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第七話 防壁を作成せよ


 翌日、目覚めるとエリックたちの体調も少しだけ良くなったようであった。


「お客人はツクル様と仰られるのですね。私はこの村の村長のエリックと申します。昨夜はお礼を申し上げずに失礼を致しました」


 エリックは床に頭を擦り付けるくらいに頭を下げている。


 同じように妻のサラ、弟のモーガン、弟の妻のジェミニ、そしてルシアまでも俺に頭を下げていた。


「いや、頭上げてくださいって。ちょうど俺も雨露をしのげる場を探していたんでね。昨日の食材は場所代だと思ってくれればいいですよ」


 エリックたちが顔を上げると、熱っぽい視線が俺の方に集中してくる。


「いえ、ツクル様は命の恩人です。この助けられた命は創造神イクリプス様の使徒、『ビルダー』であらせられるツクル様のために捧げよと、イクリプス様からのお達しに違いありません!」


 イクリプスってあの胡散臭い転生女神のことだろうか……。あいつ、創造神だったの?


 ゲーム設定では名を失った女神は力を失っていて、『ビルダー』を送り込み、街の発展とともに力を取り戻していくはずだが、こっちの世界もそういったことになっているのかな?


 まぁ、街を発展させるのは既定路線だから、いいんだが。


「イクリプスのお達しかどうかは分からないけども、俺はこの村を発展させていきたいとおもっているんだ。昨日、ルシアとも約束したしね。そこで、村長のエリックに聞きたいんだけど、俺がビルダーの力を使ってこの『最果ての村』を開発してもいいかな?」


 村長であるエリックの許可なしに、勝手に村を魔改造してしまえば、軋轢が生れる可能性もあるので、慎重に確認を取ることにした。


「なんと! この村のために『ビルダー』の力を使ってくださるというのか……山をも削り、大地を改変し、海すらも埋め立てると言われる伝説の力を使ってくださると……ありがたい。ありがたいです。ツクル様のお好きにこの村を開拓していただければ。私はツクル様の僕として精いっぱい働かせてもらいます」


 エリックは跪きながら、俺の手を取り、頭を垂れていた。


 精いっぱい働くと、また倒れるからな。ぼちぼちでいいから。


 真面目過ぎるエリックは有能すぎるがゆえに、色々とゲームでも無茶をやらかしてきた男であるため、今回はぶっ倒れないように適度な仕事を割り振るつもりだ。


 なにせ、二週目プレイだからな。こちらには経験というチートが備わっているのだ。


「まずは、朝食後に魔物に襲われないように防壁を作るが、エリックたちは体調が万全に戻るまで、休息するようにしてくれ」


「は、はい。ツクル様、ご配慮ありがとうございます」


「ツクル兄さん、うちはお手伝いします~。元気だけが取り柄なんで~」


 ルシアが手伝いを申し出てくれていた。ビルダーの力があるので、人手はいらないが、俺の応援係をしてもらうことにしよう。


 人間、褒めてもらうのが一番のモチベーション維持になる。

 

 

 みんなでルシアの作った朝食を食べ終えると、俺とルシアは防壁作りに始めることにした。


 防壁は夜間、寝ている時間帯に魔物に侵入されないよう、村の奥の崖になっている部分以外を『ビルダー』の力で土のブロック積み重ねて土塁にしようと思っている。


「ツクル兄さん、防壁はどれくらいの大きさにされるんですか~」


 興味津々といった顔のルシアが防壁の規模を聞いてきた。


「そうだな~。最初だし、建物から二〇メートル四方を囲もうと思ってる。空堀も掘っておきたいしね」


「空堀?」


「防壁の前の地面を低くしておくことさ。これで、魔物は防壁を飛び越えれない。空を飛ばない限りね」


「あ! 地面が低くなる分、防壁の高さが増すということなんですね。すごいです。ツクル兄さん」


 ルシアは俺の説明をウンウンと頷きながらも、尊敬のまなざしを向けてきている。


 そんな眼で見られると、ちょっと照れるぞ。こっちは二週目プレイだし、これは街建設するときの定石なんだが……だが、その視線、嫌いじゃない。


 ルシアからの尊敬のまなざしは大いに俺のやる気を引き出してくれる。


「まずは、空堀から掘って、土ブロックを手に入れることにしよう」


 俺は建物から大体二〇メートルほど離れた場所を基点に幅二メートル、深さ五メートル溝を掘り込んで行くことにした。


 【木材】で作成した【木槌】を装備すると、地面を次々に叩いていく。


 【木槌】に触れた地面は『ビルダー』の力が発揮され、土ブロックに変化してインベントリの中に次々と収納されていく。


 あっという間に村を囲むように深さ五メートル、幅二メートルの空堀が完成していた。


 作業時間は三〇分程度であったような気がする。


 そんな様子を見ていたルシアが茫然と立ち尽くしていた。


「す、凄いわ~。うちは夢でも見てるんだろうか~。地形がこんなに簡単に変わっていくなんて……」


「空堀を掘り終わったから、次は土塁を重ねるね」


「土塁ですか?」


「そそ、この掘り終わった土ブロックを重ねれば防壁代わりになるって寸法さ」


 ルシアの前で土ブロックを重ねると、白煙が上がり、土の壁が出来上がっていた。


「ひゃあ!? こんなに簡単にできるんですか!!」


「この土塁もそれなりに耐久度あるからね。【木材】とか【石材】に余裕があれば、もっと強い防壁に変えるけど、今はこれで十分だと思う」


「ツクル兄さん、本当に凄い人です……うちは、何をお手伝いするべきか……」


「作業している俺を応援してくれるのが、ルシアの仕事にしておこうか」


「そうですね。下手にお手伝いするのもツクル兄さんの邪魔になりそうですから、応援させてもらいます~」


 ルシアは『ビルダー』の力を目の当たりにして、自分が手伝えることがないと悟ったようで、応援して欲しいという俺のお願いを素直に受けいれていた。


 俺はルシアの声援を背に受け、一辺が一メートルある土のブロックを三段重ねて三メートルの土塁を村を囲うように掘った空堀に沿って築き上げていった。


 完成した防壁は、空堀の底から見上げると五メートルはある土塁であるため、かなりの防衛力を発揮すると思われる。


 しかも、この空堀には後で水場から引っ張って来る水を入れて水堀にする予定だ。


「よし、これで防壁は完成だ。小鬼(ゴブリン)程度では村に入ってこれないぞ」


「ツ、ツクル兄さん、大変です。出口がないです。この防壁」


 完成した防壁の周囲を見回っていたルシアが慌てたように出口のありかを聞いてきた。


「今から作ろうと思って、ちょっと待っててね」


 インベントリから【石の作業台】を取り出すと、地面に設置する。


 作成メニューの一覧の中から、【木製の大扉】を探し出した。


 【木製の扉】……木材を補強してできた扉 耐久値:120 消費素材 木材:10 石:10 つる草:10


 かなりの素材を消費するが、出入り口を付けないと素材収集などで出かける際に、いちいち防壁を打ち壊して出入りをしなければならない手間を考えれば、作っておいて損はない。


ボフッ! 高さ二メートル、幅二メートルの幅の木製の扉が現れた。重さは感じないため、片手で持つ。


「これをこうすれば」


 【木製の扉】をはめ込むため、防壁を一部出入り口用に崩していく。


 空いた出入り口用の空間に【木製の扉】をはめ込む。すると、ピッタリと隙間が埋まり扉の開閉ができるようになった。


「扉が付いた!? こんな立派なのが簡単に……」


「これで、出入りは楽になるだろ? 材料が集まったら、あと二カ所ほど出入りできる場所を作ろうと思う」


 そして、忘れないうちに作業台メニューから【木の橋】を探し出して生成する。


【木の橋】……木材を補強してできた橋 耐久値:100 消費素材 木材:5 つる草:2


 ボフ! 生成された【木の橋】を空堀に渡す。


 こうしておかないと外に出る度、落とし穴のお出迎えになってしまうのだ。


「これで、よし。【木製の大扉】も【木の橋】も耐久値的には、今のところ申し分ないからね」


 ここまでの所要時間は大体二時間だ。


 これで、夜間の魔物の襲撃はしばらくはしのげるはずである。ただ、街が発展すると襲撃してくる魔物たちの強さも上がるので、発展度合いに応じて、防衛機能も高めていかなければならなかった。


「うちはやっぱり夢を見てるんだろうか~。こんな立派な防壁が半日かからずに出来上がってるなんて~」


 俺の作業工程を見ていたはずのルシアだが、完成した防壁の立派さにどこか違う世界に旅立ち始めていた。


 材料さえ揃えばもっと凄いんだけどねぇ……。


「とりあえず、後はゴーレムも警備につけるから、今日の夜からは安心して寝れるよ」


「んん? ツクル兄さん、今、ゴーレムとか言いませんでした?」


 ゴーレムという言葉に、違う世界に旅立とうとしていたルシアが返ってきた。


 さて、昼食まで時間あるしゴーレム生成器も稼働させるか。


 俺は更なる防衛力のアップのため、ゴーレム生成を行うことにした。


ゲットアイテム


【木製の大扉】【木の橋】


都市開発状況


都市名:最果ての村


発展LV1


人口:5


主要施設:民家×3


防壁:土塁(空堀あり)×二〇メートル四方


門:木製の大扉×1

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