表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/40

中学生ユーリ~3年生~①

ユーリも受験生になりました。


おうちで大学受験の終わったお姉さんに勉強を教わりながら、コツコツと勉強してきました。

おまけに部活動もしていなかったので、ユーリの成績は良いものでした。


目指していた高校も、模試の結果では楽勝のようです。




修学旅行以来、ユーリは時々、鵜森さんとイルカ達に会いに行っていました。


休日の今日も、ユーリは鵜森さんの漁に同行して、ついでにイルカのそばに連れて行ってもらっていました。



「ユーリちゃん、高校はお姉さんと同じとこ行くんだろ?頭良いんだなー、俺の息子とは大違いだなあ」



「おお、おおおお姉ちゃんが、べっべべ勉強おおお教えてくれる、お、おかげです。そ、そ、そ、それに・・・ぶっぶ部活してなかったし、あ、あ、あああ、ああんまり友達もいないし」



たはは、とユーリは乾いた笑いを浮かべました。


鵜森さんは、うん、うんと話を聞き続きてくれるので、ユーリは鵜森さんの前ではわりと話しやすくなっていました。



「友達とか友情なんてのはなぁ、その時その時で移り変わり流れていくもんなんだよ。人生で本当の友達なんて、1、2人くらいなんだぜ?特にユーリちゃんなんか真面目だから、最後に残ったヤツは本当にイイ友達なんだろうな。中学にそんなヤツがいなかっただけだよ」



「そっそそそ、そう、なんですか?」



「そうそう。高校も大学も、いっぱい人がいるんだ。山ほどの出会いが待ってるよ。ま、中学生ってのは悩むお年頃だからなー。せいぜい悩め、若者」



「はーい」



イルカと十分触れ合ったあと、鵜森さんが船を動かして港に戻ります。



今日はよく晴れていて、風も心地いいです。




「ただな。どんなに悩んでもいいけどよ、自分を傷つけたり、命を粗末にするようなことだけはするなよ。ヤなことから逃げたっていいんだぜ?我慢し続けたって誰もイイ思いしねえからな。そうなりそうならいつでもイルカ達に会いに来な」



「はーい、気をつけます」



「・・・急にごめんな。息子がな、ちょっと最近調子悪くてそんなことばっかり言うもんで・・・」




自分と同じ、“キツオン”の息子さんだ。と、ユーリは思いました。



「今就職活動中でな。面接ってのがあるんだ。まぁ一対一の懇談みたいなやつなんだが、それに通らなくてなぁ・・・」



「ど、ど、どどどうしてですか?」




「ユーリちゃんならわかるかなぁ。おはようございますとか、ありがとうございました、って言いづらいんだろ?みんなが言えて当たり前の挨拶とか決まりきった文章が言えないって、それがどうもネックらしいな」




ユーリは、胸がつきんと痛むのを感じました。


みんなと同じように言えなくて辛い息子さんの気持ちが、痛いぐらいわかるのです。




朝、「おはよう」が言えなくて。



何かしてもらって、「ありがとう」が言えなくて。



自分の名前、「サキノ」が言えなくて。




みんなができる当たり前のことが自分だけできなくて、練習して頑張って、でもやっぱりできなくて馬鹿にされて。




「息子・・・圭一っていうんだけどな、家でずっと音読してるよ。でもどんどん言葉が出なくなってってるんだ。頼まれて病院にも行ったんだけど、治療法も薬も無い、そんな病気は知らないって追い返されてな」




ユーリは唇を噛みました。


もし自分もキツオンだったら・・・治らない、の?




「圭一があんまり必死になってるから、俺もちょっと調べたんだけどさ、このあたりには診てくれる先生もいないんだ。あるのは怪しい商品と講座ばっかりだよ。親馬鹿かもしれねえけど、あいつ、あんなに頑張ってるのに、こんなに形にならないんだな。何も出来ねえ俺も辛いよ。こんなことって本当にあるんだな」



鵜森さんの目に、うっすらと涙が浮かんでいました。




船を港につけ、鵜森さんとユーリは陸地に降りました。



ユーリの帰りのバスの時間までまだまだあったので、鵜森さんが自動販売機でジュースを買ってくれました。



もうしばらくお喋りできます。



「あ、あああたしも・・・な、な、な、治らないの、かな・・・」



「なんかな、吃音は女の子にはかなり少ないらしいんだ。ユーリちゃんまだ中学生だし、自然によくなって気にならなくなるケースもあるんだと。だからまぁ、そんなに気にすんな。な?」




「う、うん・・・」




「だがいじめは俺は納得できねえな。ユーリちゃんは悪くねえんだ。最近はどうだ、酷いことされてんのか?」



「・・・さっささささ最近、ひ、ひ、酷いことされそうになると、ちっち近くでガラスが割れたり、物が壊れたりして・・・せせせせ先生がとっとっとっとんで来るから、あ、あ、ああああんまり、ひひひひひひ酷いことは、さっさされない、です」




「・・・どういう状況だ?それ・・・」





修学旅行以降、ユーリに対するいじめは酷さを増していました。



暴言もきつくなり、無視、仲間はずれ、嫌な行為の強要など・・・物が無くなる、壊されることもありました。



しかし何故か最近、集団にいじめ行為を受けていると、ときどき、近くで他の事件が起こるようになりました。



トイレに閉じ込められた時は火災報知機が鳴ったり。



廊下で女の子の集団に小突かれていると、近くの窓ガラスを突き破ってサッカーボールが飛び込んできたり。



理科室で根性焼きをされかけた時は理科準備室で爆発があったり。




いずれもすぐに先生が数人で駆けつけてくることばかりなので、酷いことをされそうでも全て未遂で終わっていました。



他にも、朝上靴を隠されたのでスリッパを借りて一日過ごしていたら、帰る時には上靴が戻ってきていたこともありました。




「・・・お、お姉ちゃんに聞いたら、まま守り神が、まっま守ってくれてるのかな?って・・・」




「不思議だなぁ・・・しかし守れてるのかそれは・・・?」




(ほんと、不思議・・・なんでなんだろう?)




「お、バス来たな。じゃあユーリちゃん、気をつけてな。ご両親とお姉ちゃんによろしく」



「あ、あああ、あああああありありがとう、ござい、ましたっ」



ユーリはお礼を言ってぺこりとお辞儀をすると、バスに乗り込み、一番後ろの座席に座りました。



(あ、イルカかな、跳ねた・・・)



よいしょと窓を開け、見送ってくれる鵜森さんに手を振ります。



窓から見た海は綺麗に凪いでいて、遠くでイルカがぴゅうと鳴いていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ