小学生ユーリ~4年生~
ユーリの通う小学校では、4年生からクラブ活動が始まります。
音楽も運動も好きだったユーリは、ダンスクラブに入りました。
お姉ちゃんも3年間ダンスクラブだったこともあり、お姉ちゃんの後輩がユーリの先輩になります。おかげで、クラブ活動開始前から知り合いがたくさんいました。
「ユーリちゃん?ほんとお姉ちゃんにそっくり!」
「お姉ちゃんもダンス上手かったし、ユーリちゃんも上手なのかなー」
「よ、よろしくお願いしますっ」
お姉ちゃんの繋がりで、すぐに仲の良い先輩がたくさんできました。一緒に入った同級生とも、上手くなじめてきました。
ユーリは音楽に合わせて身体を動かすことがとても楽しく、音楽の中にいると会話がスムーズに進む気がしました。なのでユーリはクラブ活動が大好きで、週に二日の活動日を楽しみにしていました。
一方、教室ではユーリの話しかたの真似が男の子の間で広まっていて、とても居づらく感じていました。
「さ、さ、さ、さ、咲野!」
「おおおおおおおはよ!」
「・・・・・・」
(なんで真似をするの?ユーリ、咲野って普通に言えないの。それだけなの。ふざけてるんじゃないのに・・・)
このころは、ユーリもなんとなく、自分の話し方が周りの子と違うことに気付いていました。
「おい挨拶を返すのは人として当然だろー。おおおおおおおはよってさー」
男の子の間でどっと笑いが起こります。
(やめて。やめてよ。おうちでは言えるのに、学校でおはようって言いたくてもそうなっちゃうの。なんで?なんでユーリはおはようって言えないの?)
なんとかしたかったけど、ユーリにはどうしていいかもわかりません。
耳をふさぎたい。
他にユーリはどうしたらいいの?
(わかんない・・・わかんないよぉ・・・・・・)
「ユーリちゃん、おはよ!」
「男子なんかほっといて、行こう行こう。あっかんべー、だ!」
幼稚園から一緒の、とわちゃんとあいちゃんがユーリの腕を引っ張って机まで一緒にきてくれました。
(とわちゃん、あいちゃん・・・)
「ねぇユーリちゃん、昨日のテレビ見た?あいの好きな俳優さん出てたんだよーかっこよかったー!」
「うん、見たよ。か、かかかかかか・・・かかっき、しまさん、だよね。イケメンだよね!」
「今日の給食カレーだよ!またお漬物ついてくるのかなー、やだなぁ。ユーリちゃん、またこっそり食べてね!」
「あ・・・・・あ・・・・あ、とわちゃん、かかかかカレー、ああ、明日だよ。今日はユーリのきっき嫌いな納豆があるもん」
「あいも納豆きらーい。とわちゃんやったね、3人分食べられるよ!」
「え、あたしもそんなに好きじゃない!」
ユーリは、自分がどんな話し方をしていても変わらず接してくれる2人が大好きでした。
予鈴が鳴り、あいちゃんととわちゃんは席に戻る時。
「じゃあね、ユーリちゃん」
「・・・・あ、あああ、あ・・・あ・・・」
「ん?」
詰まったり続いたりしてしまっても、2人は笑顔で待ってくれます。
「・・・あああああ・・・ああ、り、がとう・・・」
2人とも満面の笑顔で、ニコッと笑うと、席に戻って行きました。
ちゃんと言えて、ユーリも赤い顔ですがとっても嬉しそう。
うまく言葉を紡げなくても、伝えたいことは変わらないよね。