19話 異世界って……
子守大変とか言ったけど、あれ嘘だわ。
見た目以上にこの子供、しっかりしてやがる……
実年齢と見た目が噛み合ってない気がするぜ……
耳が長いし、やっぱりエルフとかなのかな?
うーむ、こっちの世界の事情がさっぱりだからわかんねぇ。
ん? なんかこっちを見てきてる?
……うん、その魚の切れ味のいいヒレをまず地面に置こうか。
枝に狙いを定めないで!?
ギャー!? 飛び掛かってきた!?
ふー、根でなんとか取り押さえーー
ギャー!? 根が切られた!?
魚と同じ事すんなよ!
……ん? この場合は魚のほうがおかしいのか……?
てか、あの凶暴な魚をいつの間に仕留めたの、この子?
女の子なんだからもう少しお淑やかにーー
……うん、睨みつけながら魚のヒレを投げるのはやめようか?
というか何処に持ってたのさ、その大量のヒレ……。
ん? そういえば小鳥達は何処行った?
って、あぁ!?
なんで3枚に下ろされた魚が、俺の枝で干してあるの!?
……ねぇ、なんであの子さっき切り取った俺の根を固めて置いてるの?
おい!? 小鳥達、何処からその枯れ枝を持ってきた!?
いないと思ったら、そんなもん拾いに行ってたのか!?
ん? 小鳥達が根っこの周りに枯れ枝を置いていく?
あ、焚き火をする気か!
って、俺の根っこは着火剤代わりか!?
いや、そりゃ切り取った瞬間に一気に干からびるから……
……おい、またなんか狙ってないか?
その手にあるのはヒレを切り取った魚か?
狙ってる枝は真っ直ぐなやつ。あぁ、なるほど。そういう事か。
串が欲しいならそう言えよ……。
仮にも命の恩人?から無理やり切り取ろうとすんなよ。
……あ、言われても言葉がわかんねぇ……。
とりあえず、串に使えそうな枝を用意して渡してやろう。
言葉は通じなくても、種族が違っても、意思があれば想いは伝わるさ。
……伝わるといいなぁ……。
あ、枝で作った串で喜んでら。
こんなもんでいいならいくらでもーー
ちょっと待て。なんだ、今の邪悪な笑みは……?
あ、スルーなのね。お礼言う素振りすらないんだ?
あー串を魚に刺して、魚を焼き始めたよ。
うん、普通に自分で食べるもん用意してますわ……。
……小鳥達、扱き使われてるなぁ。
ってお前らも焼き魚、食うのかよ!?
っていうかさ、君たち一体どこでその魚を仕留めてきたのさ!?
川なんか近くにーー
ん? なんだ小鳥達?
え? あっちを見ろって?
……あぁ、そういう事。
クジラの形をした水の塊が空に浮いてたわ……。
その中で魚が泳いでるのがよく見えるよ……。
……ん? 何処では分かったけど、どうやって仕留めたかは説明になってないぞ!?
おい、勢揃いで魚食ってないで教えろよ!
え、俺の分の魚もあるの? ありがとうね?
なんだか有耶無耶にされたけど、魚食ったら葉が刃物みたいに出来るようになった。
なんか釈然としねぇ……。




