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改訂前:終わりの炎と抗う者達【凍結】  作者: しやぶ
第1章 逃避行編
3/13

2 老人と

辺境にある村にしてはかなり大きな家の庭で、二人の少年が木刀で模擬戦をしていた


「今日はここまでだな」


「ハッ...ハイッ......ありがとう、ございました。師匠」


師匠と呼ばれた少年、エンデュミオンは加護を受けた後、家庭教師としてヴァーミリオン家に来ていた


エンデは、大の字になって息を整える弟子を讃える


「あぁ、お疲れ。強くなったなコニー。一対一で訓練通りに戦えば、地方騎士にだって勝てるぞ」


「ハハ......そのオレを息も切らさずあしらう師匠は何者なんですか......?」


その質問に首をかしげながらも、エンデは芝居掛かった仕草で答える


「かつて〈深紅〉の称号を持っていた老婆、エリザベート・クロッカスと、〈純白〉の称号を持っていた老翁ルーク・クロッカスの息子兼弟子だ。親から聞いているはずだが?」


〈深紅〉とは、エンデ達が住む国、〈カラーズ王国〉において最高の剣士に与えられる称号であり、〈純白〉は最高の白魔導師(支援魔法使い)に与えられる称号である


その称号を持っていた二人の弟子だったからこそ、エンデは成人前から家庭教師が出来ていた。そうでなければどんなに実力があったところで門前払いを喰らうだろう


しかしそんなことは夢にも思っていなかったコニーは目を見開いて驚き、続いて納得した表情になる


「聞いてないですよ......この国が戦争してた時代の〈深紅〉と〈純白〉だった人の弟子......道理で強い訳だ......」


それを見てエンデは弟子が『この人に負けるのは仕方ない』と思わないように注意することにした


「ちなみに俺は家の同年代では最弱だ。上には上がいる。今のままで良いと慢心せず、自主練はそのまま続けておけ」


それを聞いてコニーは半身を起こす途中の一番苦しい姿勢で固まる


「師匠が最弱って......冗談ですよね?」


「俺が冗談を言う理由は無いぞ?現実を受け入れろ」


そしてエンデは1月後にまた来ると言いヴァーミリオン家を出る


ーーーー二度とこの家を訪れることはないと知らずに



「ただいま」


エンデが玄関の扉を開くと、両親が殺気と最高の装備を纏い、アルとユダと共に外出しようとしていた場面に遭遇した


瞬間、エンデのスイッチが切り替わる


「......母さん。何が起こった」


「エンデュミオン!丁度良い!帰宅直後で悪いがアンタも付いてきな!状況は移動しながら話す!」


「装備はこのままで?」


「そうだ!時間を優先しろとアタシの"勘"が言っている!」



移動中に聞いた話によると、南門に、近隣の山神、ヴォルグが現れ『この村に、人間には珍しい、白髪と血色の瞳を持った、成人したばかりの少女が居るはずだ。ソイツを此処に連れてこい』と門番に伝えたのだそうだ


事実アルテミシアの外見は、というよりアルビノは世界でも珍しい上、村が小さい影響で村人ほぼ全員にアルの存在は知られていた。そのため門番は馬を使い、迷うことなくクロッカス孤児院に到着。情報を保護者のクロッカス夫妻に伝えたところ、エリザベートが『嫌な予感がする。ルークはローブと杖を準備、アルテミシアとユダは金と武器、それと転移魔方陣を持って出発するよ!急ぎな!』と指示をし、出発する直前にエンデが帰って来たということらしい


(母さんの"勘"は外れたことがない。今回も当たっているなら、まさか......)


ーーーーヴォルグはアルを殺しに来た?


しかしエンデはその考えを否定する


(わざわざ神が自分の領域を離れてまで、一人の魔属を殺しに来る理由が無い)


そしてエンデ達はヴォルグの目的を読めないまま、南門に到着した


「ム?呼んでいない者が4人も居るな。誰だ貴様達は?」


今エンデ達に威圧を掛けている、馬より一回りも二回りも大きい狼こそが、獣から神に成り上がった存在。神獣ヴォルグである


そして威圧に物怖じせず、元〈深紅〉がアルの頭を撫でながら、問いに応える


「アタシ達4人はこの子の家族だ。アンタの用件は他に誰かがいたら出来ないことかい?」


「ほぉ?威圧に屈せず、神を前にしてその不遜な態度......面白い。良いだろう!この場に立ち合うことを許す!家族にはその権利が有る!単刀直入に言おう!我はそこの少女を殺「跳べ!」」


言い切る前にエリザが抜刀、同時にユダへ指示を出す


敵の前で会話をするなど愚の骨頂。その意図を読み取ったユダはアルとエンデを掴み、服の中に仕込んだ転移魔方陣を発動する


「逃げたか......まぁ、それは構わん。それより、人間は相手の言葉を遮って剣を振るうのが流儀なのか?」


「ハッ!娘を殺すって言ってる相手の言葉を最後まで聞く義理は無いねぇ!」


門に到着する前に、支援魔法を受けているエリザは油断無く剣を構える


「それもそうだが、今回は訳を聞かずに斬りかかったことを後悔するぞ?」


「娘を庇ったことを後悔する親が居る訳がないさね!」


そう啖呵を切り、再び斬りかかろうとしたところで、制止が入った


「待てエリザ。ヴォルグから敵意が感じられない」


「フム。そちらの老翁は話が出来るようだな。まぁそう睨むでない。娘が狙われている理由を知りたいだろう?」


そうして少し迷った後、柄から手は離さないものの、剣を納める


「......ロクでもない理由だったらこの場で叩き斬るよ?」


「では話そう。先ずは、ある予言の話からだ。この世界の終焉に関する予言で、内容はこうだ。『全てのものは、やがて滅びる。無から産まれ、無から有を産み出し続ける神も又、滅びるべきもの為り。いずれ神も全てを焼き尽くす炎に焼かれ、星と共に無に還るだろう』神々はこの炎を産み出す存在を、神の言葉で炎を表す単語である《レーヴァテイン》と呼び、長年捜索を続けてきた。そして今日、《レーヴァテイン》が発見された」


話を聞き、理解する。だが違っていて欲しい。その想いから、震える声で、自分から逃げ場を塞ぐ質問をしてしまう


「まさか......あの子がその《レーヴァテイン》だって言うのかい?」


「そうだ」


返ってきたのは、恐れていた、だが予想できていた肯定の言葉


ーーーーそして、予想外の魔法の衝突


魔法を放った老翁は、カラカラと笑い、啖呵を切る


「カッカッカ!神と言っても、消えたくないとは随分と人間臭いことを言うのだな!『全てのものはやがて滅びる』その通りだ!儂とて消えたくはないが、それが定めならば受け入れよう!娘に消されるのなら本望だ!!そうだろエリザ!」


その言葉に唖然とし、続けて隙を見せるのも厭わず大笑いする


「ククッ、ハハハッ!アッハッハッハッハッ!!そうだねぇ!それに、『どうせ老い先短いこの命、今燃やさずしていつ燃やす!』ってヤツさね!」


ーーーー[限界突破:二式]


そして彼女は己が〈深紅〉と呼ばれていた時代の切り札である[限界突破]を発動する


[限界突破]は、脳が肉体に掛けている制限を意識して外す能力であり、二式は全制限の解除を可能とするが、使えば当然肉体に多大な負荷をかけ、寿命が急激に磨り減るーーーー宣言通り命を燃やして戦う気だ


「......会話は無駄だったか。まぁ、良いだろう。神に抗う老人よ!娘を守れず此処で死ね!!」


「「運命に抗う狼神よ!定めより早く此処で死ね!!」」


片や娘を守るため、片や星の未来を守るため、相容れない敵と殺し合う

第2話 老人と狼神

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