく安全地帯であろう今の場所から動く事が出来ないのだ。
半径20メートル。恐らくこれが此処の安全地帯。蟻一匹入ってくることはできないみたいだ。
蟻といっても5センチ程のかなり大型の蟻だ。30匹くらいの集団で襲ってくる。1匹は然程強くは無いが、一斉に襲ってくる為厄介だった。また、顎が大きく、小指くらいであれば軽く切断できるのでは無いだろうか。
初めは、たかが蟻と気にしなかったが、一斉に獲物を見つけたかの様に襲いかかってきた為、応戦したのだが、すぐに脹ら脛を噛まれ、慌てて焔の太刀で辺り一帯を焼き尽くしたが、外殻は想像以上に丈夫で炎では致命傷を与えるには至らなかった。
結局全てを斬り捨てる事になった。 そして斬り捨てた直後、蟻の大群が地中から現れてきたので、後退りしたところ、ある所から近寄ってこない事に気づいたのである。
かなり卑怯だと思うが、安全地帯から蟻を退治したのは言うまでも無い。
だから、今、安全地帯の周りは蟻の死体だらけ・・・恐らく数千匹になるのでは無いだろうか。
暫くすると、蟻の死体に引き寄せられたのか蜘蛛が群がってきた。勿論この蜘蛛も普通じゃない。
足を広げると2メートルくらいありそうな大きな蜘蛛だ。
そいつらが、蟻の死骸に集まってきたかと思うと、俺の方に意識を集中している様だ。
(蟻より人間の方が好みなのか?)
だが、此処は安全地帯。蟻と同じく、安全地帯から一方的に斬りつけることにした。
十匹程倒したところで、蜘蛛は去っていった。
この蜘蛛は巧みに足を使い、俺の剣撃を防いでいた為思った以上に時間がたった。
蜘蛛の爪は相当な硬度の様で、焔の太刀の一撃を弾くのだった。
いつのまにか数時間虫との格闘を続けていた。
気づくと小腹がすいてきた。 ここで問題に気づいた・・・食料が無い!
食料が無いかと思うと、ものすごく腹が空いてきた。
蟻を喰う? 蜘蛛を喰う? ・・・どちらも遠慮したい。
暫く休んでいると、何か草むらに動く影に気がついた。
影までは距離があったため、息を潜めて近づきつつ様子を伺っていたところに、突然矢の様なものに襲われ、慌てて回避。そして回避した所に続けてビシッ、ビシッと立て続けに撃ち込まれた。
出所は把握しているが、この距離で太刀は届かない。魔法で遠距離攻撃を仕掛けようかと考えていたところ、背後から撃たれたかと思うと、そのまま引っ張られ口を開いた魔物へと引き寄せられる。
慌てて振るった太刀が何かを断ち切り、地ベタに転がった。
転がった先には超大型の蛙。横一線に太刀を振るい仕留める。勿論、炎を付加してだが。
何匹が居たはずだが、気づくと辺りに潜む影は無くなっていた。更に、蜘蛛の死骸も何体か無くなっていることに気づいた。
辺りには、蛙が焼けた匂いが漂っている。香ばしい良い香りだ。
元いた世界では鶏肉に近いと言うが、これもそうだろうか・・・
少し悩んだものの、空腹には勝てず魔法で蛙を炙り、しっかりと火を通して食べてみることとした。
「うん、意外といける!」
臭みは特になく、意外といける。これで塩や胡椒があれば、美味しくいただけるのだろうが、持ち合わせが無いのが残念だ。
取り敢えず、お腹は満たされたので、ゆっくりと寛ごうかという時、またしても邪魔者が現れた。
食物連鎖で行けば次は蛇辺りだろうか。だが、そんな予想は見事に外れ現れたのはちょっとした山にも見える大亀だった。
「良い匂いがするな・・・儂にちょいと分けてはくれんか?」
大亀が話しかけてきた事に、驚きつつ、「いいよ」と残りの蛙の肉を炙り、大亀に渡した。
「久しぶりに焼いた肉を 喰ったわい。 まぁちっと味付けがある方が儂は好みじゃがな」
「それは済まない。調味料が無くて・・塩でもあればよかったんだが」
「塩か・・・お主、儂の甲羅に登り、岩塩を取ってきてくれんか? 甲羅中央の窪みにあるはずじゃ」
「岩塩があるのか?」
危機意識はあるが、塩の誘惑には勝てない。俺は、大亀の甲羅を登った。
大亀が話していた様に、中央のくぼみに行くつかの半透明の石がくっついており、舐めてみると確かに塩辛かった。それを一欠片いただき、戻った。
「早速、この塩で調理したいところだが、あいにく食材が無い。」
大亀にそう告げると、大亀が大きく息を吸い込み、そしてわらいだした。
「フォッフォッ 儂は少食でな、少し前に生の蛙をたらふく喰ったし、暫く食事は要らぬ。一週間後位にまた来るので、その時に馳走になろう」
そういうと のっしのっしと去っていった。 堂々とまるで敵などいない様な感じだ。実際にあの大亀に挑むものなど、あのドラゴン位しかいないんじゃ無いかと思う。
大亀は立ち去り際に、糞を一つ置き土産に置いていった。特大の糞だ。匂いは強烈で慣れるのに暫くかかったのだが、これが恵みの糞だとはこの時は知る由もなかった。




