第1話:話が見えない
俺の目の前に広がっていたのは大行列だった。普通に学校に登校しようと思っていたのだが、何故か正面入口に行列が出来ているのだ。行列といっても、せいぜい近所に出来た美味しいラーメン屋さんレベルだ。
いや、ラーメン屋さんをバカにしている訳では無いのだが、コミケなどの大行列を想像しないでいただきたいということだ。
まぁ、普通にコミケを想像する人はいないと思うけど。
(今日なんか行事あったっけ?1年の入学式は昨日だったし…じゃあなんなんだ?)
考え込んでいても仕方ないと、とりあえず列に並ぶことにした。
すると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
「ゆーーーーーうーーーーーーーやーーーーーーーー!!!!!!!」
中学からの親友、大原 海だ。耳をつんざくその声は、前に並んでいる人も目が点だ。
「うるせぇ!!!!」
俺は走ってきた海の額に右手中指にかるーく力を込めてピンッとやった。そう、俺の大特技、デコピンである。
「お前のデコピン痛いからまじやめて。」
そういった海の声は震えていた。彼はこのデコピンを何度も受けているので慣れたのか痛みに叫ばなくなった。
…もちろんこのデコピンを受けた彼の額からは血がピューピュー吹き出しているが、そんなことはいつものことなので気にしない。
というかこいつはこのデコピンがとんでくることをわかった上でああゆう行為を平気でやってのけるのだ。
俺はそんな彼に質問を投げかけた。
「なぁ、海。この列なんなのか知ってっか?」
「え、列?あっ、ほんとだ!なんだこれ!」
(そもそもこの列に気づいてなかったのかよ!!)
流石俺というバカの上を超えるバカだな。感服致した。
「あー…海も知らねぇんだな。そっかそっか。この列無視して教室行ったらダメなんかね?」
「おぉ、頭いいな。よし行くか。」
笑顔でそう答える海はまだ血が止まっていない。少し申し訳なくなってきた。
「あー、その…やっぱ保健室行くか。」
「えっ!朝っぱらから!いやん祐弥くんのえっちぃ!」
「もっかいデコピンしてもいい?」
「ごめんなさい」
やっぱこいつ馬鹿だろ。男子校に入ってから更にこいつのホモノリは加速する。もちろんネタである。こいつは初恋の女の子を未だに忘れられない純情少年なのである。まぁ本人から聞いた話であって、真実なのかは定かではないが。
「おっ、血止まった!」
「おぉ、よかったよかった。じゃ、教室行こうぜ。」
そう言って俺達が教室に向かおうとすると、後ろから声が聞こえた。
「駄目だよ。」
驚いて振り向くと、そこには他校の制服を着た男子高生が立っていた。生徒会の腕章を左腕につけている。
「やぁ、こんにちは。僕達はシンデレラを探しているんだ。」
「お前誰だよ!」
誰だかわからない上に全く話が見えないので思わず初対面の人に向かって荒い口調になる。
「あ、シンデレラって知ってる?」
「たくましいスルースキル!!」
「もちろん、大好きだよシンデレラ!」
「大好きなんだ?!」
「なら話は早いですね、そういうことです。」
「どういうことだよ!!」
俺の質問を無視して海と他校性は会話をする。腹立たしいなぁデコピンぶちかましたいなぁ。そういう事ですとかいってドヤ顔でサムアップすんのほんと腹立つわぁ…。どういうことだよほんと…。
「あの、さっきからツッコミかましてるそこの貴方。もしかして、シンデレラ知らないんですか?」
いやシンデレラは知ってるけど急に知らない奴にシンデレラ探してるんですとか電波発言されて頭がクルクルパーなんだよ。
煽られたせいで更にムッときてしまう。
「シンデレラぐらい知ってるわ!!シンデレラっていうのはなぁ…」
俺は声を整えてシンデレラを語る。
「シンデレラ、それは灰かぶりの少女。日々いじめられてきたシンデレラは最終的に王子に妃として迎え入れられ、いじめっ子である継母や義姉を鼻で笑うことになるという爽快サクセスストーリー。しかし、今となってはすっかり当たり前であるシンデレラは実はシンデレラではない。…というのもシンデレラの起原は「ロードピス」という美しい奴隷の話だと言われているからだ。魔法使いもかぼちゃの馬車も出てこないしそもそも舞台はヨーロッパではない。北アフリカに位置するエジプトなのである。以上のことから元々シンデレラはシンデレラではないのだ。しかしそれはあくまでもロードピスの話なのでシンデレラの話のなかだけでシンデレラを否定するのならばシンデレラの本名だろう。実は本名を「エラ」といい、灰かぶり=シンダー(+エラ)でシンダーエラー、シンダエラ、シンデレラとなったとされているのだ。つまり」
「お前もシンデレラ大好きじゃねぇか!!」
このわけのわからんちんちくりん電波にツッコまれてしまった。死ねる。
するとちんちくりんは、はっと我に返るように言った。
「っと、いけないな、口が悪くなってしまった。仕方ない、この列のことをもう少し丁寧に説明してあげますよ。」
「最初からそうして。」
「実はこの列…」
そういって彼は説明を始めた。




