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古城の少女の、永久の孤独  作者: せいえん&初心者P
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第4話 死霊都市開発日記 前編

この作品の愛称が決まったそうです。

「こじょとわ」

皆さん、この作品を呼ぶときは必ず「こじょとは」と言ってください。


3話に書くつもりだったけど、忘れてた…orz

「だいぶ形になってきたなぁ」


 皆に指示を伝えてからそれなりに時間が経っているから、当たり前と言ったら当たり前だけど。

 でも、街が出来ていくのは見ていて楽しい。

 初めて見るってこともあるけど、こうやって大勢で何かを作るってのも初めてだからなぁ。


 僕が城の一室、僕が住んでいる部屋から街の出来栄えを見てそんなことを考えていると、後ろからウエルターに話しかけられた。


「ソロ様、今日もご苦労様です」

「ウエルターこそ、お疲れ様。兵士達の様子はどう?」

「はい。皆、十分に働いてくれています。それに、この体にも慣れて来てますし、もっと作業効率が良くなるかと思われます」

「それは良かった。そっか、皆頑張ってるんだ……」


 時間としてはもう夜だというのに、不眠不休で動ける死霊は違うな。

 僕はもうクタクタだよ。


「それで、後どれくらいで完成する」

「ハッ、明日には」


 ウエルターは跪き、完成日時を言った。

 僕はウエルターと話すときは、従える者としての態度で接している。


 それにしても、明日には完成か。

 予想以上に早い。いや、早すぎだな。


「もう夜が更けます。お休みください」

「あぁ、分かった。その前に……」


 僕は机に座り、いつも通りの日課をこなす。


 日記――


 これは、僕がこの城に住み始めてからしていることだ。

 それは死霊都市開発と同時ことでもある。


「いつも、それを書いておりますね。何を書いてらっしゃるのですか?」

「これか? 別に、話す程のことではないよ」


 これは僕が死霊都市を作り始め、そしてそこに住むという……言わば、僕の人生を書き記していく日記。

 それに意味なんてないかもしれないけど、自己満足で結構だ。

 僕はもう、死んでるのか生きているのか分からない人生は嫌だから。


 僕は日記を見ながら、今までで一番充実した日々を思い返した。




 ☆☆☆☆~~~~~☆☆☆☆




 1日目


 今日から死霊都市開発が始まる。

 まず初めにしなければならないのは、圧倒的に不足している資源集めだ。

 近くには森があり、木材には困らないだろう。

 しかし、道具が足りない。


 皆に廃屋と化した家や店を探させたが、あるのは使い物にならない廃品ばかり。

 これでは木材など手に入るはずもない。


「ウエルター、原始的だが、石と枝で斧を作る。これで木を切り倒してしまおう」

「ソロ様、それは時間が掛かり過ぎでは……」

「仕方ないだろう。道具がない以上、あるもので代用しなければならない」

「そうかもしれませんが……」

「……ウエルター、お前は何をそんなに否定する。言いたいことがあるのなら、ハッキリ言え。言葉にしなければ、分からないことは多い」


 僕はウエルターの何かを隠して話すその態度に苛立ち、少し強く問いただした。

 すると、ウエルターは渋々と言った様子で話し始める。


「恐れながら、街を作るというのは時間が膨大に掛かるものです。その間、ソロ様のお食事も確保せねばなりません。しかし、道具も食料もない今は、街の開発を優先すべきではないのです。ですから、まずは食料の確保を――」

「……そうか。なるほど、分かった。死霊達の中に狩人や、それに類似した経験のある者を集め、森で狩りをさせろ。それらを城で蓄える」

「ハッ、かしこまりました」


 ウエルターは僕の指示を聞き、深々と頭を下げた後部屋を出ようとする。

 だが、僕があることを思い出し呼び止めたため、部屋の一歩外に出るだけとなった。


「ウエルター、狩りをする者達には必ず手袋を着けさせろよ」

「……分かりました!」


 ウエルターは最初、僕の言葉にキョトンとした様子だったが、その意図を理解したのか大きな声で返事をし部屋を後にした。


 ふぅ、危ないところだった。

 皆に素手で獲物を持たれたら、どんな病気にかかるか分からないからな。

 差別するわけではないが、やはりある程度の注意は必要だ。


 僕と彼らは、生者と死者。

 中身は同じだが、一度しんだ者達だ。

 僕とは違う。


 この日は狩りをするだけで終わってしまった。

 しかし、その成果は目を見張るものであり、これからの糧となる成果だった。

 しばらくは食料に困らないだろう。


 余談だが、この日は都市開発を中止したため、またルナの話し相手をさせられたよ。

 はぁ、疲れた。




 ☆☆☆☆~~~~~☆☆☆☆




 2日目


 今日こそ都市開発に入る。

 昨日で食料問題は解決したため、都市開発に専念できるようになった。

 そのため、今日は朝から作業に取り掛かる。


 しかし、肝心の道具不足は解決してないため、作業効率は悪い。


「ソロ、今日は何をするの?」


 この日は珍しくルナが僕の部屋を訪ねて来た。

 いつもなら夜中に訪ねて来るため、昼間からの訪問は非常に珍しい。


「今日は資材集めだよ。建物を直すのにも、必要なものは多いからね」

「そう。なら、私も手伝う」

「ルナが?」

「……」


 まさかこの段階から興味を持ち始めるとは……。

 だが、ルナはまだ子供。

 木材を切り倒すどころか、資材運搬すらままならないだろう。


 自分もだが、作業効率を考えれば必要のない人材だ。


 しかし、ここで追い返してしまっては僕の居場所がなくなる。


「仕方ないか」

「?」

「いや、何でもないよ。そうだね。僕も一緒に行くから、やってみよっか」

「分かった」


 僕はルナと共に伐採をしている地域へと行った。

 そこでは数多くの死霊達が働いている。

 この殆どに魂が入っていて、自我がある。

 にも拘らず僕のために働いてくれているのだが、どうしてかは良く分からない。


「あ、ソロ様、ルナ様、いかがなさいましたか?」


 僕達に気が付いた人が話しかけて来た。

 見た目はただのスケルトンだが、元は鍛冶師だった人だ。

 名前は……後で思い出そう。


「ルナが資材集めを経験したいらしくてな。悪いが、教えてやってくれないか」

「お任せください。俺で良ければ、いくらでも」


 鍛冶師はそう言うとルナを連れてどこかへと行ってしまった。


 さて、僕1人になったが……別に木材を伐採するために来たわけではない。

 だが、資材を集めに来たというのは正しいけど。


 僕は伐採中の森を歩き、ある場所へと来た。

 森の中ではあるが、ここだけは木々が伐採されており、広くスペースが取られている。


「ウエルター、居るか」

「ソロ様!? な、何故ここに」

「あれがソロ様か」

「こんなに間近で見たのは初めてだ」

「おぉ、本当に子供なんだな」

「ソロ様hshs」


 僕が来たのは森の辺境、この国唯一の鉱山だ。

 そこにはウエルターをはじめ、数多くの骨兵士が待機している。


 これは何故かと言うと、この鉱山には魔物が住み着き、マルスの兵士達が挑み破れた場所であるからだ。

 マルスという国が滅んだのは、このせいでもある。他にも理由はあるけどね。


「状況は」

「只今、先遣隊が鉱山内部へと侵入しております。もう直ぐ帰還する予定ですが……」


 ウエルターが鉱山の入り口を見ると、そこには剣を持ち鎧がボロボロになった骨兵士数名が出てくるところだった。

 僕はその兵士達の元へと行き、鉱山内部の話を聞く。


「以前我々が入った時よりも、魔物は数を増やしていました。奥深くへは行けませんでしたが、これを……」


 兵士が渡して来たのは石、それも鉄鉱石だ。

 つまり、この鉱山はまだ生きている。


 それだけでも分かれば十分。

 だが、まだ内部の状況が掴めない。


「ウエルター、指示は任せる。まだ攻め時ではない。慎重にな」

「ハッ! 内部の探索を続行! 魔物の攻撃を受けた者はテントへ移動しろ!」


 ウエルターの掛け声で場が動き出す。

 ここの視察はもういいか。


 僕は鉱山を後にし、城へと戻った。


 城へ戻ると、ルナが既に戻っていて伐採の大変さについて話てくれた。

 本で読んだことはあったが、実際に体験した人の話は貴重だったので真剣に聞く。


 相変わらず抑揚もなく、感情のない声ではあるが、どこか楽し気な感じがしたのは気のせいかもしれない。


 この日はこれで終了。

 必要な資材のうち、木材が集まり始めた。

 そのため、木造建築の家の修繕に取り掛かれる。


 また余談だが、この日はルナからのお呼びはかからなかった。

 どうやら、木の伐採で満足したらしい。

 ふぅ、今日はゆっくり眠れそうだ。




 ☆☆☆☆~~~~~☆☆☆☆




 3日目


 さて、準備は整ったよ。

 あれだ、木材がある程度揃ったってこと。


 不眠不休で働かせるというのは気が引けたが、本当に休養が必要がないらしいんだ。

 流石、体は死体。疲れを知らないらしい。


 ということで、僕は崩れかけの木造で出来た家の前にいる。

 もちろん、労働してくれている皆も一緒だ。


「木材は今、僕が出した死霊が運んで来てくれている。皆にはこの家を建て替えるため、一度全て壊してほしい」

「壊しちまうんですか?」


 僕の指示に対し、一番最初に反応を示したのは元商人の人だった。

 見た目はゾンビで一見怖いが、内面は落ち着いた老人って感じだ。


「あぁ、石造りならば問題ないんだが、木材は腐るからな。一度崩し、建て替えた方が安全面も安心できる」

「なるほど。すいやせん、意見なんて言っちまって」

「いや、問題ない。皆も何か意見があれば言ってくれ! 何が役に立つか分からないからな!」


 そうは言ったものの、そう簡単に意見が出るわけもなく……。

 やはり誰も意見を言うことなく、解体作業に入ることになった。


 予想はしていたが、まだ皆慣れてないのか?

 僕の言うことが全て正しいなんて思われちゃ困るんだけどなぁ。


「この区画の解体の指示は大工のファルンに頼む。彼の言うことをよく聞き、十分に励んでくれ!」


 僕はそう言って現場を後にする。

 僕が出来るのはここまでだ。後は本職の人に任せる。


 大工のファルン。

 スケルトンに入った人だが、その技術が凄まじい。

 まさに職人の域に達している。

 だが、頑固なのが欠点だったりするんだよね……。


 そんなことを考えながら僕は例の鉱山に来た。


「ウエルター、状況は?」

「内部の探索は60%が完了。ですが、それ以上奥への道を強力な魔物が塞いでいるらしく、進めないのです」

「そうか。ならば、その魔物とやらに会いに行こう」

「い、今ですか!?」

「何か問題でも?」

「あ、いや、急すぎです! まだ兵達の準備が――」

「待つ!」

「……分かりました。侵入部隊、直ちに準備を済ませろ! ソロ様直々に入られる。気を引き締めていけ!」


 ウエルターの掛け声で数多くの兵士達が急ぎ支度を開始した。

 さっきまで座って休憩していた兵士も、武器の手入れをしていた兵士も、全員だ。


 予め言っておけば良かったかな。

 急いでいるということではないよね。

 けど、探索が止まっているなら丁度いいと思う。


「一番隊、準備完了!」

「二番隊も、準備完了しました!」

「三番隊、もう少しで準備完了します……完了しました!」

「全隊、準備完了しました」

「よし……ソロ様、いつでも行けます」


 侵入部隊は全部で三つ。

 一番隊、大きな盾と片手剣を持った兵士で構成された前衛部隊。

 二番隊、槍を持ち、一番隊の後ろから魔物を突き殺す中衛部隊。

 三番隊、食料や医療具を運ぶ輜重兵で構成され、武装は最低限の後衛部隊。


 一番隊20名、二番隊10名、三番隊10名。

 残った5名の兵士には留守を頼む。


「行こう! 鉱山を取り戻しに」


 この日初めて僕は、戦場に立った。

後編は時間が飛びまくります。


ちなみに、愛称を考えたのはモチロン、せいえんです。

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