第十九話 ピヨの力と新ゴーレム
「お、おっと。人化でなくて変身でしたか?」
「ああ、そうみたいだ」
「何だか、畑を見てますね~ご飯が欲しいのですかね。ピヨちゃんご飯欲しいの?」
ピヨ、ピヨロ
ピヨちゃんはブンブンと頭を上下に振っていた。
コカトリスの餌は何なんだろか。人化できるから普通の食事も食べられるだろうけど。
ピヨちゃんが畑を突きたそうに見つめるので、許可してあげると、トトトと走り、何も植えていない場所を突いて、ワームをほじくり出し自らの餌にしていた。
ピヨちゃんがワームをごっくんしてしばらくすると、口からボフンと白煙があがり、素材化した【肥料】がドロップされる。
「【肥料】が生成されている……」
俺はピヨちゃんがワームを食べて素材化させた【肥料】を手にしていた。
【肥料】は栽培により劣化していく畑の状態を回復させ、植物の生育速度を上げるアイテムであり、栽培をするにあたっては重要アイテムになっている。
クリエイト・ワールドでは、【肥料】を生成するための素材であるワーム掘りが面倒で、栽培を挫折したプレイヤーも多数に出ていた。
かくゆう俺も一度、栽培を挫折しかかったが、あの時は住民総出の人海戦術でワーム狩りをして、必要量の【肥料】を手に入れていた。
「それにしても重要なアイテムである【肥料】を生成してくれるとは……孝行娘だな……ピヨちゃん、いい子すぎるぞ」
まだ、お腹がへっているようで、再び畑を突いてワームを掘り出したピヨちゃんの頭を撫でる。
「さすがツクル様の子ですな。【肥料】があれば、更に短い期間で生育させられるようになる。この子はやはりイクリプス様が遣わせてくれた、大事な客人ですな」
エリックたちもピヨちゃんの有能さを理解してくれたようで、とても喜んでいる。
魔物であるため、嫌われるかとも不安があったが、ピヨちゃんは自らの有能さを図らずも示したことで村の住民として認めてもらえていた。
ピヨちゃんにより生成の面倒な【肥料】のストックを自動で行えることが判明し、畑の栽培ローテーションの目処が立った。
「ツクル兄さん、今日とってきた【玉ねぎ】、【薬草】、【魔力草】、【ヘンルーダ】も植えて、【肥料】をまいておいた方がいいじゃないですか~」
「おっと、そうだな。日が暮れてしまう前にやっておこう」
「水やりと【肥料】まきは私たち兄弟にお任せください」
ルシアが苗にして持ち帰った物を植えるように言ってくれた。
完全にぴよちゃんのことで忘れていたが、これから植える物は村の貴重な収入源になる物のふくまれているので、早く植えて増やしていかなければならない。
「植えるのはツクル兄さんたちに任せて、うちはサラさんたちと夕飯作ってきますから、ピヨちゃんのことお願いしますね」
「ああ、分かったよ」
夕食を作りに家に入ったルシアを見送ると、横で畑を突いてワームを【肥料】化させているピヨちゃんと畑仕事に精を出す。
インベントリから苗になった【玉ねぎ】、【薬草】、【魔力草】、【ヘンルーダ】を取り出し、エリックたちが水やりと肥料をまいてくれている畑に植えていった。
植えた物は種や種芋にして増やすため、今しばらくは我慢だが、種さえ手に入れば、一気に農地も拡大して大量に植えることもできる。
そうすれば、食料は安泰になるため、今後も野菜やハーブ、薬効のある草、果物など種類も充実させていくつもりであった。
植え終えたあとも、ピヨちゃんはまだ畑でお食事中であったので、農作業しているエリックたちに一言ピヨちゃんの見守りを頼むと、【ゴーレム生成器】の方へ来ていた。
霧の大森林で退治した小鬼の素材を使って、新たなゴーレムを作成するためだ。
投影されたディスプレイには『収集くん』が映し出されていた。
「よし、背中の【木の籠】を外して、武装を【石の剣】を【木こり斧】に変えると……それでこの子を『木こりくん』と命名しておこう。三体製作っと」
ゴーレムの性能はそのままに武装を変更した物を生成する。
【木こりくん】……戦闘兼木こり用木製ゴーレム 耐久値:120 消費素材:ゴブリンの骨:1 魔結晶:1 木材:3 鉄のインゴット:5 銅のインゴット:2 棒:4
大量の素材を消費するが、木を伐り出した村まで運んできてくれることを考えれば、今後のことも考えるととても助かるので、三体製作する。
ボフッ! 近くに白煙とともに生成された『木こりくん』は命令を入力されていないため、棒立ちであった。
見た目の違いは背中の籠がないのと、武装が【木こり斧】に変化しているだけで、あとは共通している。
早速、収集物に設定できるようになった木を指定してやると、ビクンと震え、動き始めた。
一応、防壁内の木は切り倒さないように設定しておく。
動き出した『木こりくん』たちは門を出ていくと、村の周囲の木を切り倒し始めていた。
これで一定数の木が村に運び込まれるため、後は俺がここで素材化してやればいいだけになる。
残った素材は『収集くん』として生成し、村のゴーレムは『収集くん』七体と『木こりくん』にまで増えていた。
ゴーレムたちが動き出したのを確認すると、積み上げられた収集品を素材化していった。
収集品の素材化を終えると、家から顔を出したルシアが見えた。
「ツクル兄さん~、エリックさん、モーガンさん、ピヨちゃんもご飯できたから帰ってきて~」
どうやら、今日の夕飯が完成したようだ。
転生して三日目だが、こんなまったりとした時間を過ごせるのは、嬉しいな。
村も自給自足へ動き出したし、明日はより遠くへお出かけできるように鉄製の装備を作るため、また鉱山で鉱石掘ってくるか。
今度は【鉄のつるはし】も使えるし、よりいい物が採掘できるようになってるはずだ。
確かあの鉱山地帯は【銀鉱石】も【金鉱石】も掘り出せたはずだしな。
俺は明日の予定を決めると、ルシアの作ってくれた夕食を食べに家に戻っていった。
ゲットアイテム
【肥料】【木こりくん】
都市開発状況
都市名:最果ての村
発展LV2
人口:6(NEW)
ゴーレム:収集くん×7(NEW) 木こりくん×3(NEW)
主要施設:民家×3 ゴーレム生成器×1 素材保管箱(木製) 水路 水浴び場 イクリプスの女神像 製錬炉
防壁:土塁(水掘あり)×二〇メートル四方
門:木製の大扉×1
農地(肥料ブーストアリ): 6/10 ジャガイモ サツマ芋 玉ねぎ(NEW) 薬草(NEW) 魔力草(NEW) ヘンルーダ(NEW)







