表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

2-4 地道に頑張る

 デザインで差をつけるという考え方もある。特に機能美。この機能のために、このデザインがある。だから、この商品は美しい。意味のある美しさ。そんなコンセプトが新しい考えとして、評価されるかもしれない。

 今回は、新しい画期的な技術は出せないという制約があるので。


 リオンはPCを操作して、色んなデザイン画を生み出していた。「生前」に見たようなものばかりなのかもしれないが。デパートや電器店めぐりとかは大好きだったほうだ。


 根を詰めても仕方が無い。気晴らしに何か仕事が無いか、商業ギルドを覗いてみることにした。ワンコの散歩も兼ねて、お出掛けである。

 お気に入りの自作ワンピを引っ張り出して、踵の大きな可愛い茶色の革靴とセットで。リードも、お洒落なピンク系である。


 商業ギルドへ行くと、コンクール概要の掲示の前で、若い職人達が何か深刻そうな顔で話し合っていた。

 ふと耳を傾けてみると、


「おい、聞いたか。グランパドス商会の話」

 年の頃は20歳ちょっとすぎたあたりだろうか。短髪の如何にも職人気質という風貌の青年が話を切り出した。

「ああ、なんだか雲行きが怪しいな」

 隣にいた、友人らしき、もう少し年嵩の男が言った。


 リオンは眉を顰めたが、耳はそばだてる。


 今度は、年嵩の男の方が、

「なんでも相当巨額の損失を出したそうじゃないか。なのに、こんなコンクールをやろうとしてる。他の商会に行ってる奴らの話によると、そんな事してる場合じゃないだろうと、もっぱらの噂だそうだ」


 短髪の職人も、

「商業ギルドの偉いさん達も、その件で神経とがらせてるって話だ。おまけに後援のメルキス伯爵家の台所事情。不安に思ってる奴も多い。このコンクール、荒れるな」


「とはいえ、俺達みたいな職人が躍進したかったら、こういう機会は逃がせないんだがなあ。ここ最近停滞ムードで、コンクール自体も久々だ。悩ましいよな」

 もう一人、話を聞いていた男も会話に参加した。


(うわあ、そんな状況なの? ろくでもない結末が待っているかも。でも、腕試しはしたいし)


 リオンとしても、内心穏やかではない、悩ましい展開だ。


 とりあえず、ベネット氏を探し、御用聞き。

「そうだね。この間の木材は好評だったね。噂を聞いて例のコンクールにも使いたいという人がいて、木工ギルドにも問い合わせがきているそうだ。良かったら、木工ギルドに連絡をしてもいいが、在庫はどうだね」


「はい。十分にありますわ。他には?」


「そういえば、この間オリハルコンを仕入れたそうだね。欲しがっている人がいるんだが、もう残っていないかね」


 少し残ったが、自分用の小さなナイフに仕立ててしまった。自分の能力でも、魔法金属は精製出来ない。あれは、お気に入りの出来だ。手放したくない。


「残念ながら、すでに加工販売済みですので、ご要望にはお答えできませんわ。それでは、木工ギルドへ販売という事で。ギルドの方を呼んでいただいても宜しいですか?」


 ベネット氏が若い職員に言付けて、木工ギルドへ使いに出した。

「さて、お茶でも用意させよう」

「お気遣いどうも」


 氏がお茶の用意を、手の空いている女性職員に指示を出している。

 ベネット氏が、座ったという事は、何か話があるのだなとリオンは思った。この人はいつも忙しく立ち回っており、勤務時間中にこんなお茶をしている人ではない。


 程なくお茶が運ばれてきて、ありがたくいただく事に。お茶請けの焼き菓子に顔を綻ばせる。ここで出てくる御菓子は美味しいのだ。さすがは、大陸一の王国王都の商業ギルドだ。女性職員も笑顔で配膳してくれる。カップも、花をあしらった、なかなか素敵なものだ。ここへはかなり前から出入りしてるので、リオンの好みも色々よく知ってくれているのだ。


 お茶を一口啜ると、ベネット氏も話を切り出した。

「このコンクール、胡散臭い匂いがプンプンするね。商業ギルドとしては、最初からあまり乗り気じゃなかったんだが、しばらくコンクールもやられてなかったしね。こういう機会を待ち望んでる職人も多い。ギルドとしての立場上やらない訳にもいかなくて。最近、グランパドス商会の黒い噂も耐えなくて。本当に困りものだよ」


 リオンも考える風だったが、

「ベネットさんは、あの商会がどうするつもりだと思います?」


「今の段階で、なんともいえないな。色々事情を調べさせてはいるんだが。もう、かなり色々噂は広まってしまってはいるがね。まあ、商業ギルドとしては、慎重なスタンスで望みたいと思ってるんだ。君も気をつけるように。」


 うーん、商業ギルドの職員さんがこんな事言ってるようじゃ、このコンクールも先行き暗いな。

 私が、いつも良い商材を取り扱うので、あまりお金や手間暇つぎこんだりしないようにという、やんわりとした忠告のつもりだろう。

 ここは素直に感謝。


 木工ギルドの人が来たので、そのままお茶しながらの商談となった。元々先方から買いのオファーがあった商談だったので、話はすぐに纏まった。木工ギルドのおじさんと、にこにこしながら握手をして、商談を終えた。


 ほどなく金貨20枚分の利益を手にして、忠告とお茶のお礼を言って、ギルドを辞する事にした。

 作者の1作目です。よろしかったら、どうぞ。

「おっさんがオートキャンプしてたら、何故か異世界でキャンプする羽目になった」

 http://ncode.syosetu.com/n6339do/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ