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古城の少女の、永久の孤独  作者: せいえん&初心者P
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第1話 忌み嫌われる子供

「初めての合作で緊張していますが、楽しく書けたらいいです!」by初心者P


「骨フェチです。特に、鎖骨が好きです」byせいえん


『世界とは残酷である。


 自分は周りに優しくしても、周りは自分に冷たくする。

 他人を助けても、他人は助けてくれない。

 何をしようにも、自分以外の人間は自分に牙を立てる可能性が十分にある。

 例えそれが、家族であってもだ。


 もう一度言おう、世界とは残酷なのである……』



 この言葉は、僕が本を読んでいて知った言葉だ。

 本のタイトルは忘れたけど、なんか難しい本だったのは覚えている。

 内容は意味不明で、理解するどころか文字を読むことすら大変だった。

 けど、この言葉だけが頭に残って離れてくれない。


 何故なら、今まさにそれを実感しているところだからだ。


「おい、お前また来たのかよ」

「どっか行けよ。気持ちわりぃなぁ」

「やだ。こっち見ないで」

「死ね!」

「しーね、しーね、しーね」


 小さな村の、大きな広場。噴水のある憩いの場だ。

 そこで僕と同じくらいの年齢の子供が、蹲っている僕を見下し半笑いでそう言ってくる。

 それを大人は見て見ぬふり、するどころか子供と一緒に僕を虐める。


 今日はまだいい方だ。悪口だけで済んでいるのだから。

 酷い日は、蹴る殴るは当たり前。いつかの日は、物凄い筋肉質の大男に思いっきり殴られた。

 あの時は死んだかと思ったよ。


 いや、死んだけどね。


「これこれ、あまりそ奴に近寄るでない」

「あ、村長!」

「村長だぁ」

「村長!」


 突然老人の声が聞こえたと思ったら、さっきまで僕のことを虐めてた子供や大人が皆離れていった。

 僕は顔を少し上げ、目だけでその人物を見る。


「お主、また虐められてとるのか」


 しわくちゃの顔に掠れた声、ヨボヨボの服にボロい杖をついたおじいさんが1人、そこには立っていた。

 一見どこにでもいるただの爺さんだが、僕はこの人が誰だか知っている。

 いや、この村でこの人がどういう存在かというのを……だね。


「……」

「いや、何も言わんでいい。お主も大変だろう」

「……」


 このおじいさん――村長は、この村にとって必要不可欠の存在なのだ。

 ヨボヨボで使えそうにもないおじいさんだが、頭が良く性格も良い。高齢者だが、今でも現役で働いている。


 でも、そんな超人でも許容できない範囲があるようで――


「でもな、村の皆も困っとるんじゃよ。お主のその……術でな」


 村長は気まずそうな顔でそう言った。

 その顔だけで他の人たちとは違うと分かる。きっと僕のことを考えてくれているのだろう。正直、嬉しい。

 けど、言葉の意味を察すると、村長の言いたいことが分かって悲しくなる。


「この村から……出て行ってはくれぬか」


 村長のやっぱりな言葉に、僕は反応することができなかった。

 確かに予想はしていたが、どうしてもハッキリ言われると涙が出そうになってしまう。

 僕の場合、気が弱くダメダメだから余計にだ。


「分かり……ました」


 僕はやむなく村を出ることとなった。

 周りの村人たちは大喜び、村長もどことなくホッとしている顔だ。


 僕はある時からソロと、村の皆からは呼ばれていた。

 いつも1人になっていたらかこんな名前がついたのだと、僕なりに考察してみたり。

 まぁ、事実はどうだか知らないけどね。


 その、ある時とは……死霊術というものが使えるようになってからだ。


 死霊術とは読んで字の如く、死んだ者を死霊として蘇らせ、従えることの出来る術だ。

 それはつまり、死体を動かすということなので、世間的には最悪の術だ。

 だって、これは完全に死んでしまった人々への冒涜であり、侮辱でもある。

 馬鹿にしてるとしか思えない。


 この世界には魔法やら何やらが存在する。

 詳しいことは知らないけど、その中でも禁忌とされる魔法・魔術があるのだが、その中に死霊術は含まれている。


『死人を蘇らせる。または、それに類似した行為は禁忌であり、実行せし者は即刻死罪に処される』


 この国の法律でも決まっていることで、やったら死罪。つまりは殺されてしまう。そんな最悪な術を僕が使えてしまう訳で…‥。


 だが、勘違いしないでほしい。

 僕はこの術が使いたくて使えるようになったのではない。


 どうしてこうなったのだろう。

 思い起こしたくないけど、ちょっと過去を遡ってみる。




 ☆☆☆☆~~~~~☆☆☆☆




「おい、どけよ!」

 バキッ


 男の蹴りが自分の脇腹に吸い込まれて行き、そのまま直撃すると同時に骨が折れる鈍い音が頭に響いた。

 僕は横倒れ、その痛みにただ耐えるだけ。それしかできない。

 抵抗することすら、僕には力がなかった。


「ぐ……うぅ」

「ったく、邪魔だっての!」


 再び男の蹴りが僕の腹へと直撃する。

 その衝撃で、僕はゴロゴロと転がり男の前から数メートル離れた場所で止まった。

 男はそんな俺を見て、「チッ」と舌打ちをしてどこかへと歩いて行く。

 それを僕は倒れたまま痛みに耐えつつ見送った。


 僕は元々、村の人たちに好かれてはいない。

『死霊術』なんてものが使えなくても、嫌われていたのだ。

 どうしてそうなったかは、あまり覚えていない。

 ただ、僕は嫌われ者だった……。


「はぁ……痛い」


 ズキズキと痛む腹を右手で押さえ、ふらつく足取りで家に帰ろうとした。

 しかし、その途中で子供たちと出会ってしまい、また虐められた。


「なんでお前がこんなとこにいんだよ!」

「どっかいけよ!」

「お前の居場所はねーんだよ!」

「どっか行け!」


 殴る、蹴るの暴行を受けても、僕はただ蹲ってそれに耐えるだけ。

 ただ、それだけしかできない……。

 そんな自分が、嫌だった。

 だから願った。

 自分にもっと、力があったら、と。


 もっと、強くて、誰にも負けず、不死不滅、何度も蘇り、必ず相手を倒す。


 そんな力が、ほしかった。


「もう……もう、やめろーーー!!」


 僕が自分の弱さに向けて叫ぶと、異変は起こった。


「ひっ」

「な、なんだこれ!?」


 子供たちの動揺した声が聞こえる。

 それと、今までに嗅いだこともないほどの死臭が鼻をついた。

 僕は薄っすらと目を開け、周りを見渡してみた。

 そこで、僕は驚くべき光景を目にした。


 地面から、手が生えていたのだ。

 それも腐敗し、骨しか残っていない人の手だ。


 地面から手が生えている。

 そんな光景、生まれて初めて見た僕は驚きのあまり後ろに倒れてしまった。


「……」


 怖いし不気味で、見ていることすらままならない。

 けど、あの時の僕はその手から目が離せなかった。

 何故か、それが自分に害はないと直感的に理解していたから。


「お、おい。お前、何かしたのか!」

「そうだ。これを仕込んだの、お前だろ」

「俺たちへの仕返しか!?」


 子供たちが勘違いし、僕が悪者にされている。

 でもここで言い訳すると、子供たちはもっと過激になってしまう。

 だから、黙る。これが、僕が今まで生き残ってこれた技の1つだ。


 だが、やはり辛い。

 何で僕ばっかりとは思う。


「何で……僕なんだよぉ」


 自分がやったことではないのに罪を擦り付けられるということに耐えられず、涙が溢れ出てしまう。

 それと同時に小さな嗚咽が始まり、僕は静かに泣いた。


 僕がいじめに耐えられずに泣いていると、地面から生えて来た手に変化が起きた。

 手は地面から這い出るように地を掴み、グッと力を入れる仕草をする。

 そして次の瞬間、ズボッという音と共に骨だけの人間が地面から出て来た。


「カラカラカラ」

「うわぁ!」

「ば、化け物だぁ!」

「わあぁぁぁ!」


 子供の1人は逃げ、1人は尻餅をつき、1人はその場で固まっている。

 同じく、僕もその場から動けないでいるのだが……。


 骨の人間――——スケルトンと呼ぶべきかな。

 スケルトンはそんな叫び散らす子供に見向きもせず、僕の方を向いた。


(こ、殺されちゃう)


 頭はではそう思ったが、体が動かない。

 恐怖で腰が抜けてしまい、立ち上がることすらできなかった。


 スケルトンがカラカラと音を立ててこちらに近付いて来る。

 鳴っているのは骨の音だけであり、スケルトンの声ではない。

 どうやら、骨だけのため、声を出す発声器官のようなものは既に朽ちてなくなってしまっているようだ。


 そんな怪物を前に、僕は怖すぎて目を瞑った。


 しばらくしても、何の変化もない。

 骨の音も、子供たちの悲鳴も聞こえない。

 聞こえるのは風の音だけだ。


 僕はビクビクしながらもゆっくりと目を開けた。

 するとそこには、僕に向かって膝をつき頭を垂れているスケルトンがいた。


「……へ?」


 状況が呑み込めない。

 どうしてスケルトンが現れたのか、どうして僕を攻撃しないのか、どうして僕に頭を下げるのか……。

 分からないことだらけだが、取り敢えず身の安全は保障できそうだ。


 しかし、動けない以上この骨とずっと一緒に居なければならないことになる。

 それは絶対に嫌だ。いじめられているのと同じくらい嫌だ。


 僕はどうにかして立ち上がろうと必死になって体を動かした。

 しかし、やはり力が入らず立ち上がれない。


「カラカラ」


 僕が必死にもがいていると、急に体が宙に浮いた。

 いや、浮いたと言うか、持ち上げられただ。


「なんで……って、うわぁ!」


 後ろを向くと、視界にデカデカとガイコツが映し出された。

 どうやら、地面に這いつくばっていた僕をスケルトンが持ち上げたらしい。


「も、もしかして……僕のために?」


 考えられる理由はこれしかない。

 スケルトンは、僕が立ち上がりたいという思いに応えて動いたのだ。


 それからは簡単だった。

 あれしたい、これしたいとスケルトンに命令をし、家へスケルトンに僕を運ばせ帰る。

 その日はスケルトンに助けてもらい、無事に一日を終えた。


 だが次の日、スケルトンの姿はなかった。

 家中探し、外まで探しに行ったがいない。


「訳がわからないよ」


 それからしばらく、スケルトンは僕に姿を見せることはなかった。


 加えて、あの時スケルトンを見た子供たちが、村中にそのことを広めたのだ。

 そのせいで僕は、以前よりも酷いいじめにあった。


 そして、僕は村を追い出されたのだ……。


 悪いこと連続するとは、本当だったらしい。




☆☆☆☆~~~~~☆☆☆☆




 僕は今、過去を振り返りながら走っている。

 村から遠く離れた場所。

 人が立ち入ることはまずないとされている森。


 行く当てなどない。

 あったら、あの村になんか居座らなかったさ。


 でも、僕は走って気を紛らわせなければ、生きることをやめてしまいそうだったから。

 今の僕には、走ること以外に何をすればいいか、分からなかったから。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 走って走って、気付けば雨が降っていた。

 今の僕にとっては、その雨は心地いい。

 火照った体を、冷たい雨が冷やしてくれる。


 だけど、今振っている雨は、空からだけではないようだ。

 雨は、降り続ける。


 無我夢中で走り続けた僕だったが、いつの間にか森を抜けていたようだった。

 見知らぬ土地に立っている。

 ここがどこかも分からない。


 僕の目の前には、昔に滅びたであろう城下町があり、その先には古びた城が見える。

 どうやらここは、過去に人が住んでいた場所らしい。

 だが、もう人が住める状態ではない。

 所々崩れた個所のある家、それに加え木材が腐り完全に潰れている建物もある。

 これじゃあ、どの家も怖くて眠れない。


 ここは……あの城まで行ってみるしかないようだ。


 遠目から見ても、完全に古城。

 だがしかし、それでも城と庶民の家とでは作りが違う。

 そのため、きっとどこかで雨風凌げる場所があるはずだ。


「だけど、これは……」


 しかし、実際は中々にボロボロで、直せば使えるくらいには壊れていた。

 でも、僕にはここ以外に雨を凌げる場所はない。


 僕は城の入り口で雨宿りをさせてもらうことにした。

 城の中へと続く階段の一番下の段に座って蹲り、涙をこらえて雨が止むのを待つ。


 心細いし、何よりも寂しい。

 そんな僕に向けてなのか、女の子の声が聞こえる。


「あなたは、誰?」


 それは感情の籠っていない声だった。

 顔を上げ振り返ると、確かに少女が少し上の段に立っている。

 僕と同じくらいか、少し上くらいだろう。


 これが彼女と僕の出会いだった。

 この出会いが、僕の人生を変えたんだ。

 いい意味でも、悪い意味でも……。

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