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第二十三話 お引越し


 小鬼(ゴブリン)の討伐を終えた俺は広場に集められていた有翼人たちの縄を解いていく。


「どなたか知りませんが助かりました」


 集団の中で一番年嵩の男が頭を擦り付けて礼を述べていた。


 きっと、この村のまとめ役をしている男だな。


「ちょうど、近くまで来たら、村から火の手が上がっているのが見えまして。駆け付けた次第です」


「恩人のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 年嵩の有翼人の男は、俺が見せた戦闘での強さを見て怯えを感じているのか、とても低姿勢な態度を崩さなかった。


「ツクルといいます。ここから南に下った最果ての村でご厄介になってる者です」


「ツクル様と言われるのですか。それに最果ての村ですと……あの村はまだ生き残っていたのですか……数年前に妖狐族の女の子と祖母の連れを送り出したあと、連絡が途絶えていたので、すでに壊滅したものとばかりに……」


 年嵩の男はハッとした顔で俺の方を見ていた。


 やはり、あれだけの僻地であの人数で村を維持できるとは、この男も思っていなかったようだ。


 実際、ゴーレムの力がなければ、今も労働力が不足して村を維持することは困難であるとも思える。


 そういった意味で言えば、この男の驚く顔も案外的外れではないと思われる。


「実はその妖狐族の子にこの村を教えてもらってね。ご挨拶をしようと足を延ばして寄った次第で。来てみたら、ちょうど襲われてる最中でしたので、助太刀させてもらいました」


「おかげで命拾いしました。村の者一同に成り代わり、このバートがツクル様に感謝いたします。見ての通り、小鬼(ゴブリン)に荒されて何も歓待する物がないので心苦しいのですが……」


 村はすでに小鬼(ゴブリン)たちによって火が放たれ、家屋の扉は打ち破られ、防壁も意味をなさなくなっており、夜の間の安全は確保が困難な状況になっていた。


 直すにしてもまた小鬼(ゴブリン)に襲撃されてしまえば、今回と同じ目に合うことは、子供でも感じ取れる有様である。


「礼は別に大丈夫です。バートさんと仰いましたね。この村を再建するつもりでしょうか? 失礼な言い方になりますが、直した所でまた小鬼(ゴブリン)の襲撃があれば防ぎきれないのではないでしょうか?」


 俺は気になっていた件をまとめ役であるバートに切り出してみた。


 下手に小細工を弄して切り出すよりも、現状を認識している分、直球で話を切り出した方が相手の心も動かせると踏んだからだ。


「ツクル様はどう思われますか? 村の世帯は三つで人口は子供含めて一〇人。これだけでこの状態の村を再建できますかね?」


 バートは略奪の跡が残る村に視線を送ると、ため息をつくように再建可能か俺に問いかけてきた。


 俺の出した答えは、再建前に小鬼(ゴブリン)の襲撃を受けて確実に滅ぶと思われるだ。


「多分、どれだけ頑張っても小鬼(ゴブリン)の次の襲撃は防げないと思う」


「私もツクル様の意見に同意します。我らの村はもうやっていけない。我々は村を捨てようと思います。幸い食料の略奪だけは免れましたので、魔物の少ない地で村を再建しようと思います。助けて頂いてお礼もできずに本当に心苦しいばかりですが……」


 バートはすでに村を捨てる決意をしているようであった。


 すでに村を再建するには詰んでいる状況のため、バートの決断は英断だと思われる。


 なので、俺はすかさず彼らを最果ての村の住民としてスカウトすることに頭を切り替えた。


「村をお捨てになられるのか……でしたら、私が厄介になっている最果ての村に越して来たらどうでしょう。食料も豊富とはいいませんが、困らない程度にありますし、立派な防壁も構えていて魔物に襲われる心配はありません。村長も快く受け入れてくれるでしょう」


「最果ての村がそのように発展してると?」


「ええ、一度現地を見てもらい気に入ったら住んでもらえばいいですし、気に入らなければ新たな村づくりをされるのを手伝ってもいいと思っています。でも、見てもらえば気に入ってもらえる自信はありますよ」


 俺はバートたち有翼人を村の住人に加えるべく、熱弁を奮う。


 狩猟の上手い有翼人たちは皮製品を作る技術も高く、この村を放棄するのであれば、是非とも最果ての村の発展のためにスカウトしたい種族なのだ。


「だが、最果ての村はしばらく歩かねばなるまい、今からでは真夜中に到着することになりますぞ」


 バートは日が傾きかけているのを見て移動することの困難さを感じているようであった。


「ああ、その点なら大丈夫です。すでに近くに【転移ゲート】を設置しておりますので、移動は一瞬ですみますから」


 【転移ゲート】と聞いたバートの目が見開いたまま瞬きをしなくなった。


 明らかに理解不能なことが発生したとでも言いたそうな顔である。


「今何と仰られた?」


「【転移ゲート】で一瞬で移動できると申しました」


 バートが確認してきたので、聞き取りやすく大き目の声で返してあげた。


「私は夢を見ているのだろうか。こんな辺境の地に【転移ゲート】などという物があるわけが……」


「歩いてすぐの所に設置してありますので、荷物だけまとめてもらえば、すぐにでもご案内いたします」


「本当にか?」


「本当です。俺は嘘を言いませんよ。日が暮れる前に荷車に荷物をまとめて移動しましょう」


 狐につままれたような顔で不思議がるバートを急かしていく。


 今のまま、夜を迎えれば凶暴化した魔物たちに襲われて骸晒すことになってしまう。


「分かりました。我等を助けてくれたツクル様の言葉に従いましょう。よし、みんな聞いていただろう。これより、我らはツクル様が案内して下さる最果ての村に移住することに決めた。すぐに荷物をまとめよ」


 バートの言葉を聞いた他の有翼人たちも、このまま夜を迎えることは死を意味すると悟っているようで、バートの指示に反発を見せる者はおらず、小鬼(ゴブリン)たちが略奪しようと荷車に集めていた物資に生活必需品を載せて、引っ越しの準備をすぐに進めていった。


 そして、夕暮れ時には俺も手伝ったことで引っ越し準備を終え、ルシアとピヨちゃんが待つ、|【転移ゲート】の前に到着していた。


「ルシア、ピヨちゃん。俺だ、ツクルだよ。この門を開けてくれるかい」


 俺の声に反応して、閂が抜ける音がした。


 そして、ギギギという音とともに【木の大扉】が口を開けていた。


「ツクル兄さんっ! 無事でしたか! 遅いから、エリックさんたちを連れて助けにいこうと思ってましたよ。無事でよかった」


「ツクルぱぱーー!! ピヨを置いてったらメーなの!」


 ルシアとピヨちゃんが中から飛び出して俺に抱き着いてくる。


 引っ越しの手伝いで遅くなったことで、二人ばかりでなく村人たちにも心配をかけてしまっていたらしい。


 おっと、これは後でエリックからお説教が飛んでくるだろうか。


 その前にルシアとピヨちゃんから怒られそうな気もするが。


 まぁ、無事に戻って来れたし、新たなお仲間も引き入れることができたから、お目こぼししてもらうことにしよう。


「これは、ツクル様の奥方様でしたか? あ、いや、妖狐族……あの時の少女か。確か、ルシア殿と申されたはず」


 バートは数年前にあったルシアのことを覚えていたようで、ルシアを見るとペコリと頭を下げていた。


「ああ、バートさん。その節は祖母共々お世話になりました。あの時の御恩は忘れおりません。おかげでうちはツクル兄さんと出会うことができましたので。本当にありがたいことです」


 ルシアもバートを覚えていたようで、姿を見ると同じように頭を下げていた。


「ルシア殿がツクル様の伴侶として子を成しておられたとは。運命とはよく分からぬ縁がありますな」

 

 バートがルシアにすがりついていたピヨちゃんを見て、二人の間の子だと勘違いしていた。

 

 重大な勘違いなので、直ぐに訂正をする。


「バートさん。俺とルシアは夫婦ではないですよ。その子はコカトリスの子で養い子みたいな感じです」


「ピヨはツクルパパとルシアママの子だよー」


「そうでしたか。いや、お似合いな二人だし、可愛い子をお持ちではないですか。いっそのこと、嫁に迎えられたらどうですか?」


 バートは自分が勘違いしていたことを知ったが、認識の訂正はしないようで、俺とルシアが夫婦になればいいのではと提案していた。


 できれば、そうなるのが一番理想だが、異世界人である俺にルシアが嫁いでくれるかと切り出す勇気がまだ持てないのだ。


 ピヨちゃんを通した仮初の夫婦関係がやがて本物になった時に俺は彼女に結婚を申し出ることにしている。


 今はまだその時ではないと思っていた。


「まだ、村が発展途上ですから……落ち着いたら考えたいと思います」


「そうですか。結婚される際は盛大に祝わせてもらいますぞ」


 バートは俺とルシアを交互に見て、豪快に笑い声をあげていた。


 その姿を見た村人たちも一緒に笑い声を上げている。


「ツクルパパとルシアママのケッコンたのしみー」


 ピヨちゃんが周りの大人たちが笑っているのを見て、俺とルシアの間で手を繋ぎ、キャッキャと喜んでいた。


「さぁ、俺たちのことはこれぐらいにして、最果ての村に移動しましょう。【転移ゲート】は起動してますから、ここを潜り抜けてもらえば、直ぐに村の中に出ます」


 土壁で覆った中に設置した【転移ゲート】の姿を見たバート達から嘆息が漏れる。


 僻地ではほとんど見かけることがない、【転移ゲート】の姿に若干の怯えが見えて取れた。


 やはり、初めての人は恐怖を感じるのだろうな。


「ツクル様、本当に大丈夫でしょうな?」


「ああ、俺が先に移動するよ」


 そう言うとゲートの中に突き進む。一瞬で最果ての村の広場に出ていた。


 続いてルシアとピヨちゃんが転移してきて、その後に荷車を引いたバートたちが必死の形相で転移をしてきていた。


 村に新たな住人である有翼人が移り住んできた瞬間であった。 

 

都市開発状況


都市名:最果ての村


発展LV2


人口:16(NEW)


ゴーレム:収集くん×7(NEW) 木こりくん×3


主要施設:民家×3 ゴーレム生成器×1 素材保管箱(木製) 水路 水浴び場 イクリプスの女神像 製錬炉 


防壁:土塁(水掘あり)×二〇メートル四方


門:木製の大扉×1


農地(肥料ブーストアリ): 6/10 ジャガイモ サツマ芋 玉ねぎ 薬草 魔力草 ヘンルーダ

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