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第二十四話 夜の明かり

「ここが最果ての村ですか……水路を完備した田畑や立派な土塁まで……それにゴーレムすら稼働しているとは……」


 荷車を引いてゲートを通り抜けてきたバート達、有翼人の村人たちは村の周囲に目を凝らしていた。


 彼らは身の回りの品だけを積んで移住してきているため、早急に今日の寝る場所だけでも制作をしなければならなかった。


 木材とかも結構集まっているから、彼らのための家を用意をしないと。【木の壁】と【木の扉】、【木の屋根】で作る応急的な小屋でしばらく我慢してもらおう。


 雨風を凌げる程度だが、あるのとないのでは、体力の回復度が違うからね。


 ゲーム上では、彼ら住民たちも体力数値が設定されており、魔物の襲撃や作業で低下していき、ゼロになったら死ぬという仕様だ。


 その体力数値を回復させるのが、食事と寝床ともいえる家のグレードとなっており、インベントリから取り出した作業台メニューから家のセットメニューを選んでいく。


 【民家】……【木の壁】と【木の扉】、【木の屋根】を使用した最低ランクの建物。二m四方スペース消費する 消費素材 木材:12 鉄のインゴット:1 レンガ:2 棒:5


 素材は【収集くん】たちがしっかりと収集してくれていたため、十分に足りているため、三世帯分を一気に作成していく。


 ボフッ! 生成されて作業台から飛び出た【民家】は設置するまではミニチュアハウスとして、縮小化されており、設置すると元の大きさの建物となるトンデモ仕様になっている。


 セット以外にオーダーメイドでも家は作れるが、今回は時間が惜しいので、即席でできるセットメニューを使用している。


「さて、バートたちの寝床を作るとしよう。危ないから少しだけ離れていて」


「あ、危ないのですか?」


「危なくはないけど、用心のために」


 バート達のミニチュアハウスが巨大化した際に危険性がないとは断言できないので、離れておいてもらった方が安心できるのだ。


 ルシアたちの【民家】がある辺りに新たに三つの【民家】を位置を決めて設置する。


 応急の寝床であるが、万が一魔物が侵入した場合が全員で応戦できるようにまとまっていた方が良いため、村の井戸の周りは民家スペースとして活用する予定だ。


 ボフッ! 白煙が上がるとルシアたちの家と同じように雨露を凌ぐための最低限の屋根と壁が付いた建物が現れていた。


「一瞬、ですと……」


「一瞬ですな。さすがツ創造神イクリプスの使徒ツクル様の持つ『ビルダー』の力。ご挨拶が遅れましたが最果ての村で村長を務めさせてもらっているエリックです。後ろに控えるのは愚弟のモーガンと申します。此度はツクル様のお導きで我が村に移住してくれること、心より感謝申し上げます」


 歓迎会用の夕食を作りに小屋に戻ったルシアと入れ違いに来たエリックとモーガンが、【民家】が一瞬で建ったことに驚いて茫然自失しているバートに話しかけていた。


「……あ、ああ。はい。これはご丁寧にありがとうございます。私は霧の大森林の近くで有翼人の村を纏めていたバートと申します。それにしてもツクル様の力はトンデモないですな。世の理を越えておられる」


「私も初めて見せて頂いた時は、夢でも見ているのかと思いましたが、つい数日前まではこの村は壊滅寸前だったと言ったら信じてもらえますか?」


「え!?」


 エリックの言葉にまた驚いたバートは、薄暗くなり始めた村の周囲を見渡していく。


「このように土塁や水路、畑まで完備されて、ゴーレムすら稼働している村なのにですか?」


「いえ、ツクル様が来られる前は何もなかった村でした。わずか、数日でこのような立派な村にして下さったのです。信じられますか? 数日ですよ」


 エリックの実感のこもった力説にバートが驚きを隠さずに周囲を見渡していく。


「これが数日で……なんということだ……」


 褒められているような気がしているので、何だかこそばゆい。


 照れくささを隠しつつ、バートたちの今夜からの寝床となる【民家】を三軒並べて設置していった。


 これで、彼らも野宿せずに済むし、消費した体力の回復も行われるであろう。


 今後は寝具や建物のアップグレードなどで更に快適な寝床の提供を進め、村の開発の手伝いに尽力してもらうつもりだ。


「さて、バートたちの寝る場所ができたから、一世帯ずつ好きなのを選んでくれ。今はまだ雨露がしのげる程度の建物だけど、素材が集まったらいい物に代えていくつもりだから我慢してくれるとありがたい」


 完成した【民家】を見ていた有翼人たちからため息が漏れ出していく。


 あちらの村で使っていた建物よりは簡素な作りになっているが、その分、防壁とゴーレムによる警備が厳重化されているため安眠できると思う。


 この世界の夜は光もない漆黒の闇の中を魔物たちが蠢くので、安心して寝られる場所がとても大事になっているのだ。


「あっという間に建ってしまった……。防壁といい、ゴーレムといい。この村であれば、夜でも魔物に怯える必要はないようだ」


「あ、そうだ。明かり用の【松明】と【かがり火】も作らないと。ちょっと待ってて」


 日が暮れて、周囲の明かりがなくなり始めているため、【木材】、【油脂】等を使い、【松明】と【かがり火】を製作することにした。


 俺がビルダーの力で制作すれば、燃え尽きることなく常時明かりを提供してくれるため、夜の安全を更に確保するために制作しよう。


 【松明】……周囲を明るく照らす照明器具 消費素材 棒:1 油脂:1


 【かがり火】……【松明】よりも遠くを照らす照明器具 消費素材 木材:1 鉄のインゴット:1 油脂:1


 ボフッ! 作業台から作成した物が白煙とともに飛び出してきた。


 『ビルダー』の力で作成されたものであるため、火の部分は熱さを感じさせず、明るさのみを周囲に提供するため、万が一の際に火事が起きない親切仕様だ。


 真っ暗で調理用の【焚き火】の明かりしかなかった村に、夜の闇を打ち払う明かりを灯されることになった。


 【松明】は各家に一つ設置し、【かがり火】は村の広場にあるイクリプスの神像前に設置してちょっとした祭壇っぽさを演出し、住民たちが集まる場所として夜の闇を打ち払うことにした。


「ツクルパパー。夜なのに明るいねー」


 仲良くなった有翼人の子供たちと広場で遊んでいたピヨちゃんたちだが、イクリプスの神像の左右に【かがり火】が設置されると、興味を引かれたのか集まって炎が揺らめくのを見ては歓声を上げている。


 これで夜でも村の広場の中なら、人の顔くらいは判別できるだろう


「これは、良いですね。どうせこれだけ明るいなら、バート殿たちの歓迎会も兼ねて、今日は外で夕食を食べますか。これから村を共に作る仲間として、皆で食事を食べるのもいいのでは?」


 バートたちの住む場所ができたことで、エリックが村の仲間として受け入れるため、歓迎の食事会を外で行おうと提案していた。


「いいね。皆で一緒に食べようか」


「わーい。みんなと一緒に食べる―」


 ピヨちゃんも賛成しているようなので、今宵は外で夕食を一緒に食べて懇親を深めることに決めた。


「バートたちも外の食事で大丈夫かい?」


「安全な地を提供して下さったツクル様のご指示とあらば、反抗する気など毛頭ありませんとも」


 どうやら、この村を気に入ってくれたようだ。


 住民が少ない村にとって、新たな住民は開発を進めるためにも是非とも必要な人材である。


 それも、獣を狩る狩猟が得意な有翼人は動物の皮を扱うことに長けているため、動物の皮素材や肉を集めてもらうつもりだ。


 彼らは生粋の猟師で視力が良い上に空を飛べるため、獲物を見つけ出すのが上手いのである。


 ゲームでは彼らの警戒能力に何度も助けられていたし、狙撃の腕も確かな者が多かったと記憶していた。


 ゲーム時は序盤では流入せずにいた有翼人が仲間に加わったことで、一段と村の開発が加速されることになりそうだ。


 色々と整えるべき道具や器具なども作っていかないとな。


 明るくなった広場を見ながら、これからの村の発展に想いを馳せていった。


都市開発状況


都市名:最果ての村


発展LV2


人口:16


ゴーレム:収集くん×7 木こりくん×3


主要施設:民家×6(NEW) ゴーレム生成器×1 素材保管箱(木製) 水路 水浴び場 イクリプスの女神像 製錬炉 かがり火×2(NEW)


防壁:土塁(水掘あり)×二〇メートル四方


門:木製の大扉×1


農地(肥料ブーストアリ): 6/10 ジャガイモ サツマ芋 玉ねぎ 薬草 魔力草 ヘンルーダ

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