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古城の少女の、永久の孤独  作者: せいえん&初心者P
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第3話 死霊都市 計画編

都市開発の話はちょっと長引きます。

感想、待ってます。by初心者P

『都市開発』


 これは、今さっき僕が思いついたものだ。

 元々、ルナの知識欲を満たすためだけの計画のつもりだった。


 しかし、これが完成すれば、自動的に僕の居場所ともなる。

 そうなれば、僕が全力を出さない訳にはいかない。


「知りたいなら作ろうよ。実際に見たほうが、きっとルナも楽しいって!」

「作る。それは、どれ程の時間が掛かる?」

「分からない。けど、作るってことも初めてじゃない?」

「初めて」

「それも世界を知ることに繋がる。完成すれば、もっと知ることができる。一石二鳥だね」


 僕からすれば、最初から説明しなくて済むから一石三鳥くらいの気分ではある。

 それに、僕の居場所を強固なものにするためにも、この都市開発はやり遂げたいと思う。


 さて、都市開発もそうだが、解決しなければならない問題があった。


「で、あなたは誰?」

「ハッ! や、やっと私の話を聞いてくださる気になりましたか」

「えぇ、まぁ……」


 正直関わりたくはないタイプだが、話せるなら話しておかなければならない。

 死霊と魂の合体。これがどういう結果を生むのか。

 それを知れれば、この死霊都市開発に大きな貢献になるはずだ。


「私はマルス国近衛騎士長、ウエルターと言います」

「マルス国? 聞いたことのない国だ……」


 僕は村に住んでいたころ、外に出るといじめられたから本を読むことが多かった。

 だから、博識な方だと思っていたが、僕でも知らない国があったなんて。


 僕が必死にマルスと言う国名を思い出そうとしていると、後ろから肩を叩かれた。

 振り返るとルナが僕の目を見つめて何かを言いたそうにしている。


「な、何?」

「マルスは、ここ」

「……え?」

「マルス国、100年以上も前に滅んだ国。ここが、そう」


 ルナは自分の足元を指差しそう言った。

 どうやら今僕が立っている場所。ここが、かつてのマルス国ということらしい。


「100年……本で読んだことないはずだ」


 それだけ前となると、研究者くらいにならないと読めない本にしか書かれていないだろう。

 僕が読めたのは、今ある国の名前くらいだった。


 それにしても滅んだ国……そこの近衛騎士長か。

 降霊術は、使う場所によってはその場で死んだ者の魂を呼ぶことが出来るのかもしれない。

 まだ分からないが、僕の死霊術にも同じ効果があるかもしれないし、要研究だな。


「それで、その近衛騎士長殿がどうして僕に感謝を?」

「先ほども言いましたが、私をあそこから救ってくださったからです」

「あそこ……?」

「はい。あの、何もない無の世界。私はあの世界でただ浮かんでいることしかできなかった。しかし、ソロ殿とルナ殿のおかげで救われました。また、こうして人と話せる。また、自分で歩ける……これ程嬉しいことはありません。改めて、感謝を」


 そう言ってウエルターは片膝を折り、僕に頭を下げた。

 魂の入っていなかったスケルトンの時と同じ格好だ。


 だが、おかしい。

 スケルトンの場合、あれはただの器。人形だった。

 だから、僕に対して頭を下げるのもうなずける。僕が召喚したしな。


 だけど、僕と何の関わりもんかった近衛騎士長が僕に頭を下げるなんてあり得ない話だ。

 しかも、これは忠誠を誓ったという意があるものだ。

 感謝にしては、普通ではない。


「ウエルターさん、それはやり過ぎではないですか?」

「いえ、やり過ぎなんてことはありません。私はソロ殿とルナ殿に忠誠を誓っているのですから」

「な、何故!?」

「今や私は使える王を失った身。そこに救いの手を差し伸べてくれたお方がいるとなれば、忠誠を尽くすのは当たり前のこと」


 どの辺りが当たり前なのか分からないが、どうやらもう決めてしまっているらしい。

 けど、そんな忠誠を僕に向けられても困る。

 僕は王でも、ましてや誰かを従えるような人間ではないのだからな。


「そんな忠誠は受け取れないよ。僕には重すぎる」

「それでも構いません。私の一方的な忠誠だとしても、それでも良いのです。ただ、私の気持ちを伝えたかっただけですので、お気になさらず。それと、私に対しては敬語も敬称もいりません」

「そ、そっか……。なら、よろしく。ウエルター」

「はっ、よろしくお願い致します。ソロ様」


 殿から様になってしまった。

 慣れないどころか、やめてほしい。


 だけど、ウエルターにそれを言ったところでやめてはくれないだろう。

 この問題は後々解決するとして、今は都市開発の計画を練らなければ。


「ルナ、作るのには賛成だよね」

「賛成。私も作るということに興味が出た」


 よしよし、これで第一段階は突破したな。

 正直、ルナの協力が必要不可欠だったから一安心だ。


 ルナの協力を得られたということで、計画内容を説明する。

 大まかだが、一応僕の頭の中には計画が練られているのだ。


「まず僕達だけじゃ、都市なんか作るのは無理なんだ。だから、労働力が必要なんだけど……分かる?」

「分かる」

「良かった。なら、降霊術を使ってたくさん魂を呼んでくれない?」

「分かった」


 ルナは僕のお願い通り降霊術を使い、数えきれない程の魂を呼び出した。

 その魂たちは相変わらずルナの周りをグルグルと飛び回っている。


 さて、次はこの魂の器を僕が召喚するだけだが……。


「スケルトン……ゾンビもありだな。さぁ、出てきなよ」


 僕が床に話しかけると、床から大量の手が出現。

 その手が地面を掴み、体を引きずって這い出てくる。


 こんな光景、普通だったら怖すぎて堪ったもんではないだろう。

 でも、僕からしたらいつも通り。

 僕も死霊使いとして、適応してきてるのかな‥…。


「いやいや、そんな風に考えるのはやめよう」

「ソロ、どうしたの?」

「何でもないよ。さて、どうかな……」


 僕のことを心配(?)してくれたのか、ルナは僕の肩に手を置き話かけて来た。

 だが、声には相変わらず感情がこもっておらず、表情もない。

 そんな慰め、嬉しくないよ。


 それはさておき、魂たちが一斉に死霊うつわへと入って行く。

 そして、ウエルターの時と同様の現象が起こり、しゃべり始めた。


 最初は驚きの声ばかりだったが、次第に僕達への感謝の言葉へとなる。

 これは……あまりよろしくないな。

 僕みたいなのに感謝なんて、寒気がしてきた。


「や、やめてください。ぼ、僕になんか……」

「そんなことはない。俺たちを救ったのはあなただ。あなたが居なかったら、俺たちは何もできんかった」

「そ、それを言うならルナだって……」

「そうね。ルナ様にも感謝をしているわ。でも、ソロ様。あなたにも感謝をさせてください」


 声からしておじさんとおばさんだ。

 姿はおじさんがゾンビ、おばさんはただのスケルトンなのだが……うーん、気持ちが悪い。

 慣れるまでにはもう少しかかりそうだ。


 その他にも、多くの魂が器に入ったため、様々な人たちと話をした。

 大工や商人、きっと街に住んでいた人たちだろう。


 その中でも一番数が多かったのは、兵士だ。

 話によれば、戦争ではなく魔物に殺されたらしい。

 詳しくは分からないが、この辺りには危険な魔物がいるのかもしれないな。


 ちなみに、召喚した死霊の内訳はこんな感じだ。


 ノーマルスケルトン:30体

 ノーマルゾンビ:20体

 スケルトンソルジャー:50体

 スケルトンナイト:3体

 合計:103体


 その内、魂が入ったのは…


 ノーマル骨:20体

 ノーマル腐肉:20体

 骨兵士:45対

 骨騎士:1体

 合計:86体


 骨兵士に入ったのは、殆ど兵士。ただの骨には街に住む人々だ。

 どうやら、魂と肉体はある程度惹かれ合うものがあるらしい。


 のだが……。


「ふぇ? ふぇぇ?? わ、私どうなったの?」


 例外も存在はする。

 骨騎士に入ったのは女の子だった。


 女の子は体の違和感が激しく、歩くことさえままならない状態だ。

 今後、このような事例が多発するようならば……何か対策を考えなければならない。


 それにしても、予想以上にたくさん出た。

 本来はこの半分以下が出てくれれば無問題だったのに。


 こんなにも召喚してしまったがために、何だか目まいがする。

 これが、死霊召喚のデメリットか……。


 が、今はそんなことどうでもいい。

 重要なことではない。


「ルナ、これから都市開発の内容を話すよ」

「分かった」

「簡単に言えば、工程は三つ。資材集め、街の修繕、城の改修。分かるよね」

「分かる」

「よし。それでね、僕は資材集めと街の修繕を担当するから、ルナは城の改修をお願いしたいんだけど、いいかな」

「何故、私?」

「今の城のことを一番知っているのはルナだろ? だから、頼むよ」


 食料庫に真っ直ぐ案内してくれたことと、城からまったく出ないというルナの生活からして、適任なのは間違いなくルナだ。

 そこに、ウエルターと兵士数人を付ける。

 これで、城の改修は問題ないだろう。


 だが、他の人たちが協力してくれるかどうか……。


「み、皆! き、聞いてほしい」


 僕の声に、さっきからざわついていた人たちが一気に黙る。

 そのおかげで、聞こえる音は僕の心臓の音だけだ。


 緊張する。

 僕はいじめられてた頃から気弱で、あまりこういうのは得意じゃない。

 ルナとの会話はそうでもないけど、やっぱりこの人数は胃が痛くなる。


 でも、僕の居場所のためだ。頑張ろう。


「僕達は今、都市の再建を計画しています。でも、資材はなく、技術を持った人もいません。そこで、皆さんに手伝ってほしいのです。恩を返せなんて言いませんが、でも、少しでも恩を感じてくれている人は……きょ、協力してください!」


 僕は勢いよく頭を下げ、反応を待つ。


 静寂————


 誰も、何も言わない。

 心臓の鼓動が早くなるのが分かる。


 こんな状態で、何を考えればいいのだろう。

 僕は怖い、拒絶されるのが怖い。


 この時、この瞬間、僕は昔のことをフラッシュバックした気がする。

 だが、それは本当に一瞬で、気が付いた時にはもう、覚えてはいなかった。


「そんなこと、お願いされるまでもありませんよ」

「そうさ、俺たちの恩人に、恩を返すいい機会だ!」

「我らで良ければ、いくらでもお力をお貸しましょう」


 先に口を開いたのはさっきのおじさんとおばさん、そしてウエルターだった。

 それに口火に、次々と声が上がる。

 その勢いは留まるところを知らず、凄まじい歓声となっていった。


 そしてその全てが、「ソロ様、ルナ様のため……」だ。


 どうしてここまでしてくれるのか、僕には分からない。

 というか、どうして僕が肉体を与え、ルナが魂を呼んだなんて分かるのだろうか。


「それで、我らは何をすれば……」


 ウエルターが僕の足元で跪き、僕を見上げながらそう聞いた。

 他の皆もそれに呼応し跪く。

 見ているのは、僕だ。


 場所が場所なため、ギュウギュウ詰めで苦しそうだが、そんなことは気にしていない。

 ただ、僕の命令を待っている。


 これが、死霊使い――ネクロマンサー、か。


 僕はルナを見る。

 ルナはいつもと変わらず、無表情だ。

 しかし、僕を見る目がちょっと違う。


 期待の眼差し、とでも言うのか。

 今までに見たこともない目だ。


 自然と笑みが零れてしまう。

 小さく、気付かれない程度の笑み。


「これから、指示を出す。皆、良く聞いてくれ」


 僕は生きてきて、ここまでの充実感を感じたことはなかった。

 皆が僕を見てくれる。認めてくれる。

 僕のために、働いてくれる。


 絶対完成させて見せる。

 僕の新しい居場所、死霊都市を!

次は建設編ですが、ダイジェストのような形で書かせていただきますm(__)m

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