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19.地獄は天国?

ここが地獄・・・?


今、俺は丘の上に立っている。周りは緑豊かな草木が生い茂り、時折吹く風が花の香りを運んでくる。

正面の遥か向こうには山々が連なり、まるでアルプスの様であり、背面には、地平線の向こうまで樹海が広がっている。


『これが 我が領土だ。どうだ、美しかろう?』


「ここが地獄なんですか?」


『地獄と呼んでいるのは、人間だ。 ここは我の趣向で創りし領域。 お前たちが知る地獄は、我らの仲間が創りし領域の一つに過ぎぬ』


「生きて戻れたら・・・ なんて言われたんで、てっきりそう云う地獄だとばかり思ってました」


『君は何か勘違いをしている様だねえ。 僕は・・・(ゴホン)我が趣味が自然を愛でる事とでも思うておるのか?』

(僕って言ったよな! 普段の一人称は“僕”なのか・・・意外と・・・!!)


急に辺りが暗くなり、雲がかかったかと思った時、上空に()が飛んでいた。 否、正確にはやまのようななにか(・・・)だ。そしてそれはあっという間に過ぎ去る。

過ぎ去るそれ(・・)と一瞬だが、目が合いその後は轟音と暴風に襲われた。


『此処はあいつが最も映えるであろう場所。 どうだ、この広大な大地を統べるドラゴンが更に神々しく見えるだろう? 唯一無二のドラゴン、エレメンタル・ドラゴンだ。 全てのドラゴンの始祖であり、原点たる者だ』


『我が領域を生きて出るとは、エレメンタル・ドラゴンを打ち負かす事に他ならない・・・』


『この領域は、我が配下の精霊たちも住まう地でもある。部外者の貴様は容赦なく排除されるだろう』


「ちょっと待った。 貴方の部下と戦わなきゃいけないって事? 」


『当然だろう。 ルシフェル様がそれを望んでいるのだ。 我が配下といえ神と同等の力を持つ者たちだ。貴様如きに勝ち目は無い。せいぜい生きながらえる様、努力しろ』


この美しい自然は、全てドラゴンのため。

随分前・・・小学生の頃カブト虫を飼っていた事を思い出した。ケースの中に腐葉土に落ち葉、クヌギの枝を配置しお気に入りのカブト虫を眺めていたものだ。


彼等にとってドラゴンはそう言う存在か・・・

だが、俺にとっては猛獣の檻の中に閉じ込められたのと同じだ。いや、猛獣くらいの方が良かった・・・。

そんな絶望感にも近い感情に浸っていたところ、ルキフグスから思いもよらない事を聞く事となった。


『お前は日本人か?』


「・・・えぇ」


『そうか・・・。 お前の中で“神”とは何だ?』


「神?・・・神様と言えば神社っしょ? 伊勢神宮の天照大御神が一番有名かな?。その他八幡さまやお稲荷さんってのもあるし・・・八百万神(やおろずのかみ)って言われてる程だから、全ては答えれない。あとは神様とは言わないが、仏様も同じ様な感じですかね」


『ふむ・・・お前の云う“神”・・・それは我々の様な者(・・・・・・)が地上で顕現した者や、それらと接触し、力を与えられた者達である。 当然禁忌(・・)であり、本来であれば悪魔や魔女と畏怖憎悪の対象になっている筈である』


『だが、お前の国では奴等の啓示(・・)の影響も無く“神”と崇められている。 不思議に思わぬか?』

(一応、日本にも妖怪や幽霊とか畏怖の対象はあるんですが・・・と心の中では思いつつ)


「影響が無いってどういう事ですか?」

『お前達日本人は、耐性があるという事だ。 寧ろ順応力が優れると言った方が良いかもな。ある特定の“神”のみを“神”とする事なく、全てを“神”と受け容れる・・・であるからあの方はお前を受け入れようとされておるのかも知れん・・・』


ルキフグスはそう言うとこちらに振り返り

『此処が終わったら次に連れて行こう』

そう言うと、ルキフグスは消えたのだった。

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