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第五話 最果ての村


 霧の大森林を経由して、ルシアの住む最果ての村に日暮れ前に到着した。


 ゲーム最序盤の街であり、この地に大都市を築くやつは変人だと攻略サイトに書かれるほどの無い無いづくしの村であった。


 人口無い、資源無い、食料無い、商人も来ない、街道もない、と言われる最果ての村だが、実は天然資源の宝庫であり、水量豊かな川も流れ、とても肥沃な大地をしているのだ。


 皆、ゲームクリアを優先してガンガンと先の村や街に進んでいたため、誰一人、この地の豊饒さを発見することなく、打ち捨てられていたが、俺の場合はゲームクリアよりも都市づくりがメインであったため、最序盤のこの村を基点に都市を作り、開発な必要な素材を集めるために魔王城とかに出入りするようになっていたのだ。


「ようこそ、最果ての村へ。ツクル兄さんのことはきっとみんなが喜んでくれるわ~。うち、みんなに知らせてくる~」


 ルシアが今夜の食事の食材を抱え、村の中に駆け出していった。


「転んで食材落さないようにね~。俺はちょっと村の中を散策しているよ」


「承知しました~。ご飯できたら呼びに来ます~」


 ルシアが去ると、久しぶりに見た最初期の『最果ての村』の姿を感慨深く見ていく。

 

 そういえば、最初は人家三軒の本当にボロッチイ村だったなぁ。懐かしい。


 発売日にゲーム始めてチュートリアルを終えた時に見たままだ。


 手前から村長エリック一家、奥がモーガン一家、三軒目が空き家だったはずだが、そこがルシアの家になってるみたいだな。


 この最果ての村は、出発の村であり、猟師小屋でのチュートリアルを終えたあと主人公が配置される村となっていた。


 木造家屋が三軒と井戸があるだけの簡素な村で、魔物の襲撃から身を守るための防壁もなければ、食料生産のための農地も無い村なのである。


 最序盤きつかったなぁ。何度、餓死するかと思ったことか……。


 初期に何度か都市建設を挫折しかかったが、今回はその時の経験を生かせるため、序盤からチート級のスピードで村を発展させていこうと思っている。


 まずは、村長のエリックにちゃんと断りを入れてから、村を開発しないとな。


 彼は有能な人物であるし、俺の右腕として街づくりのお手伝いをしてもらわなければ。

 

 そんなことを思いながら、村の周囲を散策していく。やがて、太陽が完全に暮れると今日の夕食ができたことでルシアが家から大声で俺を呼んでいた。


「ツクル兄さん~! お夕飯ができましたよ~! みんな、うちの家に集まっているから来てください~」


 ブンブンと手が引っこ抜けそうなほど勢いよく、俺に手を振るルシアに思わず吹き出しそうになる。


「ああ、今いくよ」


 軽く手を挙げてルシアに応えると、ルシアの家と思われるボロ屋に向かって歩き出した。



 ボロボロのルシアの家の中に入ると、隙間風が吹き抜けるボロ屋で、心細い焚き火の明かりに照らされて、ルシア以外に四人ほどの住民がすでに食事を始めていた。


 皆、一様に頬がこけており痩せており、栄養失調になりかけている様子であった。


「ツクル兄さん、ごめんなさい。紹介する前にご飯を始めてしまって。エリックさんたちの体調が思わしくなくて~」


 ルシアが申し訳なさそうに謝っているが、餓死が迫っている者を前にして、俺を祝えなどとと鬼畜なことは言う気はない。


「いや、大丈夫だ。それより、彼らの方は大丈夫かい?」


「ツクル兄さんと手に入れてきた【ウサギ肉】と【食用キノコ】でスープ作ったんですけど。【塩】が無くて塩分不足かもしれません……」


 【塩】か……。そうだ、採集の途中で岩塩ブロックが手に入っていたな。アレを【塩】生成すれば。


「【塩】がいるんだね。ちょっと待ってて作るから」


 俺はすぐに家の外に出ると、インベントリにしまっていた【石の作業台】を取り出し設置する。


 設置を終えた【石の作業台】の上に岩塩ブロックを置くと、生成メニューから【塩】が表示されている。


 メニューから生成を選ぶと、白煙とともに岩塩ブロックが消え、袋に入った白い粉が置かれていた。


 間違って別の白い粉だとまずいので、指先に付けて味を確かめていく。


 しょっぱー! これは確かに【塩】だ。これで、ルシアも喜んでくれるだろう。


 俺は生成された【塩】を手に持つと、再び家の中に戻っていった。


「はい、お待たせ!」


 ルシアに【塩】を手渡すと俺と同じように指先に付けて味を確認していた。


「しょっぱー。ツクル兄さん。これって……【塩】?」


「ああ、ちょうど【食用キノコ】を素材化しようとして、間違えた叩いた先に岩塩ブロックがあったからね。【塩】いるんだろ?」


「ええ、ああ。そうです。助かります~」


 ルシアが鍋に塩を二つまみほど取っていれていく。


 そして、木のお玉でひとすくいすると、味を確かめていた。


「これで、味がしっかりしました~。エリックさん、モーガンさん、サラさん、ジェミニさん。みんな飲んで元気だしてください~」


「すまんな。ルシア。それにお客人も……この村では満足に食料を作ることも叶わぬのだ……」


 ゲームの中で俺の街づくりを助けてくれたエリックだが、この世界では四〇代近い黒髪の壮年の男であった。


 エリック、お前無茶しやがって……。ここは、僻地だって忘れてただろ。


 ゲームで共に街を創り上げてくれた同志であったエリックと、目の前のエリックが重なり、目頭が緩んでくる。


「兄上、ルシアの作った汁物を……」


 エリックに似た風貌の男は、弟のモーガンでゲームでは、クリエイト商会という商会の会頭をしてもらった商売上手な弟であったのだ。


 そして、サラはエリックの奥さんで女性住民の束ね役をしてもらったし、ジェミニはモーガンの奥さんとして共に商会の発展に寄与してくれていた。


 この四人は大切な同志としてゲームに登場していたのだ。


 そのゲームで街を創り上げた元同志の四人が食事を満足に取れず寝込んでしまっていた。


「四人とも俺の分は大丈夫だから、体調を取り戻すために食べてくれ」


「お客人……すみませぬ……すみませぬ……」


 エリックは俺に詫びるようにルシアが作ってくれたウサギ肉の汁物をすすっていく。


「ああ、美味い。美味いなぁ。ルシアありがとう」


「エリックさん、しっかりしてください~。ツクル兄さんがこの村に来たんで、もうご飯の心配はしなくても大丈夫ですから~」


 チビリ、チビリとスープを啜っていくエリックたちをルシアが励ます。


「人が一人増えてくらいでこの村はもう……。ルシア、そのお客人とともにこの村を出なさい」


 スープを飲んでいたエリックが、唐突にルシアに村を出るようにと言い出した。


 初期の最果ての村は、NPCが都市建設するには過酷すぎる環境であるとは思う。さすがのエリックも心が折れたらしい。


 大丈夫だ。俺が来たからには、エリックたちに苦労はさせねえよ。


 初対面のはずなのに、長年付き合った親友かのような気持ちになっている。


「ツクル兄さんは『ビルダー』なんですから。この村をみんなが楽しく、お腹いっぱい美味しい物が食べられる村に変えてくれるって、うちと約束してくれました」


「おおぉ、『ビルダー』とは……まさか、創造神イクリプス様の使徒がおられるとは……」


「兄者……『ビルダー』様の助力があれば、この村も何とか……」


 エリックたちは俺が『ビルダー』だと知ると、前言を翻し、村づくりに前向きになっていった。


ゲットアイテム


【塩】

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