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1-5  竜の甲殻

 出来上がった製品は、魔物素材の他に軽量なアルミニウム合金を使用している。持ち手には細かい滑り止め加工が施されている。魔力を利用して、金属素材に強化を付与してあるので、へし曲がったりはしない。

 更に耐熱・断熱を付与してあるため、耐火の盾としての使用に十分耐える。持ち手が熱くなって、ブレスを受けている最中なのに、熱くなって放り出すなんて事は絶対にない。


 リオンの盾は比較的軽量で、性能が高く、オーダーメイドにも応じてくれるので人気はある。


 盾をチェックして、製品に問題が無い事を品質管理チェックシートに従い、念入りに確かめてからアイテムボックスに収納した。


 納品のために出かける。相手は大手の防具屋さんだ。宿の親父さんの紹介で取引しているんで、いい商売をさせていただいている。


 宿を出て、左手に進んでいくと、別の大通りとの十字路に出くわす。そこを右折すると、ロイシャー通り、通称冒険者通りと呼ばれる武器防具屋が軒並み並んだ通りになる。


 それはもうピンからキリまで、最高峰のオリハルコンプレートを持つ冒険者から、果てはブロンズさえ持たない登録前の小僧にいたるまで、全ての者が望む品揃えというのがここの売りだ。その雑多な雰囲気が好きで、つい用もないのに出かけてしまう者さえいる。


 大小様々な店が軒を並べ、如何にも怪しい商売をしてそうな店、とにかく安いものを並べまくっている薄利多売の店。金持ちの貴族向けに、とにかく値段の高い高級品を並べまくっている店。そして、リオンが取引するような、通の好む完全オーダーメイドの店。


 その防具屋、「竜の甲殻」は、喧騒から離れた少し落ち着いたロケーションにあった。この店の顧客がそういう雰囲気を好むからだ。

 店構えもそのようなイメージで作られている。質実剛健といった感じの灰色の石材に、頑丈で有名な北方産の木材。派手な赤レンガなんて一切使われていない。


 中堅から高ランクまで、経験が深く、必要な装備には必要な分の金をかける、そんな冒険者のための店だ。


「すいませーん。大盾の納品に来ましたー」

 リオンは声をかけながら入っていった。


「おお、待っていたぞ。どれどれ、見せておくれ」

 店の主人は、眼鏡をかけた痩せた普通のおじさんっぽい感じの人で、防具屋の主という雰囲気は纏っていなかった。

 だが、この界隈ではなかなかの目利きと評判で、売りにくる職人からも、顧客からも定評のある人物だった。


「ふむ」

 指で眼鏡を軽くかけ直して、リオンが出した大盾を、細部にいたるまで鋭い目つきでチェックしていく。この間に「鑑定」というスキルを使っている。

 

「うん、いいね。注文通りの仕事だ。約束通りの取引をしよう。金貨35枚だ。こちらに受け取りのサインを」


 材料費は金貨10枚だったので、金貨25枚。日本円にして、約250万円の儲けだ。ちょっと嬉しい。リオンは顔がにやけるのを止められなかった。


「あと、何か注文は来ていませんか?」

 ちゃんと、オーダーの確認も忘れない。


「うーん、ドラゴンメイルの注文があるが、出来るかね?」


 これは、ドラゴンの鱗から作る。ドラゴンを退治しなくても、鱗を剥ぎ取ったり、古い鱗や死骸からの採集でも作成は可能だが、いつ入荷する事やら。

 待ってるくらいなら、自分で狩りにいったほうがまだ目がある。


「素材がまず入荷しませんので、材料持込に限り御受けします」


「そうか。それじゃあ、出来合いの防具が何かあれば。リオンちゃんの装備はオーダーメイドが基本だから、出来合いは珍しいからね。委託販売でどうだい?」


「それなら」

 そう言って、出したものは、自分的に今一つの評価でオーダーメイド作品としては出さなかったものである。


 ハリガネムシのガントレット。頑丈で弾力があり、魔法付与で耐久性も並の素材では追随も出来ない。たまに魔法でのお手入れに出してもらえれば、かなり長持ちする製品だ。欠点としては、見栄えがしないこと。それなりの冒険者は使わない。


 そもそも、体に直接攻撃を受けるのが前提の武器なので、中堅以上の冒険者はあまり使わない。初心者には有効だが、稼ぎ的にキツイ。逆にいい武器を買って、パリイでしのいだ方がマシであろう。


 ちょっと稼げるようになって、防御を少し重視するようにな冒険者、EからDの下くらいの冒険者向けである。アイテムボックスの肥やしになっているだけなので、ここは特売指定で放出するべきだろう。

 リオンはそういう判断をくだした。


「とりあえず、それでお願いします。特売指定で、それを欲しいという方がいれば無条件で。値段は親父さんにお任せします」


「わかった。では、そのようにしよう。また何かいいものがあったら、オーダーメイド以外でも買いたいね」

 店主は装備をチェックしながら言った。


「わかりました。ではカイルさん、また、お願いします」

 委託販売の預り証を受け取り、挨拶をして退店した。


 次は何を作ろうかな。今入荷してる素材のチェックに行かなくちゃ。


 作者の1作目です。よろしかったら、どうぞ。

「おっさんがオートキャンプしてたら、何故か異世界でキャンプする羽目になった」

 http://ncode.syosetu.com/n6339do/


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