プロローグ
始めに、Re:ビルド!を読んで頂いていた読者の皆様にまずはお詫びを、作家としての能力が足らず、物語を半端な状態で終わらせましたこと深く反省しております。
元々、実験作として書き始め、ありがたいことに読者の皆様の声援とツギクルブックス様のおかげで書籍化できた作品でありましたが、作者自身が軸をぶらしてしまい、物語が迷走を始めてしまい、終りのコントロールを見出せなくなっていました。
書いている内に元のストーリーと乖離して更によく分からなくなるという事態に陥り、Re:ビルド!を完結させ、装いも新たに『Re:ビルド! 改』という形で新たに再構築し直したいという要求が高まり、今回の仕儀になった次第です。
世界観、設定はそのままにキャラクターの立ち位置や、ストーリーを大幅に改変しており、ほぼ別のお話にとなっております。『Re:ビルド!』を楽しまれていた方には真に申し訳ありませんが、絡み合った設定をほぐすより、一から書き直そうと決意した次第であり、作者の自己満足です。
以下、『Re:ビルド!』よりの改変項目です
改変項目
・ツクルのエロい独白はかなり削っています。
・ピヨちゃんに人化設定を加え、ツクルの娘にしてます。
・各キャラクターの方言を無くしました。
・魔王退治ではなくのんびり村づくり重視の話にしてます。
・他細かい設定も変更しております。
ほぼ、別作品といっていいほどの変更を加えておりますので、それでもよければ読んで頂ければ幸いです。この作品の感想欄は閉じさせてもらいます。感想は活動報告に更新報告しますので、そちらによろしくお願いします。
モニターに映し出されたイケメンのゲームキャラクターが、デカイ犬と狼に囲まれ襲われていた。
俺は仕事の残業を終えて帰宅し、日付の変わる頃からすでに四時間ほど、ゲームに熱中しているのだ。
「だっはぁあっ!! 魔王城の敵がTUEEっす。なんだよ、この強さは。確かここは元神殿を魔王が改築して魔王城にした場所だったな。それにしても、敵が強い。ヘルハウンドとフェンリルのコンビなんて誰が設置しやがった。うぉ、コカトリスまでいやがるぞ。石化やめてください。お願いしますから。石化やめて、らめぇええ。お慈悲を、お慈悲を」
四〇インチの液晶テレビに映し出されているのは、新作のビルドゲームである『クリエイト・ワールド』のゲーム画面である。
生産、建設、地形変更、魔物との戦闘、国造り、商売など何でも自由にできるという、売り出し文句で発売された『クリエイト・ワールド』であるが、只今、絶賛攻略中だ。
今年二三歳で大学を卒業して社会人を始めるようになったことで、プレイ時間は格段に減ったが、この『クリエイト・ワールド』というゲームは、創り出す事が大好きな俺にとって、久しぶりに大当たりのゲームなのだ。
なので、残業が続き、夜遅くアパートに帰ってきても若い体力に物を言わせて、『クリエイト・ワールド』をプレイするほどハマっている。
「いやいや。ここでコカトリス急襲とかないわー。このゲーム制作した会社は相当、根性がひねくれた奴か、性格ブスなクリエイターが創り出したにちがいないわー。仕方ない。今日中に魔王攻略して、色々と解放したかったけど、回復アイテムも尽きたし一旦拠点に戻るか。敵の湧かない場所に転移ゲート設置して、サラバでござる」
キャラクターを拠点に帰還させると、そこは大きな都市のような場所になっていた。
俺が寝る間を惜しんで作り上げた様々な建物には、『クリエイト・ワールド』内のNPC達が住み着き、すでに三〇〇〇人規模の堂々たる大都市まで成長していた。ここまで作り上げるのに、休みの日はもちろん、仕事のある平日も徹夜をして今までゲームの中で作り上げてきた中で最高傑作の都市が完成していた。
「相変わらず、俺の作った都市は美しい。機能美、デザイン、防衛力すべてを兼ね備えた最高の都市……。こんなのを実際に作れたら嬉しいだろうな」
ゲームの中に作られた世界最高都市をウットリとして見ているのが、近頃の俺のマイブームであった。
けれど、そんな楽しみにふけっていた俺の心臓の辺りが急に何かに刺されたような痛みが走り、息ができなくなって、そのまま意識が朦朧としていった。
次に目を開いた時には、真っ白な空間で『クリエイト・ワールド』のキャラクター作成時に出てくる女神様に似た女性が覗き込んでいた。
「ここはどこだ? 貴方は一体?」
「非情に残念なお知らせですが、貴方は無理がたたって若い身の上で過労死されてしまいました。いい大人なら毎日夜遅くまで残業してから、ゲーム如きで徹夜なんてしないですよ。貴方、頭の中は大丈夫ですか?」
目の前の女神様は顔立ちこそ綺麗に整っているが、その物言いはグサグサとド直球で心臓を撃ち抜く鋭さがある。
絶対にこの女神様は性格ブスだ。
なまじ、見た目が可愛いから腹立たしさも倍増するぞ。
「だけど、安心しなさい。貴方のその迸る狂気的なゲーム愛が大満足するような転生先を用意してあげたわ。良かったわね」
「よくねぇ! 俺はまだあの『クリエイト・ワールド』をクリアしてなかったんだよっ! 勝手に転生とかさせるんじゃねえ」
「あら、そうなの? せっかく転生先にあの『クリエイト・ワールド』と同じような世界を用意してあげたのに、転生しないの? あーもったいないなぁ。チート能力を持つビルダーとして転生させれるのになぁー」
女神様は、どこかの怪しい笑みを浮かべ胡散臭い顔で転生を勧めてきていた。
「本当にあの『クリエイト・ワールド』に転生させてくれるの? マジで?」
「はいっ! 今なら初心者大満足ツールも付けるわよ 今この時だけの大サービスだからね」
「でも、転生って危ないんでしょ? それに初心者大満足ツールの中身が分からないし」
「大丈夫!! 超難関である天なる国転生女神検定一級を合格したベテラン転生女神のわたしによる転生なの。スライム、ゾンビ、ゴーレム、パンツ等には絶対に転生しない保証付きよ。もちろん、何もできない赤ん坊なんていうのは論外。それに初心者大満足ツールとしてはゴーレム生成器&転移ゲートが各一個ずつ付いてくるわ。今しかこのサービスは付けられないからね。よくよく考えて返事しなさい」
「おー、それはいいな。それだけの保証があるなら、是非転生させてもらいたい」
女神様の胡散臭い口上に乗せられるように、簡単に転生することを選んでしまった。早まった気もしないでもないが、転生後に赤ん坊時代を過ごさなくていいという保証に惹かれていた。
なぜなら、転生して大人の知識を持った俺が、転生先の母親におっぱいを飲ましてもらうのは、ある意味、犯罪級の所業であると思われるからだ。
なので、転生してすぐに動ける身体は非常に魅力的な転生条件だ。
「村上 創様、転生のご成約完了よ」
「へ!?」
軽い感じの口調で女神様が『ご成約完了』と言うと、身体がどんどんと光の粒子になって消え去っていく。
光に変わっていく身体を見て、恐怖にかられた俺は、女神様の方を見ると邪悪な笑みでこちらを見ていた。
「せいぜい、頑張ってあの世界をわたしのために繁栄させていってよね。新米ビルダーのツクル君……ククク、アーハハアッハハ!!」
「騙したのかっ!! おい、転生キャンセルだっ! キャンセル!! ムぐうぇううえう!!」
悪の組織の女幹部のような高笑いをあげていた女神様を横目に見ながら、体中が光の粒子となったところで意識が途絶えた。