2-5 コンクールに向けて
作品は作っていく。しかし黒い噂は広がる。落ちていく意欲。それでも、仕上げてはいく。何かあっても問題ない範囲。仕上げで勝負。
リオンは「冷蔵庫」をテーマにしていた。機能は原始的なものを使用する。まあ、「氷の冷蔵庫」だ。日本でも、昔はそのタイプだった。
当初は、電源代わりに魔石のカートリッジを使用し、電池代わりにしようと。そして、その電源を利用したシリーズの魔道具の販売を。
魔力を持っているものは、自分で魔力の補充が可能。魔力が無いものは、販売店に行けば充填または充填済みの物と交換してくれる。
冷蔵庫本体も、冷気を循環させるもので、冷蔵室・野菜室・冷凍庫とわけられる、本物の冷蔵庫のようなものだった。
しかし、こんな事になったので、企画変更になった。一応魔石は取り付けられてはいるものの、取り外しは出来ない。魔力の補充が出来ないので、実質一般の人は使えない。
魔道具は、そういう状況なので、高価なのと相まって一般には普及していない。それを、少なくとも、魔力に関してはなんとかしようという画期的な企画だったのだが。
「電池」というものを知らない人間には出来ない発想である。
とりあえず、デザイン勝負なので、毎日色んなデザインをしては、色んな素材で作成して、各種シリーズとなった。形・色・大きさ。どれも、一応は設計図をファイリングして、いつでも作れるようにしておいた。
使用するのは、魔法で作り出した地球素材ばかりなので、他の工房には同じ物は作れない。もっとも、それは材料費がかからないからという、切実な理由からの選択なのだが。
工房などという、いいものは無いので、宿の部屋がアトリエ代わりだ。もっとも、今の規模とやり方ならば、工房などいらないのであるが。
運動不足になるので、ワンコの散歩にはたっぷり時間をかける。
相変わらず、この駄犬は情報を出さないし。もう既にこいつが超獣だということを殆ど忘れかけているリオンであった。
息抜きに、可愛い洋服や、新作の下着を作ったり。忘れていたが、鎧だけでなく武器がなかったので、剣シリーズを。前世で、本物の日本刀を扱う道場へも行っていたので、日本刀もシリーズで作った。さすがに魔法で軽量化はしておいたが。
槍も一応作ってみたが、女の子が持っても見栄えがしないという理由で却下。どうせ、魔法しか使わないのだから。
孤児院時代に手ほどきはしてもらったので、武器は一通り扱えるが本職には叶わない。
色々一通り、記念撮影をして、アイテムボックスにしまっておいた。一応、商品としての武器を作っておいたが、それほどいい物は作っていない。無料素材しか使っていないので、どうしてもチート武器にはならない。
どうにも食うのに困ったら、仕方ないから売るかみたいなスタンス。気分転換で造っただけだし。
気分を変えて、乗り物も色々作ってみた。自転車、三輪車、一輪車。ローラースケートにキックボードにスケボー、ホッピングや竹馬まで。使いもしないスノボやサーフボードまで。乗り物と呼べないこともないが、微妙なものも多数。気分転換に色々乗り回してみる。
まあ、魔法を使えば、サーフボードやスケボーだって空を乗り回せるのだが。何か美学に反するような気がして。魔女ならば箒のこだわりくらいは持ちたい。
見られると、やっかいなので、王都の外へ飛ぶ。
爽快だ。実に爽快だ。頬を伝う風。飛行帽のようなヘルメット、そしてゴーグル。石畳の街道を驀進するオートバイに跨る魔女がいた。
本当は転生前に乗っていた1000CCの大型バイクが欲しかったのだが、石畳の道にあまり合わない上にでかすぎる。ちっさめのアメリカンで我慢。スポーツタイプよりはバランスが取りやすい。この世界では、どっかり座るスタイルが乗りやすいのだ。オフロードバイクでこの世界の荒野を突き進む趣味はない。地中に潜む魔物もいるので。
またもや爽快感に包まれる。きらきらと金髪が風に舞う。今度はオープンカーだ。体のサイズ的に軽のスポーツだ。その代わり、F1マシンに使うような、軽量で強い素材を使っている。エンジンはDOHCターボ。魔法で覆ってあるので腹は打っても大丈夫。
ガルちゃんが、窓というかドアに前足をかけて、頭をというか、届かないので鼻面を外に。どうして、ワンコは窓の外に頭出したがるのだろう。日本だと油断すると、愛犬の頭が無くなっているかもしれない。
だいぶ現実逃避が捗ったので、リオンは帰ることにした。魔女には、やはり箒がよく似合う。今度は竹箒とかもいいかな。
円盤型のお掃除ロボットを作って、ガルちゃんを載せてみてもいいかもしれない。
商業ギルドへコンクールの出品物を提出しにいくことにした。あまり気が進まないので、後回しにして、現実逃避していたのだ。
馴染みのお姉さんのところで手続きをしてもらった。出品番号960。嫌な番号だな
ベネット氏が声をかけてくれた。
「やあ、コンクールの方はどうだい?」
「今、出品物の提出をしてきたところです。もうデザインで勝負にしました」
「それは悪くはないかもねえ。やたらに技術に凝ったものはを渡さないほうがいいかもしれない」
少し顔を顰めて。
ん? 何かあったのかな?
作者の1作目です。よろしかったら、どうぞ。
「おっさんがオートキャンプしてたら、何故か異世界でキャンプする羽目になった」
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