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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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正義か悪か

一週間が経っても、あの蜘蛛を駆除した旅館のオーナーから、料金が振り込まれる事は無かった。

俺は気になって電話したら、蜘蛛が出て、大切なお客を怒らせてしまったと文句を言われた。

だから俺は、こっそりと再びその旅館を訪れていた。

そして、少し疲れるが、旅館内の虫の存在を調べる。

Gやコオロギ等の虫、更にはヤモリ等の生命体は存在したが、蜘蛛は1匹もいない。

蜘蛛が出たなんて、これは明らかに、金を払わない為の言いがかり。

こんな奴がいるから、世の中腐ってくるんだ。

俺は一旦、近くに止めてあった自動車に戻ると、トランクから箱を取り出す。

この中には、大量のGがいる。

俺はまず公衆電話を探して、保健所に電話。

数年前まで、実力派俳優だった俺だ。

少し年輩者を装って喋る。

「あー、今山乃上旅館にきたんじゃが、料理にゴキブリ、部屋にも大量にゴキブリ、あんなので営業させていいのかね?」

うむ、なかなかの演技力だ。

誰が聞いても70歳のじいさんだ。

電話を入れた後、俺は連れてきたGを放す。

命令もしっかりしておいた。

人目につくように、部屋を動き回り、お客が食べようとしている食事に取り付けと。

他にも色々命令したが、それは今後、此処で上手く生き抜く術だから割愛する。

しばらくすると、怒って出てくる客や、怖くて逃げて来たであろう従業員などが見える。

ふふふ、愉快愉快。

更には、今日はこれないだろうと思っていた保健所か、それとも警察か、調査に来たようだ。

電話で確認した時に、悲鳴とか混乱する声でも聞いたのだろう。

後は帰って、山乃上旅館の今日の様子を、どこかの掲示板に書いておけば完璧だ。

俺は自動車に戻ると、自宅を目指して走り出した。

家に戻ると、海外にホストを置く、匿名掲示板に、「山乃上旅館の料理はゴキブリ料理。」とか「寝ている間に、口の中にゴキブリが入った。」とか書いておいた。

まあこれで、俺に金を払わなかった報いは受けるだろう。

悪い奴が得をする世界、そんな世界だけには絶対しない。

頑張る人が、心優しい人が報われる世界を、少しでも俺の力で・・・

次の日のニュースで、山乃上旅館で、ゴキブリ大量発生のニュースが流れていた。

業務改善命令を受け、「元々経営は楽ではないのに、このイメージダウン。おそらくはこれ以上の経営は難しいだろう。」なんて、評論家みたいな人が言っていた。

流石に旅館自体がつぶれたら、従業員などが可哀相だけど、悪の元で働く罪悪感が取り除かれて良いだろう。

俺は適当に納得して、今日も仕事に励む。

「って、特に仕事はないけどね。」

結局する事もなく、ソファに座ってテレビを見続けた。

ニュースは、はっきり言って悪いニュースばかりだ。

良いニュースと言えば、海外で活躍する、スポーツ選手のニュースだけ。

よくもまあ、みんなこんな世界で生きていて、暴動を起こさないものだ。

平和が有るから、全てが許されるのだろうけど、平和も良し悪し。

今、どこかの国のボスが壊れたら、日本なんて絶対太刀打ちできるわけない。

それで皆が良いと思っているなら、自衛隊自体必要無いし、ダメだと思うなら、軍を持つべきだ。

どっちつかずの平和は、ほんと日本人らしいと思うけど。

まあ歴史上、永久に続いた平和は存在しないし、これからもそんな平和は存在しないだろう。

それは、今の世の中を見れば、はっきりとわかる。

戦争をしないと誓った日本が、すでに戦争の手伝いをしているのだから。

それが良いか悪いか、俺が判断できるものではないけれど、少なくとも生きている間は、戦争などしたくないものだ。

だから俺は、悪は栄えないと思える世にするために、少しでも貢献するのだ。

「まあ、うまくまとまったな。」

俺は自分の考えにツッコミを入れて立ち上がる。

隣の部屋のG達に、今日は新しい餌でもふるまってやるか。

Gは害虫だって言うけれど、悪い人間と比べたらよっぽど可愛いし、生きる為に最低限の事をしているだけだ。

人間なんて、必要以上に動物を殺し、そして地球を汚す。

地球と、そして生きとし生ける全ての生物から見て、人間こそ害虫ではないだろうか。

冷蔵庫から、チーズを3箱取り出す。

俺がこれを貰ったとして、喜びなんてほとんど感じない。

でもG達は、凄く喜んでくれるんだ。

自分が人間である事が、少し悲しくなった。

一旦マンションの部屋を出て、隣の部屋の鍵を開ける。

此処をあける時は、周りに人がいない事を確認。

なんせ中を見られたら、大変だからね。

一応いくつか部屋があって、そのうちの一つに集まるようには言ってあるが、排水口へ移動するのが結構いたりするから。

ドアをあけると、排水口へ向かうのと帰ってくるのが、100匹ほど見えた。

これを見たら、普通の人だったら悲鳴をあげてもおかしくない。

俺は靴のまま部屋に上がる。

玄関のドアは閉めて、ちゃんと鍵もかけてある。

確認してから、俺は部屋のドアをあけた。

中には、部屋が真っ黒になる程のGがいる。

普通の人がこれを見たら、おそらく卒倒するだろう。

今ではGが怖くない俺ですら、少し気分が悪くなる。

俺は素早く、用意したチーズの固まりを3つ、部屋の中に置いた。

みんな礼儀正しく、順番に食べてゆく。

俺が教育、と言うか、命令しているとはいえ、コンビニで並ばずにレジで会計する奴より、よっぽど賢く見えた。

部屋のドアを閉めて、俺は玄関を出た。

そして、自室に戻る。

すると電話が鳴っていた。

俺は慌ててテーブルに置いてあった携帯電話をとる。

「はい、もしもし万屋イフです。」

「あー、おまえんとこは、どんな仕事でもするんか?」

偉そうに話す男の声。

ドスがきいてて、いかにも怖そうな感じがする。

俺は慎重に対応する。

「はい、お金と心によって、どんな仕事もいたします。」

「心?なんやそりゃ?」

なんだか嫌な感じがして、緊張してきた。

「それが悪であったり、私が心動かされない事は、たとえどれだけお金をつまれてもできないって事です。」

「ああ、そういう事か。だったら、俺の仕事はうけてもらえそうやな。」

おいおい、勝手に決めてるけど、俺的にはお断りしたいんだけど。

「えっと、とりあえず、お話していただかないと、決めかねるんですが。」

「ああ、仕事内容いってへんかったな。その前に、俺の名前先に言わせてくれや。」

「はい。」

「俺の名前は、暴力団浜崎組の幹部、吉沢源氏や。」

浜崎組と聞いて、俺はビビっていた。

暴力団ってだけでも驚きだけど、今や日本一の組だから。

覚悟して、俺は仕事内容を聞いた。

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