高校生ユーリ~2年生~⑤
ユーリ達の修学旅行は、冬に海外の予定でしたが
料金や治安の関係から、同時期に国内でのスキー、農業体験に変わりました。
クリスマスまでに告白するぞと意気込んでいた面々は、修学旅行こそ近づけるチャンス!と勢いづきましたが・・・
「なんで?なんで前半後半とか急に分けるわけ?」
「レジャー施設の行き先希望とられた時点で怪しむべきだったのかねー」
「綾乃だけじゃん、一緒になれたの」
「先に行って、頑張ってくるね!行き先被ったから、上手くいけば告っちゃうね!」
「あ、ああああああ綾乃、かっ・・・っ・・・っかっかっかかかかかえってきたら、教えて、ね」
そう、綾乃以外は全員、前団後団で別れてしまい、顔すら合わせることなく修学旅行が終わったのでした。
「綾乃、新瀬君どうだった!?」
「聞かせて聞かせて!」
帰って来た綾乃を、みんなは囲んで質問攻めにします。
「・・・・・・・・・・・・」
綾乃は、胸の前で、小さく、丸を作りました。
「やったねー綾乃!おめでとー!!」
「頑張ったねー!あたしも勇気出てきた!がんばろっと、ねーユーリ」
「う・・・・・・う、うん・・・」
残されたクリスマスまでの数日、メンバーは少しずつ告白に臨みました。
春海は、友達でいたいと断られてしまいました。
とっこも、他に好きな子がいると断られました。
マイは・・・本命だった男子には断られましたが、泣いていたところに部活後の渡井君が現れ、そこで上手くいくことになったようです。
残りは、ユーリと蘭です。
「さぁ今日はユーリだ。行けユーリ!お前の純情と素直さなら行ける!村田を落としてこい!!」
ユーリは、勇気を振り絞って、保健委員の仕事の後に少し時間を貰えるようメールをしていました。
おういいぞ、という、軽い返事ももらっています。
おかげで、保健委員の間、ユーリは心臓がバクバクしっぱなしでした。
やがて外も暗くなり、委員会の仕事も終わりました。
「あー今日も終わったなー。んで?咲野、何か用あるんでしょ?」
カバンを取りに戻ると、村田君はきちんと、委員会後に教室で待っていてくれました。
「え、あ・・・・・・こ、ここここの、の・・・・・・ののノート、あ・・・・・・りが、と」
「ああ、生物?良いのにいつでもー。わざわざさんきゅ」
(お、落ち着け私、ノート返して、ここからなんだから・・・)
「あ・・・・・・ああ、あああのね、っむ・・・村田君」
「ん?」
村田君は、椅子に腰かけてユーリの話を待ってくれています。
「・・・む、む・・・らた君、い、いいいいいいつ、いつも、わわわわわ・・・わたわたわた私がはっははは話すの、ま・・・・・・っまっままま・・・・・・待ってくれる、よね」
「いやー?待ってねえよ。俺は咲野と話してるだけだもん」
「・・・わわわわわわ・・・わっわわ私のししししゃしゃ喋りっかっか方・・・へ、変・・・か、な」
えへへ、とユーリは村田君から視線をそらし、暗い窓の外を見ました。
「特徴的だなーとは思ってたけど、変って思ったことはねえなぁ。いいんじゃね?特徴的だと覚えてもらえやすいしさ。俺の妹だって耳聞こえないし、どんな人がいたって世の中不思議じゃねえと思うな。自分で変だって思うことないって」
(やっぱり・・・村田君、優しいや)
ユーリの心は、決まりました。
「あっあ・・・・・・ああああああありがと・・・・・・っそそそそ、そそ、そういう、っとととととところが、わわわわ私ね」
「うん?」
「す、すーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・っ・・・・だ、大好き、です」
顔を真っ赤にして、息も吐き切って、もはや息苦しくて下を向いていましたが、それでもユーリは言い切りました。
「・・・え。あはは、うん。ありが・・・とう」
村田君はかなりびっくりした様子で椅子から立ち上がり、頬を掻きながら答えてくれました。
「え、どうしよ。めちゃくちゃ嬉しいよ。俺咲野に実は嫌がられてんじゃねーかなと思ってたから・・・嬉しい。」
(え、じゃあもしかして・・・・・・)
「俺、咲野はすっげー良い子だと思う。純粋だし、なんでも一生懸命だし、努力家だし。人として尊敬してるよ。でも・・・ごめんな、俺・・・・・・彼女・・・いるんだ」
がーんと、ユーリは頭のてっぺんから殴られたような気持ちがしました。
(彼女・・・・・・いたんだ・・・・・・)
へなへなと座り込みたいのを我慢して、ユーリは頑張って立ち続けました。
「そそそそれって・・・り、莉莉亜、ちゃん?」
「あー、ハーフの子?違う違う、妹が行ってる、耳の聞こえない人達の会の子。一個歳下で、今は他の県の聾学校で頑張ってる」
「・・・・・・そ、そう、なん、だ」
「そいつも喋るのあんまりうまくないから、なんか咲野と被ってさ・・・ってまあ、そんなわけで・・・ごめん、俺は咲野の彼氏にはなれない」
「うん・・・」
「でも、嬉しかった。ありがとな、咲野。・・・暗いし、帰ろうぜ。また駅まで送るよ」
(こんな私に・・・どこまでも・・・優しいなぁ・・・・・・)
ユーリはとてもうれしい気持ちでしたが、作戦メンバーが待っているのと涙がこぼれそうだったのとで、首を横に振りました。
「あああり、がとう・・・・・・でも、だ、だだいじょうぶ、っとっと友達、まま待って、るから」
でも、小さい嗚咽は隠せませんでした。
「・・・そっか。変質者出たって聞くから、気をつけてな。なんかあったら逃げろよ。・・・じゃ、また明日な」
笑顔で手を振ると、村田君はカバンをつかんで教室を去って行きました。
ユーリもカバンを背負うと、よろよろとみんなのいる場所に向かいます。
「ユーリどうだった!?」
「村田君なんだって!?」
みんなが、きらきらとした目で出迎えてくれました。
「あはは・・・彼女、いるん・・・だ、って・・・」
ユーリは胸の前で、小さくバツを作りました。
そして、話の中身をみんなに話しました。
「なんだと!?そんな情報聞いてないぞ!」
「彼女隠してあんなに爽やか気取って女子の人気集めて、腹の立つ!」
「しかしほんとに良い奴だもんねーあれは憎めない」
「うんうん、今は泣けユーリ」
まだ決行していない蘭も含め、みんな泣きながら慰めてくれました。
ユーリも、頭を抱えてくれたとっこにしがみついて、声を殺して泣きました。
ユーリの話し方も、ユーリの生き方も全て肯定してくれた村田君。
とってもとっても、良い男子です。
そんな子に好きだって、よく言えたね、ユーリ。
想いは叶わなくて、今は凄く辛くて凄く悲しくて
でも・・・言えたことに後悔はないよね。
今は泣いて、泣きつくしたら、また、笑顔でいよう。




