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第十八話 ピヨの秘密


 フワモコのピヨちゃんを仲間にした。


 とても大きなひよこだが、最強の鳥系魔物であるコカトリスの子供なのだ。


 だが、見た目はでっかいひよこ。


 俺とルシアのことを両親と思っているようで、甘えるように大きな身体を擦り付けていた。


 へプチっ! 


 そんなピヨちゃんがくしゃみをするとなぜだか白煙が上がる。


「ツクルパパー。もっと遊んでー。ルシアママもー」


 白煙が晴れると、そこには巨大なひよこではなく、五歳児くらいの女の子がいた。


 銀色のショートカットの髪にぴょこんと一筋の毛がアンテナのように立って、燃えるように紅いクリっとした眼はとても愛らしさを醸し出している。


 身体の一部が純白と黒い羽毛で覆われており、まるで服を着ているかのようであった。


「ツクル兄さん! ピヨちゃんが変身してます~」


「あ、ああ。変身したな」


 俺は突然変身したピヨちゃんに驚いていた。


 ピヨちゃんはゲームでは出会えなかった魔物系の放浪者であるからだ。


 魔物が人に変身するだなんて……でも、竜人族は竜が人化した種族だって攻略サイトに書いてあったし、コカトリスも人化できる種族なんだろうか。


「ツクルパパー、ルシアママー、あそぼー」


 ピヨちゃんは人化したことを気にした様子はなく、ちっちゃい手で俺の手とルシアの手を掴み遊んで欲しいとせがんでいた。


「ピヨちゃん。うちはツクル兄さんの奥さんじゃないのよ」


 ルシアがピヨちゃんの視線の高さまで腰を下ろして、諭すように話しかけていた。


「でも、ピヨにとってはツクルパパとルシアママだもん」


 ピヨは俺の手をギュッと更に強く握る。


 そこにいるピヨちゃんの姿は、子供の時に両親が仕事に行くのを嫌がりダダをこねていた自分が重なった。


 親がこのまま帰って来ないのではないかという不安。


 実際、俺は幼少期のほとんどを祖母の手で育てられ、祖母が亡くなり中学に上ってからは、ほぼ何でも一人で行ってきていた。


 俺の親はただ生活する金を与えてくれるだけの存在で、愛情といえる物を注いでくれたのは、祖母一人だったのだ。


 目の前のピヨは俺の子供時代だ……。


 そう思うと、無性に愛おしくなり、俺が祖母からしか得られなかった愛情を注いでやりたいと思えた。


「ピヨちゃんがそう思うなら、俺でよければパパになるぞ。ルシアも形式上でいいんでピヨのママになってくれないか」


「ツクル兄さん……うちがピヨちゃんのママでいいんですか?」


 ルシアがポッと耳まで赤くしている。


「ルシアママのおててがあつーい」


 自分が言ったことの意味を理解した俺も恥ずかしすぎて一気に身体の熱量が上がってしまっていた。


 しまった。調子に乗ってとんでもないことを口走ったぞ。


 ルシアに嫌われないためにも、あくまでピヨちゃんのためにと強調せねば。


「ピヨちゃんのために形式上だよ。形式上でいいんで頼む」


 俺の言葉を聞いたルシアがホッとしたように落ち着きを取り戻していた。


「そそそ、そうですよね~。うちがツクル兄さんの奥さんになんてねぇ。承知しました。ピヨちゃんのためにうちがママをやらせてもらいます~」


「ルシアママ~好き~」


 ピヨは自分の視線まで腰を下ろしていたルシアの首にすがりついて甘えていた。


 ルシアもまた両親、祖母と死別し、身内のいない女性であるため、自分に甘えてくれるピヨの存在を好ましく思っているようだ。


「ピヨちゃん。うちがママになったからには、きちんとした立派なコカトリスに育て上げますからね~」


 ルシアよ。ピヨちゃんを立派に育てるのはいいが、立派なコカトリスになったら毒のブレスや石化ブレスを吐くようになるんだぜ。


 でも、ピヨちゃんなら聞き分けもいいし、みんなの迷惑にはならないかもな。


「ツクルパパ~、抱っこして~」


 ルシアにしがみついて甘えていたピヨちゃんが、俺の方に来てだっこを所望した。


「いいぞ。ほら」


 脇を抱かかえて高く持上げてやると、キャッキャと笑いながら喜んでいた。


 ピヨちゃんが喜ぶ顔が見えると心がじんわりと温かくなる。


 異世界に転生して父親をするとは思わなかったが、案外楽しいし、嬉しいな。


 しばらく、だっこしてピヨちゃんと遊んでいたら、急に眠気を催したようで俺の腕の中で寝てしまった。


「まだ、生まれたてですからね~。疲れて寝ちゃったみたいです~」


 俺の胸に抱かれたピヨちゃんはすぅすぅと寝息を立てていた。


「そうだね。ピヨちゃんも寝ちゃったし、日も暮れそうだから、後は苗にできそうな物を苗にして村に帰ろうか」


「はい、それがいいですね。【魔力草】と【ヘンルーダ】が自生してましたから、案内しますね」


 ルシアが苗にできそうな物を見つけた場所へ案内してくれるようで、俺は寝ているピヨちゃんを起こさないようにゆっくりと歩いてその場に向かった。


 そして、【魔力草】と【ヘンルーダ】を【スコップ】で苗化させると、インベントリにしまい、本格的に寝てしまったピヨちゃんを背負って、ルシアと村に戻っていった。


 村に戻ると、エリックたちが出迎えてくれる。


「お疲れ様でした。ん? その背中の子は?」


 エリックがピヨちゃんに気が付いた。


「ああ、俺の子だ。ちょっと事情があるが……」


 俺の発言を聞いたエリックの顔が驚きに満ち溢れる。


「サ、サラ!! ツクル様が子をもうけられたぞ。どうやら、『ビルダー』の方は子をお作りになる期間もショートカットできるみたいだぞ! 急ぎ、祝いの支度をせねば、ルシアも良くやってくれた。これでこの村にツクル様の血筋が残る。いやぁ、めでたいことだ」


 エリックはキョトンとしているルシアの手をブンブンと振り回し、全身で喜びを現わしていた。


 そんな、エリックの叫びを聞いた、サラたちが家から飛び出してくる。


 だが、エリックの盛大な勘違いだ。


 さすがの『ビルダー』でもそこまではショートカットできないぞ。やったことはないから分からないが……。


 説明不足だったことで、頭の良すぎるエリックが、どうやら大分先回りして現状を認識してしまったようだ。


「いやいや、すまん。説明が足りなかった。この子はコカトリスの子で、霧の大森林で拾った子なんだ。すでに刷り込みで俺とルシアを両親だと思っているので、子供として育てることにしたんだ。一応、魔物だが、人の言葉はキチンと聞き分けられるし、俺とルシアでちゃんと教育を行うから、村に一緒に住まわせて欲しいのだが……」


「な、なんですと……ツクル様とルシアの子ではなかったのですか……すみませぬ。私としたことが早とちりを致しました。それにコカトリスの子ですか? ならば人化しているところを見ると、通常の魔物ではなさそうですね」


「この子はきっと放浪者だ。あの【イクリプスの女神像】が招き寄せた客人だと思う。だから、村で受け入れて欲しい。頼む」


 俺はエリックに深く頭を下げる。


 普通なら魔物は一緒に住むべき生物ではないのだ。


「ツクル様の子となれば、村の一員ですよ。追い出すなんてとんでもない」


「ありがとう。助かる」


 へクチ!


 背中で寝ていたピヨが急に重たくなった。


 ピヨ、ピヨロ


 振り返るとさっきまで五歳児だったピヨは大きなひよこに戻っていた。

ゲットアイテム

【魔力草】【ヘンルーダ】

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