3-14 魔女の決断
その時リオンは何か違和感を感じた。何というほどの理由もない、ただ感じたのだ。これは魔力の流れ。
「警告! なんらかの魔力の流れを検知。大規模なトラップの可能性あり。各自警戒せよ」
大きな声で全員に警告を発した。
シーフ2名が各々チェック。しかし、何も感じられない。
「気のせいだったという可能性は?」
「ジョンソン、彼女の意見を軽視しないで。魔法使いは魔力の流れに敏感なの。いつもは、そんな物は絶対に無いわ。何か異常な事が発生している可能性も考慮して」
ジェシーが警告する。
ガルちゃんの様子が変なのを、ベックは見のがしていなかった。注意深く、あたりを見回して、神経質そうにしている。
「気をつけて、ゆっくり進もう。リオン、何か感じたら教えてくれ。他の魔法使いも。ワンコもな」
「了解」
「わかったわ」
「ラジャー」
「ワンっ」
だが、遅かった。誰が踏んだのか、わからない。だが、トラップは突然発動した。
「リオン、空間トラップだ。飛ばされるぞ、こっちへ」
ガルちゃんが叫んだ。
「ワンコ、喋るのか!」ベックの声だったろうか。
「くそっ。分断されるのか! 全員なるべく固まれ」
やがて、光の本流が全員を包み込み、その姿は掻き消えて、静寂だけが残された。
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「おい! 誰かいるか?」
ベックの声がした。
「ういーす」ヨシュアさん。
「魔法トラップかしら?」ライラさん。
「何があったの」マリカさん。
「生きてまーす」マーク。
「びっくりした~」ジョニー。
「はぐれなくて良かった」この人だけ名前知らない、斥候の人。
「うちはどうだ?」とジョンソン。
「わしはここじゃ」アンソニー。
「はぐれた奴はいるか?」ブロンソン。
「ぼくはここさ」ロイス。
「あたしもいるわよ~」ジェシーさん。
「良かった。全員いますね。とっさに魔力ロープで全員ガルちゃんにくくりつけておいたのですが。これは迷宮のトラップではありません。何者かが、人為的に仕掛けた隠密魔法トラップです。ここには人間の敵が存在します」
「なんだとう?」
驚くベック。
「リオン、それでは、何者かが我々を狙ったとでもいうのか?」
ジョンソンがいぶかしむ。
「まさか。我々相手に、こんなコストをかけたりはしませんよ。モンスタートレインでも食らわせればいいですから。多分、狙われたのは第1王子。我々はきっとただの巻き添え。この分じゃ王子様もひっかかったかな」
リオンは淡々と言った。王子様なんて、雲の上の人。本来ならば。脳裏にふと、あの残念王子の顔が思い浮かんだが、消し去っておく。
「それは……」
ジョンソンも顔を曇らせる。
「ライラ、ここはどこかわかるか」
ベックさんが尋ねる。
「えっと……」
眉を顰めて、確認しようとするが、わからないらしい。
「わかりますよ。よくないですね。ここは最深層の地下100階。ダンジョンの主がいる階層です」
リオンもしかめっ面だ。
「な!」
絶句するベックとジョンソン。そう、ここは「オリハルコン推奨ゾーン」
沈黙が支配する。戻るのも地獄。進んでも死があるのみ。
「戻るぞ。全員、覚悟を決めろ」
まさに、その瞬間。何かが吼えた。
きっと、ここの主だ。魂を凍らせるような咆哮。だが、それを聞いて凄惨に笑った人物が2名いたのをベックとジョンソンは見逃さなかった。いや? 片方は人間ではなかったが。
「王子様が齧られてるのかな?」
半分、おかしそうにリオンが言った。
「ベックさん、ジョンソンさん。多分もう逃げられないから、我々で立ち向かいましょう」
事も無げに魔女が言い放った。




