9.なんでこんな所に
いつもと変わらない朝。外では鳥が鳴いている。
昨日、サイクロプス討伐を達成した事をナベとカオルに報告した。
二人は待ってましたと言わんばかりに、早速第3層へ行く事を提案してきた。
(まぁ3ヶ月も待たせてたから分からないでもない)
そういう事で今朝は、教会の女神像の前で待ち合わせる事となっている。
教会の女神像の前に行くと20人くらいの人集りが出来ていた。少し離れたところに、ナベとカオルの姿が見えた。
「ナベ、この人集りは何?」
「それが・・・ あそこに居るの誰だか分かる?」
ナベが指を指す方向を見ると、そこには安倍総理大臣と麻生大臣が見えた。
「あの二人も送り込まれてきたって事?」
「代々政治家なのは知っているが、政治家だとどんなスキルが身につくのかなぁ?」
「代々政治家だからってそっちとは限らないんじゃない? そんな家柄だったら、武術の一つや二つ嗜んでいてもおかしくないわ!」
「まぁ間違いなく、あっちからきた人間なんだし、行ってみようか」
翔はそう言うと2人の元に近寄って行った。
「私達が何者か分かる方はここでしばらくお待ちください。少しだけ、私達にお時間をいただけないでしょうか」
(なるほど 現実世界から送られてきた人間のみに話しがあるって事か。 この顔を知らない奴なんていないしね)
その後、一人ひとりに自分達の名前を確認する事で本当に現実世界の者かどうかを確認してきた。
「何の用なのかしら。 もしかして俺たちを守ってくれ!なんて事は無いかしら」
「あり得るな。 いきなりこんな世界に飛ばされりゃ誰だってそう思う。 況してや普段から秘書やSPに囲われてるご身分の方々だ。誰も居ないんじゃ心細くもなるってもんよ」
そんな推測を面白おかしく話していたら、人集りは30人程になっていた。
「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。私達が何者なのかはご存知の事かと思います。私も皆さま同様にこの世界へ送られてきました。今現実世界で何が起きようとしているのかも先程教えていただきました。そして、未来の人類のために、皆様が命を賭して取り組まれている事も教わりました。実際ここに来るまで半信半疑でしたが、皆様とこうしてお会いし会話をする中、真実である事を実感いたした次第でございます。」
長い挨拶が続いるが、どうやら労いの言葉をかけていただいている様だ。
「さて、私と麻生大臣は、ある使命をもってここへ参りました。それは、現実世界での皆様をフォローする事です。皆様に報いるために、日本政府としてバックアップをさせていただきます。万一皆様がこの仮想世界で命を落とす事となっても、残されたご家族様はしっかりと面倒を見させていただきます。また、無事現実世界へ戻られた暁には、特別待遇で迎えさせていただきますので、ご安心下さい。 皆様はこの仮装世界と現実世界を常に往き来されていますが、その間の記憶はございません。現に、此処に来る前の現実世界の記憶はあっても、度々戻っている時の記憶は無いのでは無いでしょうか。 私達二人は今の記憶を持った上で現実世界へ戻り、陰ながらバックアップをさせていただきます。具体的には、いつのまにか現金が振り込まれていたなど、お金の面でのバックアップが中心とはなりますが、皆さんが安心して取り組める様努めて参りますので、よろしくお願いいたします」
(なるほど、表向きは不安要素の軽減処置の様だが、恐らく現実世界に戻った我々が人間離れするのは確実
であり、政府で囲い込んでしまおうと言う事か・・・ どの道あの化け物を倒す方が先決だし、その後の事は其処から考えよう)
一通り話しを聞き終えると大多数は歓喜していた。勿論ナベもガッツポーズで喜んでいた。
カオルは大臣二人が後方支援が役目である事が分かると「こっちの世界でも 前線には出ないのね」とちょっとご立腹だった。
その後長い話しが終わると、安倍総理と麻生大臣は役目を終えたのか女神像へ向かい消えて行った。
周りにいた探求者の話によると、日が昇る前から二人は此処に立って待ち続けていたらしい。
記憶が繋がっていない事にはショックだったが、誰かが知っていてくれているだけでも有難いと思った。
さて、少し遅れたが、今日は第3階層だ。気を引き締めていこう!




