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第九話 更なる素材をゲットに向けて

 ゴーレムたちは無事起動して、素材収集の旅に出ていた。

 

 ルシアはゴーレムたちを見送ると昼食の準備をすると言って自宅に戻っていったが、俺はゴーレムたちだけでは、都市の開発に必要な素材を調達できないと思っているため、『ビルダー』の力を使って、素材収集を効率化させることにした。


 今度は鉱物も掘り出さないと……。早めに【鉄鉱石】や【銅鉱石】を手に入れて、資材を充実させていかないと。


 そのためには、まず【石のつるはし】の作成をしておかないといけない。


 この【石のつるはし】が無いと鉱物系の素材を掘り出すことができず、鉄製の道具を生成できないので、序盤の最重要道具であった。


 鉱物資源が大量に眠る場所は、ゲームでプレイして大体覚えているため、【石のつるはし】さえ、作れればすぐにでも掘りに行くつもりだ。


 なので、まず【石のつるはし】を作成することにする。


 インベントリから【石の作業台】を取り出し、表示されたメニューから【石のつるはし】を選択した。


 【石のつるはし】……攻撃力+20 付属効果:鉄鉱石、銅鉱石、石炭の素材化可能 消費素材 石:5 棒:3


 作成を選択すると、インベントリの素材が消費されて【石のつるはし】が生成された。


 大量に鉱石掘りをする予定なので一〇本程度作っておく。


 ボフッ! 【石の作業台】の上に【石のつるはし】が一〇本飛び出していた。


「よし、できた。これで【鉄鉱石】と【銅鉱石】が掘り出せるようになる。あとは【樫の杖】か」


 それと、ルシアのために魔術の発動体である【樫の杖】も作らねばならなかった。


 これを作ってあげれば、魔術師としてのルシアの強さが飛躍的に向上することは間違いなく、魔物に襲われても自衛が可能になると思われるので、優先的に作成することにしていたものだ。


「ルシアに約束してたからな。【樫の杖】を持って行ったら喜んでくれるぞ」


 俺は、彼女が喜ぶと思われる【樫の杖】を作成することにした。


 【樫の杖】……魔力+20 魔防+20 付属効果:なし 消費素材 樫の古木:3


 【石の作業台】にメニューに表示された【樫の杖】を選択する。


 作業台に白煙が上がると、すぐさま、魔力の発動体である頭の部分が丸くなった【樫の杖】が生成されていた。


「ツクル兄さん~。ご飯ですよ~!」


 昼食を作り終えたルシアが俺を呼びに来たようだ。


「ちょうどいい。これ、昨日約束してた【樫の杖】が完成したところなんだ」


「【樫の杖】!? 本物? こんなに簡単に作れるなんて……。普通なら、【樫の古木】を加工して三日三晩の徹夜の儀式を行ってからでないと、完成しない品物なのに~。こんなにパッと簡単に作られると拍子抜けします~」


 『ビルダー』の道具生成は、この世界では非常識なチート技術らしく、ルシアは驚いてばかりだった。


 少し気になったので、自分の他に『ビルダー』と呼ばれる職業の人がいるのかルシアに聞いてみた。


「ところで、『ビルダー』って存在はそんなに珍しいの?」


「創造神イクリプスの使徒様ということくらいしか、分からないです。でも、大陸の各都市は『ビルダー』が作った都市がほとんどだって聞いてます~。といっても、もう数百年は『ビルダー』を見た人はいないので、伝説の存在なんですけど~」


 そうなのか。俺以外にも別に『ビルダー』がいると思ったが、ルシアの話を聞くと、すでに存在しないのかもしれないな。

 

 ゲームでも他人の街を襲うPKプレイヤーもいたから、こっちでも用心だけはしておこうと思う。


「そ、そうなのか。伝説の存在ね~」


「はい、ツクル兄さんはイクリプス様がうちの村に遣わしてくれたと思ってます」


 狐耳をピンと立てて、フサフサの尻尾がパタパタと左右に揺れているのを見ると、ルシアの尊さが俺の胸を打つ。


 期待の眼差しが心地よすぎる。ルシアの期待に応えられるように頑張らないと。


「ルシアのご期待に沿えるように頑張るよ。じゃあ、昼飯を食べたら、晩のおかずを探すついでに鉱石掘りにいこうか」


「はい! この【樫の杖】さえあれば、魔物退治はうちにお任せしてください」


 俺があげた【樫の杖】を高く掲げたルシアにほっと心が和んでいく。


 誰かと一緒に何かするって楽しいなぁ。一人でゲームしてたのも楽しかったけど、ルシアと一緒だと数倍は楽しく感じる。


 俺はルシアをギュッと抱きしめて頭をポンポンと撫でてあげた。そして、ほんのちょっとだけ、ルシアのピンと張った狐耳をモフる。


「あっ……ツクル兄さん……。あっ、堪忍して、堪忍してください。はぁぅん……」


 狐耳をモフられたルシアも嫌がる素振りを見せず身体を俺の方に預けていた。


 このまま、永遠にルシアの狐耳をモフってやりたいが、あまりやり過ぎては彼女の不興を買う可能性もあるので、断腸の思いで狐耳を弄るのをやめた。


「ごめん、ルシアが可愛かったから耐えられなかった」


「ツクル兄さん……」


 ルシアも狐耳をモフられるのが止まったことで、俺に体重をかけているのが恥ずかしくなったのか、身体を離していた。


 俺もふと我に返り、自分が行った行為を思い返すと顔から火が出そうになる。


「と、とりあえず。その、【樫の杖】の性能は市販品と同じはずだよ。試してみる?」


「そそそ、そうですね。せっかくなんで試させてもらいます~」


 ルシアは、【樫の杖】を構えると試しに火炎の矢を地面に向けて放った。


 ゴォオオウ!! 昨日見た火炎の矢より倍以上太い矢が飛び出して地面を黒焦げにしていた。


 火力的には倍以上の威力が出ているようにも見えた。


「うおっ! 凄い威力だ」


「確かに市販されてる【樫の杖】と同じですね。はぁ、これが簡単に出来てしまうんですね」


 ルシアは【樫の杖】をしげしげと見つめていた。


 通常は三日以上の儀式がかかる【樫の杖】も俺が生成すれば、三秒で完成してまうのだ。


「時短した上に量産できるからね。さまよう木を退治しまくって【樫の杖】を量産してもいいかもしれない。武具類はある程度の規模の都市に行けば、簡単に売り捌けるからね。もっとも、売りに行くのは、この村の状態が安定してからの話だけどさ」


「確かに量を確保できたら、すぐに売れるかもしれません。【樫の杖】も受注生産でしかも結構高いものでしから。うちもおばあさんがお祝いに買ってくれただけで、自分では到底買える値段じゃなかったですから~」


 祖母から買ってもらったルシアの大事な【樫の杖】は、すでに糊口を凌ぐための食料と引き換えに商人の手に渡っていた。


 俺が来たからには、ルシアたちにそのような苦労をさせるわけにはいかない。


 早いところ、食料の自給できるようにしておかないとな。


「相場より安く卸せば、売れるだろうしね。早く、そうできるように村を発展させないと」


「さすがツクル兄さんです。先々のことまで、もう考えているんですね~」


「でも、今はルシアのご飯食べるのが優先だ」


「はっ! そうでした。エリックさんたちももう食べてますから、ツクル兄さんも早く食べましょう」


 ルシアは最初の目的を思い出したようで、俺の手を引いて昼食を食べに家に向かった。



ゲットアイテム


【石のつるはし】【樫の杖】

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