第二十五話 革作りと新装備
「ツクルパパー!! 起きて!! 朝だよー」
眩しい光が小屋の窓から差し込んでいた。昨夜は新たに村人に迎えた有翼人たちを祝うため、明かりが点いた広場で囁かな酒宴を開き、村人たちの絆を深めた。
酒宴となったのは、バートたちが持ち込んだ果実を発酵させて作った果実酒が提供されたためで、とても口当たりがよく、果物の甘さが飲みやすくさせており、かなりの量を飲んでいたのだ。
ちょっと飲みすぎたかな。水が欲しいぞ。
若干二日酔い気味の頭をスッキリさせようと、俺を起こしてくれているピヨちゃんにどいて貰おうとした。
「今から起きるよー」
胸の上に乗って俺を起こしてくれていたピヨちゃんを抱っこすると、身体を起こす。すると、目の前に水の入ったお椀が差し出されていた。
「ツクルにーさん。昨日、少しお酒を飲み過ぎてたみたいだから、お水どうぞ。もうじき、朝ごはんもできますから」
既に起きていたルシアが、俺の状態を察して水を渡してくれた。
受け取ったお椀の水を飲み干すと、カラカラだった喉が潤っていく。それとともに、ぼんやりしていた頭がしゃっきりしてきた。
「ありがとう。ルシアは気が利くから助かるよ」
「いえ、うちにできることをしているだけですから。うちはツクルにーさんのお世話を頑張るだけです」
にっこりと笑顔で答えてくれたルシアに感謝の気持ちが湧いてくる。
嫁にしたい子選手権が開催されれば間違いなくナンバー1に選出されることが、間違いないほど気遣いの行き届いた子であった。
ルシアとならいい家庭が作れるかもしれないな。
両親とはすれ違いの生活を送ってきた一人っ子の俺にとって、家庭とは自分とは縁遠い別世界のことだと思っていたが、案外この世界でなら見つけられるかもしれない。
ルシアとなら……。
「ツクルパパー。お鼻の下が伸びてるー。きっと、ルシアママのことが大好きなんだねー」
ピヨちゃんがルシアを見つめていた俺の顔に手を当てると、キャッキャと笑っていた。
「ひゃあ。ピヨちゃん、そんなこと言ったらいけないですよ。うちは……」
「えー、あー。きっとピヨちゃんと同じくらい好きだと思う」
「ルシアママー大好きだって」
ピヨちゃんが大声で叫ぶと、ルシアの顔が真っ赤に染まった。ルシアへの好意は嘘偽りのない俺の言葉だ。
好きではある。ただ、あと一歩、本当の家族になってくれとまで言う勇気が、今の俺にはまだ持てなかった。
けれど、時期が来れば、きっと彼女にその申し出をするであろうことは、俺の中でヒシヒシと感じていた。
「ツクルにーさんも、ピヨちゃんと一緒に冗談を言ったらダメですから。もう。うちはご飯の用意しますから、二人とも井戸で顔を洗って来てください」
真っ赤になったルシアに押し出されるように、小屋から出るとピヨちゃんと井戸まで来た。
すでにエリックやモーガン、それに昨日から村人になったバートたちも井戸で顔を洗っていた。
「ツクルパパー。朝ごはんできるまで、みんなと遊んでくるー」
朝から元気なピヨちゃんは有翼人の子供たちを見つけると、俺から飛び出して早速広場でかけっこをして遊び始めた。
有翼人の子供たちもピヨちゃんが魔物であることを気にした様子はなく、仲良くかけっこをして遊びんでいる。
「みんなー。ごはんができるまでだからなー」
「「「はーい」」」
ピヨちゃんを始めとした子供達から大きな声で返事が返ってきた。
「いいですなぁ。子供の声があると村に活気が出る」
【収集くん】たちの素材を【収納箱】に入れ終えた様子のエリックが子供たちを見て笑っていた。
彼の言う通りに子供たちが騒ぐ声は村に活力をもたらしてくれると思う。
「私らの孫らが迷惑を掛けてます」
バートが申し訳なさそうに頭を下げていた。今、ピヨちゃんと一緒に遊び回っているのは、彼の孫らしい。
バートはまだ若そうに見えたが、孫がいる歳をしていたのか。
「いや、うちのピヨちゃんとも仲良くしてくれて助かるよ。いままで大人しかいなかったからね」
「うちの集落でも昔はもっと子供がいたんですがね。小鬼どもの襲撃で徐々に人が減ってしまって私たち家族しかなくなってしまったので」
バートの元居た集落は、霧の大森林に居住する小鬼たちが巣分けする度に襲われていたようで、立地的にも厳しい場所であった。
「ここなら、小鬼程度では侵入できないから、安心して暮らせばいい。それに【転移ゲート】はしばらくバートたちの村に厳重に隠蔽して設置しておくから、持ち込めなかった品物や今まで通りの狩場にも通えるはずだよ」
「なんと! あの【転移ゲート】をしばらく設置してくれるですと。ありがたい。荷車に乗り切らなかった荷物を持ち込める」
「それと、あの集落は俺の力で解体させてもらっていいかい? あの場所に小鬼が住み着かれると面倒だし」
「そうですな。廃村を小鬼どもにくれてやるくらいなら、ツクル様の手で解体してもらって、この村の発展に使ってもらった方がマシですな」
「すまないね。思い入れはあるだろうけど」
「いえ、安全な場所を提供してもらうお代だと思えば、安い物です」
バートによって有翼人の集落の解体許可がでたため、村の発展用の素材にすることを決めた。
この最果ての村を大きくするには多くの資材を必要とするのだ。
「みんな―ご飯できましたよ」
有翼人の集落の処遇をどうするか決まったところで、女性陣から朝食の支度が整ったことが告げられた。
朝食後、有翼人の女性が得意な革製品の加工をしてもらえるように【鉄の作業台】のメニューから、動物の皮をなめすための道具である【タンニン漬け樽】を作成することにした。
メニュー欄に表示された素材が足りていることを確認する。
【タンニン漬け樽】……草木のタンニンで皮をなめす漬け樽 消費素材 木材:3 鉄のインゴット:3 雑草:6 棒:3
【雑草】は畑を作る際に大量に取得してあり、【鉄のインゴット】も【製錬炉】によってかなりの量がストックされている。それらのものを使用して作成を開始することにした。
ボフッ!
白煙と共に独特な匂いを発する大樽が目の前に現れた。匂いがあるため、住居の近くには設置することは憚られ、少し離れた場所に設置することにした。
設置の完了した【タンニン漬け樽】のメニューから【牛の皮】を選択する。
【なめし革】×30……動物の皮をなめして加工しやすくしたもの 消費素材 牛の皮:1
【牛の皮】一個からなめし革が三〇個作成できると表示されているので迷わずに作成することにした。
この後、装備を作るために必要な分を確保するためで、残りは有翼族の女性たちの内職作業になる予定だ。
彼女らは男たちが狩猟で取ってきた獲物の皮を綺麗に捌いて、漬け樽で皮を綺麗になめす技術をもっている。ビルダーだとその時間はゼロ短縮できるが、仕上がりは平均的な品質までしか作成できないため、上質な物を手に入れるには、彼女らの腕にかかっているのだ。
ボフッ!
白煙が収まると綺麗に整えられたノーマル品質の【なめし革】が三〇個ほど、漬け樽から飛び出していた。
さすが、ビルダーの力。本当ならもっと時間がかかるんだろうけど、即完了だ。
あり得ない速さでなめされた【なめし革】を手に入れたので、有翼人の集落の周囲にまだ残っていると思われる小鬼どもを殲滅するため、武具をパワーアップさせることにした。
【鉄の作業台】から鉄製武具を選択していった。
【鉄の剣】……攻撃力+30 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2
【鉄の弓】……攻撃力+20 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:1 ツル草:10
【鉄の矢】……攻撃力+10 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:1 銅のインゴット:1 棒:3
【鉄の盾】……攻撃力+5 防御力+10 付属効果:シールドバッシュ使用可能 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2 木材:2
【鉄の鎧】……防御力+20 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:5 銅のインゴット:2 なめし革:2
【鉄のグリーヴ】……防御力+10 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:3 銅のインゴット:2 なめし革:1
【鉄の面貌】……防御力+10 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2
【鉄のガントレット】……防御力+10 付属効果:なし 消費素材 鉄のインゴット:2 銅のインゴット:2 なめし革:1
鉄製の装備を一気に連続生成する。
ボフッ!
作業台の上に鈍い銀色に光る金属製の鎧一揃えと鉄製の武器が新たに置かれていた。
鉄製装備に身を包めば、小鬼程度に苦戦することはなくなる。
そうすれば、霧の大森林から出てくる小鬼の集団を蹴散らすことはたやすくなるなろだろう。
作成した鉄製装備を着込んでいく。【布の服】の上に鈍い銀色の鉄の防具を着込んでいくと、それを見ていたピヨちゃんたちが寄ってきた。
「ツクルパパー。かっこいい!!」
ピョンピョンと俺の周りを跳ねながら、鎧姿を見ているピヨちゃんのテンションはとても高いようだ。
釣られたように有翼人の子供たちも鎧姿の俺を見て、跳ねまわっている。
「かっこいい。ツクル様ー」
子供たちとはいえ褒められれば悪い気はしない。
ちょっとだけ誇らしげな顔をして、ピヨちゃんや子供たちの前で剣を構えてサービスしてあげた。
そして装備がバージョンアップしたので、ついでにステータスを確認してみる。
ツクル
種族:人族 年齢:23歳 職業:ビルダー ランク:新人
LV3
攻撃力:20 防御力:19 魔力:9 素早さ:11 賢さ:12
総攻撃力:55 総防御力:79 総魔力:9 総魔防:12
解放レシピ数:55
装備 右手:鉄の剣(攻:+30) 左手:鉄の盾(攻:+5 防:+10) 上半身:鉄の鎧(防:+20) 下半身:鉄のグリーヴ(防:+10) 腕:鉄のガントレット(防:+10) 頭:鉄の面貌(防:+10) アクセサリ1:なし アクセサリ2:なし
有翼人の集落で小鬼を退治した際にLVアップしていたようで、金属製の装備でガチタンクが完成した。
序盤に出る魔物は物理攻撃が主体なので、物理防御に極振りすれば余裕なのは、ゲームを攻略していた時の知識だ。
これでこの周辺の魔物には、ほぼノーダメージで完封できる。
ルシアや村を守る必要もあるから、俺が簡単に斃されるわけにはいかなかった。
村の警護役としてはゴーレムたちがいるので、そこまで心配していないが、野外活動での護衛は俺が主力を担うことになるだろう。
素材に余裕が出てこれば、ルシアやピヨちゃんの分も装備を整えておく必要があるが、現状では俺を固くして敵の囮にした方が安全性が高いと思われる。
こうして、新たに鉄製装備を身にまとった俺はバートたちを引き連れて、有翼人の集落へ向かい必要な荷物と集落の解体に向かうことにした。







