第二十話 ぬくもり
みんなで夕食を食べて前の日みたいに別の家で一人で寝ていたら、人化したピヨちゃんを抱えたルシアが血相を変えて飛び込んできた。
夕食の時はひよこのままだったが、ワームをたらふく食べたことで満腹だったようで、ルシアの隣で丸くなってウトウトと寝ていたのだが、今は人化して泣き叫んでいる。
「ツクルパパがいないっ! ルシアママ~! ツクルパパがいない~!」
「ツクル兄さん~。ピヨちゃんがツクル兄さんがいないって泣き止まないんです」
ルシアに抱かれているピヨちゃんが、体いっぱいにジタバタとして悲しさをアピールしていた。
「ごめん、ごめん、ピヨちゃんの傍にいないといけなかったな」
ピヨちゃんが泣いてしまい。オタオタしているルシアから受け取ると宥めるように抱っこしてあげる。
「ツクルパパ~、ピヨを置いてったらメ~なの! ピヨとルシアママとツクルパパで一緒に寝るの~」
俺から離れないと決意したかのように、ピヨちゃんはギュッと首に抱き着いて来ていた。
ここで手を離したら、俺がどこかに行ってしまうと思っているのだろう。
俺の幼少期の最古の記憶は今のピヨちゃんと同じ行為を自分がしていた。
いつも一緒に寝ていたのは祖母で、俺の両親と同じ布団では寝た記憶は数えるほどしかないのだ。
俺が一人寝でしか寝れなくなったのも、きっとそういった体験が大元にあるからだと思う。
「ごめん、ごめん。俺が悪かった。ピヨちゃんと一緒に寝るよ」
「そ、そのいいんですか? ツクル兄さんは一人じゃないと寝られないって……」
「ピヨちゃんが泣いてるからしょうがないさ。もしかしたら慣れるかもしれないしね」
「ルシアママも一緒に寝るの~」
俺にしがみついていたピヨちゃんが、近くにいたルシアの手も握る。
「う、うちとツクル兄さんが一緒に寝るなんて……そんなこと……はわわ」
ピヨちゃんに手を握られて一緒に寝ようとせがまれたルシアが顔を赤くしている。
確かに、男である俺と一緒に寝るのは独身女性としては、とても勇気のいることだろう。
「ごめんな。ピヨちゃんがまた泣くから、ルシアも一緒に寝てくれるかい?」
「え!? いいんですか?」
俺の言葉を聞いたルシアの狐耳がピンと立った。しかも、尻尾までもパタパタとせわしなく動いて揺れている。
喜んでいる? いや、ピヨちゃんが心配なんだろうな。
「ピヨはツクルパパとルシアママの間で寝るの~」
「はいはい。分かったから」
未だ寝具すら完成していないが、ピヨちゃんを真ん中にルシアと俺で川の字になって眠ることにした。
体温の高いピヨちゃんが隣で、俺にしがみついて寝ているため、祖母と寝ていた時の感覚が蘇る。
ばあちゃんと一緒の時はこんな感じだったな。
ルシアがピヨちゃんが風邪をひく心配があるからといって、祖母の形見である衣服をピヨちゃんに掛けるため、家から持ち込んでいた。
異世界で結ばれたちょっと変わった家族関係であるが、俺はこの心地よさに嬉しさを覚えていた。
「ツクル兄さん、寝れてます?」
「あ、いや。起きてる」
「ごめんなさい。こんなことになってしまって……どうしても、ピヨちゃんがツクル兄さんと寝たいと聞き分けなかったから……」
「いいさ。ピヨちゃんから離れた俺が悪かったから気にしないでいいよ。それより、俺の方こそ、ルシアと一緒に寝ることになってゴメン」
「そそそ、そんなこと大丈夫です。うちはツクル兄さんのお役に立ちたいから、どんなことでも大丈夫ですから~」
慌てている様子のルシアだが、ピヨちゃんがいなければ、こうして一緒の屋根の下で寝ることもなかったので、ピヨちゃんには感謝するしかないな。
俺とルシアの間ですぅすぅと寝息を立てるピヨちゃんの寝顔が天使のように愛らしかった。
「二人ともありがとな」
俺はルシアとピヨちゃんに感謝すると、普段は他人がいると気が張って寝られないほどの緊張感を感じる身体がからフッと力が抜けるとともにピヨちゃんの温もりが眠気を誘ってきていた。
俺は眠気に誘われるままに眠りへと落ちていった――。
翌朝、頬をぺちぺちと叩かれる感触で眼が覚める。
「ツクルパパ~! 朝なの~。起きて~。ツクルパパ~」
頬をぺちぺちと叩いていたのは、ピヨちゃんだった。
何年振りか分からないが、誰かと一緒に寝て熟睡することができていた。
「ふあぁあ! おはよう。ピヨちゃん」
「おはようの挨拶~」
そう言ってピヨちゃんが俺の首にしがみついてギュッと抱き着いてくる。
「はい、よくできました。ルシアママにもやってあげて」
「はーい。ルシアママ~」
元気いっぱいのピヨちゃんが朝の身支度をしていたルシアに突撃して、俺と同じようにギュと抱き着いていた。
「あらら、ピヨちゃんは甘えん坊さんね。はい、うちも朝のご挨拶~」
ルシアも俺と同じようにピヨちゃんを抱きしめ返していた。
朝からとっても心がほっこりする。さぁ、今日も村の開拓を進めていくか。
俺は一緒に生活する家族を得て、更なる開拓に向けての意欲を高めていた。







