4-4 ご対面
それから、子供達に、 第5王太子妃自ら、スライムゼリーの御菓子を作って振舞った。
「はい、シスター・グランデもどうぞ」
「ありがとう。は~。あの、天下一の暴れん坊だったあなたが第5王太子妃ねえ……」
シスター・グランデはもう諦めたようだった。
「それを言わないでください。私だって、頭が痛いんです」
「大丈夫よ、私ほどじゃないから」
ぐはあっ。こんな事なら、もうちょっといい子にしてればよかったか!
へっぽこ侍女は、素晴らしい笑顔で、御菓子を賞味していた。リオンもそろそろ切り上げることにした。
「それじゃあ、そろそろ帰ります。ロザンナー!」
「はいはい、姫様」
そういいつつ、御菓子はしっかり平らげていた。
リオンは、こいつくらい強かじゃないと、王城では生きていけないのかもしれないと、なんとなくだが思い始めていた。
さて帰るか。人生3番目の我が家へ。文字通り、決戦の城だ。いっそ燃やしてしまえる戦いなら、絶対負けはしないのに!
クアドリー殿下、いや「あなた」頼んだわよ~
あれほど憧れた王城へ行くのが、こんなに気が重いなんて!
何かむかついたので、箒で空から帰る事にした。この世界では箒で2人乗りしてもパトカーに追われる事はない。
ロザンナは大はしゃぎである。
「えー、空から帰るんですかあ。箒に乗ってー? きゃー怖いー」
楽しそうだ。まるでアトラクション待ちの女子高生か何かだ。まだ15歳なのだから年齢的には、間違ってはいないが。
それはそれで何かむかついたので、リオンはぶっとばす事にした。
ビュヒョーーン。いつもとは風切り音が違う。さすがに、マッハで飛ぶのは自粛した。地上に被害をもたらすのはまずい。もう少しの間くらい、猫を被っておかないと。
それを見て、城の見張りの兵隊は頭が痛そうである。スンベール殿下の方から、あの魔女もとい義姉上は、おそらく箒で空からのご帰還となるであろうからと、お達しがあったのだ。まあ、この世界で他に箒を乗り回したがる酔狂な人間もいないのであるが。
さっき上空から、 クアドリー殿下が下にいたのが見えたので、そちら方面へ。怪盗ルーベンスも一緒だった。
ヒューーーー、とわざと効果音を上げながら、タッチダウン。
「ただいま」
「お帰り、リオン」
殿下が挨拶してくれた。
「やあ、怪盗ルーベンス。久しぶりね。長い付き合いになりそうだけど、宜しくね、不肖の義弟下」
スンベール殿下は、苦々しい顔をして、
「御久しぶりです、義姉上。などという挨拶を、あなたと交わさなければならない人生を、少し後悔しているところですよ」
「認めたくないものだな、若さ故の過ちというものは。かな?」
彼の苦い顔に、更に苦味成分が増した。
それを面白そうに見ている人物がいた。この国の現国王であった。
「はっはっはっ。さすが噂の通りの魔女ぶりだな。スンベールよ。怪盗ルーベンスなどと粋がっているから、そういう羽目になる」
「ねえ、クアドリー殿下。あのう、そちらの方はもしかして……」
「ああ、私の父上だ。現トゥリオン王国国王にあらせられる」
えーと、どうしようか。いきなり会うなんて話は聞いていないんですけど。直にそうなる展開には仕向けておいたのだけれども。さらっと顔見せになるなんて。
「ああ、よいよい。ちょっと新しい娘の顔を拝みに来ただけじゃ。それにほれ! わし、もうすぐ引退だし」
い、いや。そういう問題ではないのでは。
「何、ちょっと礼を言いたかっただけじゃ。息子を助けてくれてありがとう」
御義父上は笑顔でそう言った。
あ、そういう事でしたか。笑顔で軽く頭を下げて答える。
「では、参ろうか」
そう言い放った国王陛下の後ろから、ちょこちょことついていくリオンなのであった。
美しい中庭。うっとりしながら、あたりを見渡していくリオン。今日から、ここがあたしの家かー。悪くないなー。まあ、戦場でもあるのだけれど。さてさて、一体どいつが魔女排斥派なのか、確かめさせてもらうわよ~
既に臨戦状態の魔女様。燃えるオーラと魔力を放ちながら歩く小娘に、苦笑する王太子と苦い表情の怪盗ルーベンス。王様は相変わらず楽しそうだ。
そこは謁見の間であった。
(あらあ~、こんなとこでお披露目とは)
「皆の者、よく集まってくれた。待たせたの。今日、わしの新しい娘を紹介しようと思う。
リオン。前へ出なさい」
「はい」
そういって進み出た。いつもの格好で。
「伝統のダンジョン・アタック。クアドリーも向かわせたが、北のノースガイアの刺客に狙われた。このリオンがおらねば、クアドリーもとうに屍よ。今はそんな情勢じゃ。そんな中で、この『無限の魔女』を王家に迎えいれようと思う。必ずや、大きな力となってくれよう。意義のある者は、今この場で申し立てよ。後での申し立ては、一切認めぬ」
「お待ちください。陛下ともあろうお方が、そのような御短慮を」
お、出てきたか。
「ほお? プレマール侯爵よ。わしの判断に不服と申すか」
プレマール侯爵か。タブレットで入力しておく。しっかり、写真も取って。
今私に何をされてるのかもわからないよね、ノースガイアの犬。
「陛下を諌めるのも、我ら貴族の役目とあれば。正気でございますか? そのような者の血を誇り高きトゥリオン王国の王家に組み入れようとは!」
う、痛いとこ突くわね。でも、敵国のスパイ風情に言われるいわれはないわ。そう心の中で嘯く、無限の魔女。
「ほう。何を持って、そのような誹謗中傷を? 場合よってはただでは済まさぬぞ」
王様、少し面白がってるね。今回の件の前にもうとっくに裏が取れてるのかな?
手引きしたのは、こいつか。感謝するわね。おかげで玉の輿だったから。でも、いてもらっちゃ困るな。また旦那の命を狙うんでしょ。未亡人になるには早すぎる歳だもの。




