4-3 商会設立を目指す者として、信用というものについて考察してみた
そーっと、窓から孤児院を覗き込むリオン。
そんな様子を見てロザンナは不思議そうに、
「どうなさいました? 姫様」
「しーっ。シスター・グランデに、見つかっちゃうじゃないの」
「私がどうかしましたか? リオン」
「うわーー」
背伸びして捕まっていた、窓から落ちて尻餅をつくリオン。
「久しぶりですね、リオン。何か粗相はしていませんか?」
その若干心配そうに、姫様を見ているシスターを見て、この暴れん坊の姫様が今まで何をやってきたのか、なんとなく想像がつくロザンナであった。
「あははは。御久しぶりです。シスター・グランデ」
「別に悪い事をやってるんじゃなかったら、叱りはしませんよ。あなたはもう、立派に独り立ちしてるんですから。どちらかというと、マークやジョニーの方が心配です。冒険者は危険な職業ですから」
い、言えない。今、冒険者として、大暴れしていたなんて! マークやジョニーとも、やりたい放題にしてたし。久しぶりの孤児院でも、やっぱり脂汗が滲むリオンであった。
「きょ、今日は少しご報告がありまして。その、良ければ皆さんお集まりのところで」
リオンのただならぬ様子に、少し、いや、かなり不審そうな顔を向けるシスター。だが、彼女はもう自分の管轄でない事を思い出し、溜めていた息を吐いてから言った。
「そう。じゃあ、みんな集めるわね。その前にもう1回だけ訊くわ。何もやってないのでしょうね?」
ぶんぶんと、思いっきり頷くリオン。
シスターの後姿を眺めつつ、リオンの真横に立ち、ロザンナは言った。
「姫様、ぜっんぜん信用無いのですね」
「言わないでっ!」
何か催しとか、集まりのある時にやる多目的ホールというか、単なる広間に孤児もシスターも集まって、わいわいやっていた。
「あ、リオンだー!」
「リオーン」
「リオンちゃーん」
小さな子供たちから、大歓声が上がった。
「姫様ってば、小さな子供には人気あるんですねー。シスター達には人気どころか全然信用すら無いのに」
「お黙り、ロザンナ」
もう、すっかり打ち解けたので、お互いこんな口の利き方になっていた。もう肩肘張ってもしょうがない。当分の間、姫あるいは王妃と、侍女の関係は続くのである。
「みんな集めましたよ。で、何のお話なんです?」
相変わらず、不信そうな目つきで訊くシスター・グランデ。
リオンはぐいぐいっと、肘でロザンナを突く。
ロザンナはしょうがないなあ、という顔で。
「ああ、皆様お初にお目にかかります。私ロザンナと申しまして、姫様の侍女を勤めさせていただく事になりました。宜しくお願いいたします」
「姫様?」
「侍女?」
「?」
「?」
「ロザンナさん、それは一体なんのお話でしょうか?」
シスター・グランデも面食らって訊いた。
「いやですわ。この国の王太子クアドリー殿下の側室になられた、第5王太子妃リオン殿下の侍女に、決まっているじゃありませんか」
さらっと言った。
全員、きょとんっとして、よく理解できなかったようだった。
「第5王太子妃?」
「リオン殿下?」
「王太子クアドリー殿下の側室?」
「……」
シスター・グランデの顔がどんどん険しくなっていって、ギギギギっという感じで首が回り、リオンに向き直った。
「リオン……今度はあなた、一体何をやらかしたのです?」
全く信用されていない。
うんうんと頷くロザンナであったが、リオンは、
(ええーい、このへっぽこ侍女。へたな説明するんじゃないわよ!)
「ええーと、別に変な事はしていませんよ。王都で職人してたら、都合で冒険者になったんです。で、ダンジョンに潜ってたら、クアドリー殿下が暗殺されかかってたんで、エンシェント・ドラゴンをぶっとばして助けました。そうしたら、何故かこんな事になってしまって」
シスター・グランデはロザンナの方を見たが、素晴らしい笑顔で頷かれたので、眩暈を抑えるかの如く顔に手を当てた。
「な、なんという事……この国の未来は大丈夫かしら……」
ロザンナはもう体をくの字にまげて腹を押さえている。
「~~~~」
もうっ。だから、来るのいやだったのよ~。いずれ、わかる事だから、諦めて来たんだけど。やっぱり、こうなったのか……
がっくり、膝を付くリオンだった。
見れば、他のシスター達も、眉の間を手で揉んでたり、頭抱えてしゃがみこんでいたり、腕組みして凄く深刻そうな顔してたりで。
子供達は、ロザンナに、
「リオンちゃん、お姫様になるのー」
「そうですよー、直に御后様にもなりますねー」
お気楽な侍女がそうのたまった。
「「「すごーい」」」
うん。君達、気楽でいいよね。こっちは、これから多分戦争。基本、武力行使が許されないから、手は考えないとね。




