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第六話 二人の晩餐

 

「ツクル兄さん? お口に合いませんか? なんか真剣に考え込んでいるみたいですけど?」


 衰弱したエリックたちは先に食事を終えると、そのまま寝息をたて始めていた。


 満腹になったことで、栄養を身体に行き渡らせるために睡眠を欲したのだろう。


 彼らの衰弱も食事さえキチンと取れれば回復できるほどであるようで、まずは安心といったところだ。


「ああぁ、何でもないよ。エリックたちの食べてるのを見たのと、匂いで、お腹が鳴っていたところさ。楽しみだな」

 

 ルシアが大量に作ったウサギ肉のスープをお椀によそってくれる。


 【ウサギ肉】と【食用キノコ】を【塩】で煮込んだ簡単な料理だったが、作ってくれたルシアの腕がいいのか、転生前に食べていた食事の数倍は美味しく感じる食事だった。


「ツクル兄さん、ごめんなさいね~。調味料が揃うと、もっと美味しく調理できるのですが……。今はこれが限界です~。堪忍です」


 俺によそってくれたルシアは、自分用にもよそい、小さい身体のどこに収まるのか分からないほどの量を綺麗な食べ方で食べていた。


 その様子を見ていたこちらに気付き恥ずかしそうに上目遣いで見てくる。


「そんなにじっくりと見られると恥ずかしいです。そ、その。残すともったいないし。ああ、ツクル兄さん。あんまり見ないでください。うちのご飯食べるところなんて見ててもしょうがないですよぉ~?」


「いやぁ、どれだけでも見ていられるね。ルシアさんは綺麗な食べ方をするから、見ているこっちが楽しくなっていくよ」


 箸を上手に使って、ルシアは煮込み料理を食べている。


 熱いためか、すぐに食べられないようで、フーフーと冷ましてから食べているが、その冷ました料理をアーンとしてくれたらいいなと思っていた。


「うちばっかり食べていたら、ツクル兄さんの分が無くなってしまうから、食べさせてあげましょうか~? アーンしてくれます?」


「アーン」


 ジッとルシアの食べるところを見ていたら、急にフーフーしたウサギ肉を口元に持ってきてくれた。


 おもわず、反射的に箸で差し出されたウサギ肉を口の中に入れていた。


 口に入ったウサギ肉は自分で食べた時の数倍はおいしく蕩けそうな美味しさを発揮している。


「美味しいよ。ルシアさんの夕食は最高だ。美味い。人生の中で一番美味い料理だ!」


「喜んでもらえて良かった。この村の料理当番はうちが担当なんです~」


「あの食材でこれだけ美味しい料理を作ってくれるなら、毎日楽しみだ。俺も『ビルダー』の力で作れるけど、何か味気ない料理ができそうだし。ルシアさんの手料理なら何でも食べられるよ」


「もう、照れてしまいます~。ツクル兄さんは、うちのことをほめ過ぎと違いますか~?」


 ルシアは褒められたのが恥ずかしいのか、お腹の辺りをポコポコと軽く叩いて照れていた。


 可愛い……これって、ルシアさんが俺に気があるってことなのかな……いやいや、まだそう思うには早い。早すぎる。


 ポンポンとお腹を叩かれる度に、小柄なルシアの身体をギュッと抱きしめたくなる衝動を抑えるのに苦労していた。


 このままだと、耐えられそうになかったので、よそってもらった汁物を一気にかき込むと外に出ようと立ち上がる。


「ごめん、ちょっと外の空気を吸ってくるわ。ついでに俺の寝る場所も作ってくる。さすがにルシアさんと一緒に寝るわけにはいかないもんね」


「へ!? ツクル兄さんは、ここで寝てくれないのですか? 夜は魔物が怖くて、いつもみんなで肩寄せ合って寝てるんです。でも、今はみんなこんな状態だし……みんなで一緒に寝ましょうよ~。添い寝はダメだけど、近くで寝てください~」


 俺のお腹をポコポコ叩いていたルシアが急に抱きついてきた。少しだけ、フルフルと身体を震わせている。


 ゲームでは、夜になると魔物の活動が活発になり、自分が作った街に押し寄せてくることもある。ルシアがそういった敵の存在を気にしているということは、この世界でも同じようなことが繰り広げられていると思われた。


 防壁の作成は急務だな。朝一番で取りかからないと……。


 夜は魔物が闊歩する時間帯なので、ルシアの言うことも一理あった。


 こんなあばら家では小鬼(ゴブリン)ですら防ぎきれないであろう。


「うち一人ではエリックさんたちを守れないかもしれないんです。ツクル兄さん、ワガママなうちの願いを聞いてくれませんか?」


 腰にギュッと抱きついてきたルシアが、不安げな顔で見上げていた。


 その翡翠色の瞳の奥に恐怖と孤独を感じ取ったことで、ルシアのお願いを拒絶することができなくなってしまった。


 俺は抱きついているルシアの頭をワシャワシャと撫でてやる。


「承りました。ルシアさんの安眠は俺が守ることにしよう。だから、ルシアさんは俺に美味しいご飯を提供してくれるとありがたい。助け合いの精神でいこう」


「ふぇええぇっ!! ツクル兄さんは優しい人でよかったぁ。こんなにワガママなうちを許してくれるなんて……堪忍なぁ……本当に堪忍……」


 頼りにしていた村人たちが衰弱して倒れた今、ルシア一人に魔物との恐怖を味合わせるわけにはいかないのだ。


 恐怖と孤独に怯えるルシアを見てしまったら、やましい気持ちは一切消え去り、純粋に彼女の安眠を守ってやりたいという欲求の方が強くなっていった。


「よし。添い寝はできないけど、ルシアさんが寝るまではこのまま一緒にいてあげるよ。安心して眠っていいよ。俺は絶対にルシアさんを守ってみせるからさ」


「ツクル兄さん……うちが起きてもいなくなっていませんよね?」


「ああ、大丈夫。ルシアさんさえよければずっと一緒にいていいよ」


「本当に?」


「本当さ。俺は多分嘘つかない」


「多分って何ですかそれ。ちゃんと約束してください。それと、うちのことはルシアと呼び捨てにしてくださいよ。さん付けは他人行儀に聞こえます。この村の住人なら家族も同然ですよね?」


「ああ、分かった。約束するよ。俺はルシアとずっと一緒にいるよ」


「本当……に……ツクル兄さんは……すぅ、すぅ、すぅ」


 夕食を食べてお腹が膨れ、屋根のある場所で寝られることに安堵したルシアが腰にしがみついたまま寝落ちしてしまった。


 早いところ寝具もつくらないとな……。まだ、暖かいとはいえ、この格好で寝ていたら、いつ風邪を引くか分からない。


 今の状態で風邪でも引いたら狼狽えてしまうことは確実だ。


 とりあえず、明日からは食材集めと並行して、防壁作り、水路開削、農園整備、鉱石掘りができる道具も揃えないと。


 そんなことを考えている内に、俺も初日の疲れも重なって倒れ込むように意識を失っていった。


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