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3-1 冒険者になります

「ちょ、ちょっと待ちな。お嬢。冒険者になるって……」


「そうだよ。危ないから冒険者になるのはやめたんだ、って言ってたじゃないか。孤児院の男の子に誘われたけど、断ったんだろう?」


「そうそう、確かに魔法は凄いんだろうけど、経験の無い子供がいきなり活躍は難しい。今までどおりに職人しながら、商会を目指した方がいいんじゃ」


 子煩悩なおっさん達が、心配しまくりだった。


「皆さん、ご心配おかけします。今回の件で、やっぱり弱いままじゃ夢は叶えられないと思って。オリハルコンの冒険者セシリオさんにも、会いました。お金と力があれば、夢も叶うのかなと思って。むやみなリスクは背負いませんけど、必要なリスクなら!」


 考え込むロバートおじさん。

「そうか。そういう風に考えて、決めたのか。自分の人生は自分のもの。他人が余計な口を挟むわけにもいくまい」

「あなた!」


 ロバートおじさんが手でおばさんを制し、

「どうせやるなら、安心できるパーティと組んでやるのがいいだろう。まさか、1人と1匹で行くつもりじゃないんだろう?」


「はい。そのつもりです。で、どこかのパーティを紹介してもらえないかと思って。もちろん見込みが無いようなら、撤退して修行しながら時を待ちます。あんまり無謀な人達とは一緒に行きたくないです。あと、女の子ですし、そのへんも」


 おっさん達も最初は猛反対だったのが、私の覚悟が決まっているのを見て、真剣に考えてくれた。


 あそこのパーティはどうだ、ここのパーティはどうだ。フォークを振り回しながら、喧々諤々。あいつがいい、いや? あいつは思慮深さに欠ける、と。興奮して、机バンバン叩いてる人もいる。


 リオンはにこにこしていた。こんなにも、自分を心配してくれる人達がいるのが嬉しくて、ついにまにましてしまった。


 女癖の悪い奴はパス。出来れば女性メンバーのいるパーティ。若すぎれば思慮深さに欠ける、よく気の回る出来た奴がいい。やっぱ強くないといかんだろ。

 様々な意見を加味して、あるパーティに見習いとして紹介される事になった。



 お昼前に、そのパーティのリーダーの人がやってきた。

 年は30歳前後? 比較的がっしりとした感じで、やや濃い目の金髪を短髪に。目は濃い目の青。どちらかといえば整った顔立ち。酷薄そうな感じは全くしないけど、子供がパッと懐くような感じはしない。第一印象はそんなところだろうか。


「こんにちは。チーム・ジョンソンのリーダーのジョンソンだ。宜しくな、リオンちゃん。まさか王都に悪名高い、無限の魔女がうちに所属する事になろうとは」


「きゃー。言われちゃったー」

 周りのおっさん達が腹を抱えて爆笑した。もう、笑い過ぎ! リオンはちょっと頬を膨らませた。


「はっはっはっ。まあ、宜しく頼むよ、ジョンソン」

「わかりました。おやっさん」


 そして爽やかな笑顔でリオンに向き直ると、

「じゃあ、今から来れるかい? メンバーを紹介するよ。一緒にランチにしよう」

「わかりましたー。装備は必要ですか?」


「いや、今日はいいよ。そのままで結構。明日見せてもらおうか」

 そう言って、 ジョンソンは先に宿を出て、歩き出した。リオンもガルちゃんを抱いて、足早に後に続いた。


 それを横目に見ながら、伸びをして、

「その犬は出かけている間はどうするんだい?」

「え? 連れていきますけど」


「いや、連れていくって……」

 ジョンソンは困惑したが、リオンが続けた。

「この子、超獣ですから」


「な、なに!?」

 ジョンソンは慌てて、リオンの抱えている犬を見直したが、ただの子犬にしか見えない。担がれたのか? 珍妙な顔をしているジョンソンに、

「幼体化の魔法をかけているだけです。超獣のままでは、連れ歩けませんから。今度お見せします」


 ジョンソンは俄かには信じられないといった表情だが、そういやこの子は無限の魔女と呼ばれるほどの魔法使いなのだった。まあ、後で確認しよう。


 しばらく歩くと、「天空の宿」と書かれた宿屋があった。

「ここが、我々の常宿だ。まあ、中に入ってくれ」


 なるほど、この世界では大規模な王城などを除けば、4階建ては珍しい。それで天空の城か。

「メンバーで見晴らしのいいとこが好きな奴がいてな。他のメンバーは、上るのが面倒なんで、平屋でもいいくらいなんだが」


 うん。見晴らしのいいとこっていいよね。でも毎日4階まで上がるのはいやだよ。


 1階の食堂へ行くと、

「遅いぞジョンソン。もう始めているぞ」

 そういいながら、酒のグラスを握り締めているのは、凄い髭のずんぐりしたおっさん。多分ドワーフだ。


「あら! 可愛い子ね。宜しく、お嬢ちゃん。私はジェシー。アンソニー、自己紹介くらいしなさいよ。これだからドワーフは」

 スラリっとした、珍しい綺麗なブルーの髪をした美人が、洒落た柄付きのグラスを片手に言った。淡いバイオレットの瞳。なかなか変わった色合いだが、よく似合う。むしろさらに魅力を引き出していると言える。多分魔法使いだ。リオンもそうだけど、強力な魔法使いは少し変わった瞳の色をしていることが多い。


「 アンソニー、まだお昼前だよ。いるのはぼく達だけだ。ぼくはロイス。宜しく、無限の魔女様」

 少し優男的な彼が言った。柔らかい物腰の男で、このメンバーの中では一番子供にもてそうだ。黒に近いほど濃いこげ茶の髪を品よく整え、瞳も濃い茶色だ。


「ああ、先に始めてるぞ。 アンソニーが煩くてな。俺はブロンソンだ。宜しくな」

 がっしりとした体格は、なるほど戦士のものだ。片手には豪快に巨大なエールのジョッキが


 このメンバーにジョンソンを入れた計5名が、リオンがこれからしばらくの間運命を共にする仲間となる。

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