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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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麻雀

俺は、とある場所で、沢山の強面な方々に、囲まれていた。

ええ、暴力団の方々です。

何故俺はこんな所にいるのだろうと思わなくはないけれど、仕事を受けたから仕方がない。

仕事内容は、日本の為と言えば、日本の為になるもので、楽しそうと言えば楽しそうで、とにかく受けてしまった。

まあ、暴力団ってのは、一般人から見れば煙たい存在ではあるけれど、無ければ無いで不都合がある。

それが証拠に、政府は「悪だ!」と言いながら、暴力団を本気で排除しているようには見えない。

著名人も多く利用しているし、海外マフィアが自由にのさばらないように、抑止力もある。

だから、暴力団ってのは、実はかなり重要なものであるわけだ。

そんなわけで、俺は、麻雀の代打ちの仕事を了承した。

面子は俺と、電話をくれた吉沢さん、後二人は今回の敵となる、どこぞの国のマフィアのお二人。

それにしても、何故こんな仕事を俺に依頼してきたのかは謎である。

俺の仕事は、吉沢さんをトップにして、マフィアの方々にチームで勝つ事。

何故か丁寧な呼び名になってしまうのは、ほらまあ、怖いから。

俺は小さなGを、それぞれの面子の牌が見える位置に配置する。

神経をシンクロさせれば、俺には他の人の牌が見放題。

普通にイカサマ無しだったら、それなりにやれる自信はあるけど、相手方は何かしらしてくるだろう。

東の一局目で、対面が親。

上家と対面に、マフィアの方々、下家に吉沢さんだ。

良い配置だ。

最初の配牌。

皆のを見ても、どうやら全自動卓に細工はしていないようだ。

これならなんとかやれそうだ。

マフィアな方々は、明らかに通しをしている。

対面の人は、手配全くそろえずに、上家を勝たせるように打っている。

俺は一応そろえているが、吉沢さんが欲しそうな牌があったら捨てるつもりだ。

しかし、マフィアな方が先に、聴配だ。

「リーチだ。」

一、四、七の、萬待ちか。

さてどうするか。

こちらは通しはしていないから、当たり配を教える事はできない。

吉沢さんは、ピンズに寄せてるから、萬をツモってくるときついな。

このゲームで辛いのは、俺がトップをとるのはタブー。

あくまでも吉沢さんをトップにしなければならない。

上家の役は、メンタンピンのザンクか。

一萬なら2千だけど、一発ならザンク。

裏が怖いな。

とりあえず、一巡は自力で回避してくれ。

俺は素直にいらない配を捨てる。

すると吉沢さんは、一萬をツモってきたようだ。

ダメだ。

それを捨てては。

簡単に捨てた。

「ロン!」

吉沢さんは、ぬるすぎる。

勝ちにこだわってくれるだろうから、その点は問題ないけど、麻雀は振り込まない事が、勝利への絶対条件。

裏ドラは乗らなかったようで、とりあえずザンクですんだ。

東2局目。

配牌は悪くない。

とりあえず、なんでも良いから勝つ。

最後に吉沢さんが勝っていればいいのだから。

よし、今度はかなり良い感じだ。

6順目、聴配。

さて、何処が出やすいか。

吉沢さんにも必要で、尚かつマフィアな方々が捨てそうなのは・・・

「リーチ!」

俺の役は七対子で、西をきってリーチだ。

他の捨て牌は、二萬、五ピン、八萬、七ピン、一ピン。

で、待ちは四ピンだ。

チートイツの可能性も十分な捨て配だけど、チャンタやホンイツも捨てがたいだろう。

更に、吉沢さん以外はピンズにぬるく、四ピンを引いてくれば使い道無しだ。

吉沢さんのツモは、六ピンで間すっぽりはまった。

なにげに今回は、吉沢さんも調子がいいな。

イーシャンテン。

マフィアな人Bのツモ、四ピンだ。

正直上家の人からとりたいけど、出すならもちろん頂くよ。

現物の二萬を切ってきた。

堅いなおい。

というか、これが普通か。

マフィアな人は、西をツモ切り。

俺のツモ、六ピンツモ切り。

吉沢さんは、一ピンツモで聴配。

 吉沢「リーチ!」

リーチしてきたか・・・

待ちは、二萬と五萬だ。

今回は俺達有利。

対面のマフィアな人が、四ピンを切ってきた。

この人なら二萬をツモれば切りそうだけど、上家は無理だろうし、此処は上がるべきだな。

「ロン!リーチ、チートイ、ドラドラで満貫だ。」

よし。

これでトップに躍り出た。

後はこれを吉沢さんに・・・

「ああ?ラッキーやなぁ。俺も良かったんや。わかってるやろな?」

「は、はい・・・」

くそっ!

味方脅してどうするんだよ。

俺の親は、皆遅くノーテンで流局。

あっさりと流された。

で、吉沢さんの一回目の親。

此処でなんとかトップにたってもらいたい。

俺も吉沢さんも、なかなか良い配牌だ。

吉沢さんは高めを狙っている。

俺は吉沢さんにあわせる。

今回は勝つつもりはない。

吉沢さんの当たりになりそうな牌のキープと、同じ牌の維持。

完全な染め手だ。

おそらくマフィアな二人もわかっているだろう。

吉沢さんが高めを狙った為、上家の先にマフィアな人に聴牌が入る。

「リーチ!」

待ちは五、八ピン。

一応俺は八ピンを1枚持ってる。

やばい時は差し込む。

五ピンをツモってきた。

この状態なら、吉沢さんも面前ではいかないだろう。

俺は吉沢さんの欲しいであろう牌を捨てる。

「チー!」

よし、これで一巡目は抜けれた。

更に吉沢さんがイーシャンテン。

次でなかせて、聴牌だ。

再び俺の順番。

「チー!」

これで聴牌だ。

しかし、出ないな。

俺も吉沢さんのあがり牌を持っていない。

俺のツモ、違う。

俺はツモ切りした。

吉沢さんのツモ・・・

やばい、それは上家の当たりだ。

吉沢さんはそのまま切った。

「ロン!メンタンピンドラドラ。」

痛い。

うまくいかないものだ。

東場が終わった。


南入。

「ロン!」

マフィアな人はナキタンのみで上がってきた。

勝負を早く終わらせるつもりだ。

上家のマフィアな人の親だから、此処なら少しは粘るか?

「ロン!」

対面のマフィアな人も上がってきた。

そしてまたナキタンかよ。

完全に逃げ切りを狙ってやがる。

俺の親。

此処で少しは吉沢さんを押し上げないと、かなりきつい。

吉沢さん、ないてくれ!

「チー!」

よし、聴牌までは引っ張りますよ。

マフィアな人達の手が早そうだから、今回はそれを阻止するのが優先だ。

これもないてくれ。

「ポン!」

これで先に聴牌だ。

上がり牌がバレバレだけど、二人の手を少しは遅らせる事ができる。

その間に、俺か吉沢さんがつもれば。

ちっ!トイ面が引いてきたか。

捨てるわけないな。

予想どおり押さえる。

二枚ないてるから、やはり警戒されて当然。

上家、聴牌が入った。

どうする?

逃げてくれ!

「リーチ!」

上家のマフィアな人がリーチしてきた。

おいおい、確かに此の手だったら来るだろうけど、上がられたら終わりだ。

頼む、四、七萬来い!

よし、七萬来た!

俺はツモ切りした。

「ロン!中ホンイツ、ザンクじゃ。」

俺は3900点、吉沢さんに渡した。

いよいよ、オーラスだ。

俺が勝っても、チームでは勝てるが、吉沢さんを勝たさねばならない。

差込なら、ハネマンプラスリー棒か。

配牌はまずまず。

吉沢さんがハネマン作るのは、チンイツとドラが良さそう。

よし、作戦は決まった。

俺は序盤から、なかせる。

六巡目、聴牌。

よし。

つもれば逆転。

差込だと、僅かに足りない。

しかし、なかなかあがれない。

そして十順目、マフィアな人に、聴牌が入った。

リーチはしない。

リーチしてくれれば、俺が差し込むのに。

どうする?

差し込んで、次の局に勝負するか?

そうだ!

俺は上家の捨て牌に対して、コールした。

「ポン!あ、いえ、間違えました。誤ポンです。」

俺はそう言って、千点棒を場に出した。

誤った発声は、上がり以外の場合は、場に千点って事になっていたから。

「おとなしくでけへんのかい!」

なんで怒られるんだ?

あんたの勝ちを確実にしてやったのに。

「ちっ!」

俺のツモ牌は、トイ面の上がり牌だ。

もちろんこれは捨てない。

捨てるのは、吉沢さんの上がり牌である、一萬!

「ロンじゃ!!ハネマンじゃあ!!ははは!!ようわかっとるやんけ!」

吉沢さんは俺の背中を叩いた。

100点差で、トップをまくった。


「お前なかなかやるやんけ。」

「いえ、一応麻雀は得意なので。」

今日の対局で、マフィアとの縄張りに関する話し合いは、上手くいったようだ。

これでとりあえず、危ない物を一般人が、ガンガン手に入れてしまう事は防げたらしい。

「うちの組に入れや。ずっと麻雀打たしたるぞ!」

「いえ、約束どおり、今回限りで。」

俺は、今回の仕事を受けるにあたって、今回限りと約束していた。

「そうか。じゃあまあ、しゃあないな。ほれ、約束の報酬や。」

俺は出された封筒を受け取る。

分厚い。

「えっと、10万円の約束だったんだけど・・・」

「ええ、ええ!!その百倍はこっちは儲かったからな。」

封筒には、100万円。

えっと・・・1億の金が、あの一局で動いていたのか?

少し怖くなって震えた。

「あ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて頂きます。」

「いやぁ、わしが麻雀で勝ったんは初めてやからな。これくらいはええんじゃ。」

おいおい、どおりで弱いと思ったよ。

「まあなんかあったらゆってこいや。お前やったら手ぇかしたるから。」

「はい。では何かあれば。」

こうして俺は、怖い場所から逃げるように帰った。

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