第二十七話 有翼人村の解体
大マガモを狩って、新たな食材や素材をゲットした後、俺たちは有翼人の村に到着していた。
バートたちが持ち出せなかった荷物を取りきたついでに、村の建物を解体して最果ての村の建材を手に入れることに同意して貰えていたからだ。
村に着くと、バートたちが俺がインベントリから出した荷車へ自分たちの家から持ち出せなかった物を出していた。
「みんなが荷物取り出している間に村の周囲を綺麗に片づけてくるよ。ルシアもピヨちゃんもバートたちのお手伝いしててね」
「はーい!! ピヨはお手伝いするー」
「承知しました。ピヨちゃんとバートさんたちのお手伝いしてますね。ツクル兄さんも気をつけてくださいねー」
ルシアとピヨちゃんがバートたちの手伝いをするため、建物に入っていくのを見送ると、俺は小鬼たちが壊した村の柵の方へ向かった。
村の周囲を囲っていたのは、粗末な木製の柵だけであり、昨日の襲撃によってあちこちが破壊され、打ち破られて防壁の意味を成していなかった。
「これはもう全解体だな。素材に変えてしまおう」
用をなさなくなった木の柵を木槌で叩いて素材化させていく。ビルダーの力で元の素材となった【木材】、【棒】、【つる草】に変化している。
木材系の素材は幾らあっても困らないし、素材保管箱で保管すればストックはできるので、取れるだけ取っておこう。
手早く周囲の木の柵を解体していくと、十分程度で村を囲っていた柵がみごとに無くなった。
「ふぅ、これで柵の素材は回収できたな。作る分より、素材は減るがゼロよりかはましだからな」
ビルダーの力で建築物の解体ができるが、解体した場合は素材として取得できる量が減ることになるのだ。
だが、有翼人の村はバートたちが集めてきた素材で作られているため、俺が持ち出した素材はゼロである。その為、実質は解体といっても素材を収集しているだけであった。
「お次は井戸を解体させてもらうか。小鬼どもに住みつかれないようにしとかないと」
木の柵を解体した俺は村の中央にあった井戸に向かう。バートたちの村は元々そこまで人数がいたわけではなさそうだが、立派な井戸が掘ってあった。
井戸の前に立ち、木槌で井戸を叩くと白煙を上げて素材に変化していった。【石材】、【ロープ】、【バケツ】、【木材】に変化して周囲に飛び散ったのを収集する。
「これで、最果ての村の井戸をアップグレードできるかな。【ロープ】が中々手に入らないんだよね」
序盤では手に入りにくい【シュロの葉】を使う【ロープ】が手に入ったことで、村の井戸が大人数に対応できる【大井戸】にバージョンアップさせられる目算がたった。
バートたちの加入で井戸水の需要は上がっており、より多くの人が使える物に変える必要があった。
水路こそ整備しているが、川水は何が混入されるか分からないので、飲食に使用する水は安全度の高い井戸水を使用したい。
「ツクル様、家の方も解体していただいて結構ですよ。全ての荷物は運び出しましたから。捨てなければいけないと思っていた品も持ち出せてとてもありがたい」
井戸を解体したところでバートたちがそれぞれの家から荷物を出し終えていたようで、俺のもとに来ていた。
持ち込んだ荷車には昨日と同じくらいの量の荷物が載っており、かなりの荷物を残してうちの村に来ていたようだ。
「そうかい。じゃあ、遠慮なく解体させてもらうよ」
「ええ、小鬼の棲家にされてはたまりませんからな。サクッと解体してください」
バートも自分の長く住んだ家を解体することに感慨があるかと思ったが、小鬼の棲家にされるくらいなら壊して建材になった方が良いと思ってくれたようだ。
このままで放置すれば、ここを拠点に霧の大森林から漏れ出した小鬼たちがココを寝床に更に生活圏を拡大する可能性もあるので、残す訳にはいかなかった。
おもむろに木槌を持つとバートの家から解体を始める。建物系は木槌一撃ではすべてを素材化できないので、何度か木槌を振り下ろし建物を解体していく。
木槌に叩かれた建物は【石材】、【木材】、【木の窓】、【木のドア】、【棒】などの素材となって周囲に飛び散っていく。
その様子をバートたちは神妙に見ていた。
この建材で村の小屋をアップデートしていくから待っててくれよ。
俺はバートたちの家を解体しながら、手に入れた建材を使用しての住む場所のアップデート計画を考えていく。
住民たちの体力が回復する基本となる場所である家は早急に良い物を製作し彼らに与え、狩猟で傷ついた際もすぐに回復できるようにしておきたいのだ。
やがて、バートたちの家を解体し終えると、村のあった土地は更地に変化していた。
本当なら、ここに来る行商人へうちの村までの来てもらえるようにしたかったが、そのためには霧の大森林に住む小鬼たちを何とかするしかないとおもわれた。
ただ、ゲームでは海路という手段も使えると知見もあるので、南に下って海路を使い、他の街に向かうという手段も考えられる。
とにかく、色々な素材が不足しているので、村を開発しながら、各地の街へ行き、色々と素材を調達して村を大きくしていく準備も始めなければならないと思った。
「さて、これで小鬼どもはここを拠点として使えないはずだ。あとはもう少し木材を手に入れておきたいから、霧の大森林でちょっと伐採しつつ、猟をしてから帰ろうか」
「ツクルパパー。その前にお腹減ったー!! ルシアママのご飯食べたいー。今日はお外で食べるって持ってきてるんだー」
大人しくしていたピヨちゃんがトトトと走り去ると、荷車から籠をもってきていた。その中にはルシアが朝ご飯の後で作っていた昼食が入れられている。
「そうですね。ちょうどお昼ですし。ここで一旦休憩してからいきませんか?」
日を見るとすでに真上までに上がってきていたので、ルシアとピヨちゃんの提案を受け入れ、昼食をとってから霧の大森林へむかうことにした。
「そうだね。みんなで昼食とろうか。ピヨちゃん、準備のお手伝いしてね」
「はーい! 今からするよー」
お願いをされたピヨちゃんは喜んで、籠を地面に置くと、ルシアのお手伝いを始め、バートたちに食事を配り始めていた。
我が娘ながら、良い子である。
お手伝いをしてパタパタと走り回るピヨちゃんを見てほっこりしながら、午後に向けての腹ごしらえをはじめることにしていった。
ゲットアイテム
【ロープ】、【木の窓】







