小学生ユーリ~2年生~
遠足で、ユーリは科学館に行くことになりました。
数人のグループになって、職員の人や近所のボランティアさんにいろいろ教えてもらうのです。
はじめに、職員の人にみんなで自己紹介をしました。
(さきのユーリですって、ちゃんと言うんだ!)
端っこにいたお友達、澪ちゃんから始まりました。
「茶々塚澪です」
「氏岡颯太です」
「山内なのこです」
さあ、ユーリの番です。
緊張しているのでしょうか、顔がこわばってしまっています。
「さ、さ、さ・・・・・・ささっささきの、ユーリです」
“さ”が続いちゃったけど、ちゃんと言えました。頑張ったね。
お隣のなのこちゃんが、不思議そうな目でユーリの顔を覗き込みました。
「ユーリちゃん、お名前言う時、なんでいつもささっさきのっていうの?」
「・・・なんでかなぁ?ユーリもわかんない」
(ユーリ、何か間違えたのかな?)
「変なの―ぉ」
ちくり。
何かが、ユーリの心に小さく刺さりました。
(どこかが痛い・・・でも、どこが痛いんだろう?やっぱりユーリ、変なのかな?)
「なのこちゃん、芽衣の自己紹介の順番なんだよ、静かにしててよおう」
「ごめんなさぁい」
「いいよ。私は、柳芽衣です、今日は、よろしくお願いします」
「はい。みんな自己紹介ありがとう。私は、今日1日みんなと一緒に回ります、田口っていいます。よろしくね。じゃあ、まずは4階からいこうね」
そこからは、楽しく見学して廻りました。
ユーリも、お友達ときゃっきゃと仲良く遊んでいきます。
さっき感じたちくちくのことは、すっかり忘れているみたい。
シャボン玉に入ったり、磁石を使ったおもちゃで遊んだり。ばねや滑車を使ったアスレチックでも遊びました。
みんなで、いろいろな音が出るボタンが並んだコーナーで遊んでいた時、職員さんがユーリに話しかけました。
お友達は好き勝手にボタンを押しているので、いろんな音が鳴り響いています。
カンカンカン、ぴーぴっぴぴー、ぶおおぶおお。
ちょっと大きな声で言わないと、聞こえないかな?
「ねえ。ユーリちゃん、だったっけ。苗字、なんていうの?なに、ユーリちゃん?」
(大きな声で言わなくちゃ。いろんな音が鳴っててうるさいや。)
「咲野!さきの、ユーリ、って、いいます!」
「あー、咲野さん!確かお姉さんがこの前、お仕事インタビューに来てたのよ。よく似てるわねー」
「うん!」
あれあれ?
ユーリ、苗字、すっと言えたね。
(ふうん、お姉ちゃんもここに来てたんだぁ。ずるいなぁ、ユーリも連れてきてくれたらよかったのに。あ、あのレバー引いたら何が起こるんだろう?)
上手く言えたことに、ユーリも気付いていないぐらい。