3-9 ダンジョン・アタック
ダンジョンへの編成は、基本的にリオンを守る形。リオンさえ残せば、基本成功なダンジョン・アタックとなる。
まず、獲物の確保。水食料の確保。回復魔法。武器防具の整備。攻撃魔法。ダンジョンへのアタックにあたっては、リオンは万能選手。
欠点としてはダンジョンの経験が全く無い(ダンジョンどころか、冒険者として初仕事)、子供なので体力不足・通常の護身能力もやや不足。双方のチームから魔法使いが脇を固め、ジョンソンがつく。これでカバーして、今回はしのぐ。そして、ガルちゃんがいるのだ。
盾が2枚。シーフが2枚。アタッカーが3人。あと見習いが2人遊撃。ワンチームで攻めるのに比べれば、分厚い布陣。何より、無限の魔女は本来、攻撃魔法使いなのである。指示どおりに動けばいいなら、初陣でも、守られながらそれなりに戦えるはず。
両チームのリーダーでそう布陣を決めた。
1泊は宿屋で過ごし、野営の疲れを癒す。特にドワーフのアンソニーは、しばらく禁酒という事ではじけていた。まあ、ドワーフなので、翌朝戦えないという事はありえないだろうと、大目に見られていた。最低でも二週間ほどは地上に帰ってこられないのだから。
リオンもマークやジョニーと一緒にわいわいやっていた。
「そういや、聞いた?」
果実水を片手に、マークが言った。
「何をー?」
フォークに、大きなソーセージを突き刺したリオンが、話半分に聞き返す。
「いや、王子様がダンジョンにアタック中なんだってさ」
「ふーん」
そっけない返事。ソーセージにかぶりつく。熱い肉汁が広がって、リオンの顔がほころびる。
「お前、子供の頃、いつか王子様があたしを迎えに来るんだって、そういう物語にばかり熱を上げていたじゃないか」
「そんなもん、怪盗ルーベンスに会った時から、幻想に終ったわ。もう子供じゃないのよ。で、あの残念王子がここで何やってるって?」
リオンはかなり、お冠だ。よっぽど、あの王子に腹据えかねているらしい。いや、子供だろう。
「あー、第2王子の方じゃなくて、第1王子。ほら、今の王様って結婚するのが遅くて、もうそろそろ引退じゃない。この国って、昔は王族でもそういうダンジョン・アタックって頻繁にやられてたし。王たるものが、ダンジョンの一つや二つ潜れなくてどうするって。今でも名残で、王様になるにあたっては王太子様でもやるんじゃねえの?」
相変わらず情報通のマークが、そんな話を。
「かちあわなきゃ、いいんだけどな」
とジョニーも。
「もごもご。大丈夫だろう。王族のダンジョン・アタックは最下層目指してるから。ミスリル騎士団も一緒にさ。俺達は中間層中心だからな」
果実水でハムステーキを、流し込みながら、マークも返事を。
「そうねー。よいっと。まあ未来の王様には勝手に頑張ってもらいましょ」
マークのハムステーキを、1切れ横取りしながら、リオンも言う。
孤児院にいた頃は、よくやられたよなと感慨深く、マークもリオンのソーセージを強奪する。
「あ、それー。後の楽しみに取っといたのにー」
「お前、何言ってんだ? 美味い物は先に食う。孤児院育ちの鉄則だぜ。ぬるくなったな、お前」
「ううっ。最近、おっさん達に優しくされすぎて、生存競争の厳しさを忘れてたわ」
溢すリオン。
「この世は、弱肉強食さ」
勝ち誇るマーク。
「半分返せー」
強引に齧りついて、半分奪い取るも、肉汁が服の上にこぼれて慌てる。
その姿を見て、ジョンソンは、
「やれやれ。ああしてるのを見ると、まだまだ子供だな。あれが、あの惨劇を引き起こした、無限の魔女とは未だに信じられんが」
そのぼやきを聞いてベックが、
「何を言うか。お前が入ってきた時のハナタレ具合だって、相当なもんだったぞ」
笑いながら、杯を傾ける。
「それを言わんでくださいよ、大将」
かつてのリーダーと、杯を合わせ飲み交わすジョンソン。
旧知の仲を深めつつ、ダンジョン・アタックの前夜祭の夜はふけていった。
翌朝、13人全員がダンジョン前に勢揃い。総大将はベックが務める。彼はBランク、シルバープレートの冒険者だ。
「もう1度、布陣を確認するぞ。シーフ2名、1人は斥候、もう1人は罠感知並びに罠解除。盾役は基本横並びに展開。盾の両脇にアタッカーが入る形。そこから後ろは新人2人が漏れを抑える形、いけるようなら遊撃で前に出ろ。無理はするなよ。アタッカーの邪魔はするな。後ろにジョンソンはいてくれるんだからな。
ワンコはご主人様の護衛な。--ワンっーーおお、元気がいいな。いいぞ。
魔法使い3人は、それぞれの役割を果たしてくれ。ベテラン魔法使い2名は後ろにも気を配っておいてくれ。リオンもワンコに後ろも見させておいてくれ。鼻が利くからな。--ワンワンーーおお、よしよし。以上だ」
こうして、2チームの混成部隊の13人と1匹は、 ダンジョンへと目指すことになった。




