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改訂前:終わりの炎と抗う者達【凍結】  作者: しやぶ
第1章 逃避行編
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4 失ったものと

エンデはユダを送り出した後、[限界突破:一式]を発動し、脳が掛けた肉体の制限を一部解除、女の子を抱えて戦線離脱していた


「逃げるぞ」


「ん?アンタだ......」


「喋るな舌を噛む」


「れっ!?」


龍と化したアルは、逃げるエンデ達を追いかけようとしたが、鬼と化したユダが立ち塞がる


戦いは熾烈を極めた


片や巨大な体躯、神に迫る魔力、並の鎧では比較にならぬ程頑丈な鱗を持つ、魔属の頂点たる〈龍種〉


片や戦闘種族たる〈鬼種〉の伝説に登場する英雄と同じ、三本角の〈超越種〉と謳われる特異体。静かな戦いになる筈がなかった


「......ねぇ、アイツらどうするの?この町に、増援として期待出来る実力者は居な......でも【憤怒】なら......いや、居ないわね」


(憤怒?何故このタイミングでそんな単語が出てくる?聞き間違いか?)


「大丈夫だ。元々増援なんて期待していない。鬼と龍、どちらが勝とうが策は用意した。俺が止めてやる」


エンデは緊張で脂汗を滲ませ、半分自分に言い聞かせながらも、この場に残り二人を止める意思表示をした


しかし女の子ーーーー〈盗賊神〉アクアは残る必要が無い。彼女の目的は《レーヴァテイン》の破壊。だが彼女の身体能力は普通の〈人種〉の少女と大差が無いため、彼女に出来るのは暗殺だけ。初撃を防がれた時点で勝ち筋が無くなっている彼女の最善策は、龍の意識が鬼に向いている間に撤退し、ガイアへ情報を届けることの筈だ


にも関わらず、彼女は動く気配が無い。それは、


(コイツ......こんなガッチガチの結界張られたら逃げられないじゃない)


エンデは戦いの余波から女の子を守るため、結界を張っていた。効力を強めるために範囲を極小にしている影響で、逃走したいアクアからしたらこの結界は檻と同じだった



鬼と龍の戦いは暫く拮抗していたが、遂に戦況が動いた


龍は今まで使っていなかった尻尾を鞭の様にしならせ鬼の頭部へ打ち込んだ


不意を突かれた鬼は尾の一撃を、腕を間に挟んで受けると、脳震盪を起こしたのか無防備に立ち尽くしていた


その隙を逃さず龍は鬼に追撃を加えるため腕を振り上げた時点で、エンデが妨害に入る


「これでも食ってろ!!」


エンデが投げつけたのは、近くの露店から拝借した果物


龍化を外部から解除する最も簡単な方法は、意識の消失である。つまり、眠らせるか気絶させれば良い


投げられた果物には、龍の様な巨大な体躯を誇る生物にも即効性がある、強力な〈睡眠〉の概念が付与されていた。しかし


(くそっこうなるのか)


果物はブレスで跡形も無く消滅させられた。最悪無視されても、ユダは一撃喰らった程度では死なないので、アルの鱗の上から果汁を掛け、浸透して効果が出るまで自分が注意を引いて逃げ続けるという作戦もあったのだが、これでは意味がない


(......やりたくないが、素直に助言に従うしかなさそうだな)


魔属は、個体毎に得意な[属性]がある。アルの場合は[共鳴]、ユダの場合は[強化]、そしてエンデは[霊魂]に関する能力が伸びやすいのだが、その中でも特に、降霊術に高い適性を持っていた


エンデは降霊によって〈龍種〉に詳しい霊から情報を引き出していた。その霊の話を信じ、彼はアルの暴走を止めるため走り、距離を詰める



結論から言って、エンデが実行した作戦は成功し、アルとユダは無事暴走を止め、町の住民の人的被害は0であった。しかし、件の暴走していた二人は今エンデにすがり付いて泣いていた


「ごめん!ごめんエンデ!私のせいで!」


「違う!アルは悪くない!僕の力不足だ!」


「二人共何も悪くないだろ......というかそろそろ離れろ。こんな至近距離で騒がないでくれ」


「でも私のせいで腕が!」


原因は、エンデの腕。エンデはアルの龍化を強制解除するため、自分の左腕に先の果物と同じ概念を付与、接近してアルに噛みつく攻撃を誘導、意図的に左腕を食い千切らせた


龍種は高い免疫力も持っており、毒も効かない。プライドからか、他者に与えられた物は吐き出すが、自分から口に入れた物はなんであれ飲み込む習性がある。それを利用して左腕を捕食させ、アルを眠らせたのだ


そしてアルの龍化を解除したあと、気絶したユダを起こし、腕の傷を塞いでもらったのだが、ユダは『爺ちゃんなら腕の再生も出来るのに』と言って泣き始め、目を覚まして龍化していた間の記憶が戻ってきたアルも顔を真っ青にし、エンデにくっついて離れなくなり、今に至る


「だから、アルのせいじゃない。こんなことになったのも全部、アルを狙う神々が悪いんだ」


「..........違う。それも私が悪いの。狙われて当然........私は昨日狼神に殺されるべきだったのよ......!」


「アル!お前が死ななきゃいけない理由なんてどこにも」


「私が生きてると星が焼かれて皆消えちゃうとしても?」


「..................は?」


「だから!私は世界を滅ぼす存在になっちゃったの!だから私は世界を消しちゃう前に死なないといけないのよ!!」


「え?いや待って!ちょっと待って!どういうこと!?いや何を言ってるかは解るんだけど色々解らないことが多すぎて!」


「あぁもう面倒な奴らね!全部説明してあげるから『ワタシを見ろ!!』」


言葉と同時に、エンデ達は気付けば少女を見ていた


ガイアやアルト、ヴォルグも使っていた、神ならば全員が扱える能力〈神言〉


言葉には力が宿る。その力を引き上げる能力だ


「......なるほど、貴方が情報源か」


「そうよ。だからアンタ達二人にも同じ話をしてあげる。けどその前に......そこの黒いの!エンデって言ったっけ?まずこの結界を解除なさい!窮屈過ぎよ!」


「......解った」



その後アクアは状況を説明し終えた


「これで解ったでしょ?ワタシを結界から解放して」


「......なぁ、アンタの目的はあくまで《レーヴァテイン》の破壊であって、アルを殺すことでは無いんだよな?」


「そうよ?それが何か?」


「《レーヴァテイン》を破壊したいのは、アンタも死にたくないからってことでいいんだよな?」


「えぇ、そうだけど......何が言いたいの?」


「じゃあアンタ、俺と一緒に《レーヴァテイン》を、アルを殺さずに破壊する方法を探さないか?」


「は?それを探してワタシに何のメリットが?」


「探さないデメリットならあるぞ?今ここで俺に殺される」


「アハハッ!そういうこと!良いわ!協力してあげる!元々不意討ちに失敗した時に、上の指示は無視しようって決めてたし!」


エンデはアクアに協力を取り付けた。これが、彼等の運命の分岐点となる。その分岐が彼等にとって良いものになるかは、まだ解らない

第4話 失ったものと手に入れたもの

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