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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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仲間

害虫駆除中心、いや、G駆除を中心に活動する日々が続く中、自分の能力の開拓も行っていた。

というか、鍛えれば結構いろいろできてしまう事がわかってきた。

生命力を使う事。

生命力に関わる事なら、アイデア次第で色々できる。

Gを動かす事は、中でも一番簡単な事のようで、Gの聴覚や視覚に意識を繋ぐと、覗きや盗聴のような事まで出来る事がわかった。

さらには、まだそれほど大きな事はできないけれど、昆虫程度なら自由に動かせる。

Gのように扱う事はできないけれど、言ってみればラジコンで動かす感じ。

しかしそれには、かなり自分の生命力のようなものが必要で、大きい生き物になるほど疲れるし難しい。

上手くいけば、人間だってコントロールできるような気もするが、流石にそれは無理だと誰かに言われた気がした。

それでもせめて、ネズミくらいは動かせれば良いなと思った。

そんな事を考えていたら、携帯の着信音が鳴り響く。

俺はすぐに携帯を手に取った。

携帯ディスプレイには、未登録番号からの着信を知らせる表示。

新規のお客様のようだ。

「はい、もしもし万屋イフです。」

「えっと、高橋さんですか?」

「ええ、そうですけど。」

どこかで聞いた事のある女性の声。

しかし、おそらくはほとんど話した事のない人のようだ。

誰だかわからない。

「えっと、喫茶メグミの、愛須と申しますが。」

愛須と聞いて思いだした。

先日G駆除とネズミ駆除をした、喫茶店にいた女性だ。

喫茶店の看板には「喫茶愛」と書いてあったけど、あれってメグミって読むんだ・・・

「はいはい、もしかして、またネズミがでましたか?」

Gが出る事はあり得ないし、電話してきた理由を考えれば、思い当たるのはそれしかない。

「いえ、違うんですけど。」

「では、別の仕事の依頼でしょうか?」

「はい。でも、とりあえず相談と言うかなんと言うか・・・」

なんだかはっきりしない物言いだ。

とりあえず、話を聞いてくれと言う事か。

「ええ、今話せる事ですか?だったらこのまま聞きますが。」

「いえ、是非一度、家へいらしていただきたいのですけど。」

ふむ。

電話では話せない事のようだ。

まあこちらも、そんなに仕事をしているわけではないし、今日は暇だ。

「では、これから伺いましょうか?」

「あ、はい、是非。」

「それでは・・・」

俺は電話を切ると、早速出かける準備をする。

一応いつも持ち歩くポーチに、Gを数匹忍ばせる。

まあ多少なら、離れていても呼ぶ事ができるが、Gが全くいない場所ってのも存在するからな。

俺は準備が完了すると、前に行った喫茶店を目指した。

自動車で30分ほどで、目的地についた。

前回来た時より、道がわかる分少し早い。

さて、今日は喫茶店ではなく、裏の自宅の方へと回った。

インターフォンを押すと、受話器に出る事なく、そのまま玄関が開けられた。

出てきたのは、先日店で会った、愛さん・・・

だったはずなのだけれど、服装が高校の制服だった。

「ええっ!」

俺は驚いて、声をだしてしまった。

何故なら、先日会った時は、二十歳くらいかと思うくらい大人っぽかったから。

「えっ!ど、どうかされました?」

「こ、高校生だったんですか?!」

俺は素直にそのまま聞いてしまっていた。

あまりに可愛くて、少し動揺していたから。

「あ、はい。」

普通にこたえられ、何も言う事が無くなった。

少し沈黙したが、普通に仕事の話すれば良いと気がつき、俺は落ちつて話した。

「えっと、で、話はどちらで?」

「あ、はい。では、中に入ってください。」

俺は促されるまま、愛さん宅へと入った。

玄関で靴を脱いだ後、そのまま正面に見える階段を上がる。

先に階段を進む愛さんのスカートの中が見えそうで、俺は少し視線をそらしながら上がった。

つれてこられたのは、どうやら愛さんの部屋の前。

「あのー・・・この中なんですけど・・・」

愛さんが、部屋に入る事を躊躇している。

俺は、既に気がついていた。

小さな生命反応が沢山ある。

俺は自分の能力で、生き物を特定する。

「蜘蛛・・・か。」

「えっ?!どうして?」

やばい。

つい言葉に出していたようだ。

俺は中の蜘蛛を一匹操作し、入り口のドアの近くに移動させて、少しだけドアを開ける。

すぐにその蜘蛛を外へと出した。

「ほら、此処にいたから。」

「ホントだ・・・」

どうやら上手くごまかせたらしい。

こんな能力、言っても信じて貰えないだろうけど、自ら喋って混乱を招く事もない。

だから俺は、できるだけ隠していく事にしていた。

「この中に相談の何かがあるんですね?」

「あっ!でも・・・」

俺は、愛さんが止めようとしているのを、聞こえないふりをして中に入った。

中には、すぐに沢山の虫がいる事がわかるほど、蜘蛛がいた。

おそらく100匹はいるだろう。

しかし、俺が入っても、どれも特に逃げる感じではない。

「えっと、ちょっとみんな、隅にいってくれる?」

愛さんが声をかけると、蜘蛛は部屋の隅に向かって移動し始めた。

「もしかして・・・」

「はい・・・前に害虫駆除して頂いてから、蜘蛛が私のまわりに集まりだして、もしかしたら・・・」

俺と同じような能力を持つ者が、他にいるなんて。

蜘蛛は既に、部屋の隅に集合していた。

家蜘蛛以外にも、少し大きめのもいた。

「ゴキブリ駆除の後に集まったから、これを俺に?」

こんな能力、わかったとしても、普通人には話さないはず。

それがほとんど面識のない俺だと尚更だ。

「えっと、ゴキブリ駆除の時、ゴキブリやネズミを殺している様子ではなくて、話しても、蜘蛛を殺さずにいてくれそうだったから。」

まあ、俺にとってのGと、愛さんにとっての蜘蛛は、きっと同じようなものだろう。

仕事では時々、何匹かのGには死ぬような事を頼んだりしたし、実際死んでたりするけれど、自分で殺すなんて俺にはできない。

「で、俺にどうして欲しいのかな?」

話すには、何かお願いがあるから話したのだろう。

「もうなれたのですが、やっぱりまだ一緒だと眠れなかったり、でも追い出すなんてできないし、どうしたら良いかと思いまして。」

このままでも、おそらくは大丈夫そうに感じた。

でも言われてみれば、前に会った時より少しやつれている気もする。

俺の能力も話してみようか?

マンションの部屋はまだ余ってるし、蜘蛛部屋を作っておいてあげる事もできるけど、まだ2回会っただけの人を信じて良いのだろうか?

「天井裏にいるように命令すればどうかな?」

何故か、愛さんが俺を見つめていた。

どうしたのだろう。

「この状況を見ても、驚かないんですね。」

言われて気がついた。

普通なら、まず部屋に入った時点でかなり驚くだろう。

でも俺は、既に中の状況を知っていたから、驚かなかった。

そして、蜘蛛への命令と、それに従う蜘蛛達。

それを見たら、更に大きく驚くはずだ。

でも俺は、既にこの能力を認めているし、普通に対処してしまった。

しらばっくれる事もできるけど、俺は誰かに話したかったのかもしれない。

同士に出会えて嬉しかったのかもしれない。

俺は話していた。

「俺も、実は同じ能力があるからね。」

「やっぱりそうなんですか。」

「えっ!?わかっていたの?」

「ゴキブリ、殺してないのにいなくなった。今までお父さんが色々試したのに、いなくならなかったゴキブリがだよ?だからもしかしたらって。」

なるほどなぁ。

まあ普通、これだけ見事にG退治できる業者もないからな。

飲食店でバイトしていた時も、数ヶ月ごとに調査と退治をして、何回も行って、やっといなくなるくらいだもんな。

「愛さんは、どうしてその能力に目覚めたのか、理由はわかるのかい?」

「わからないけど、夢はみました。蜘蛛の神様が、蜘蛛の能力を得られるって。」

同じか。

という事は、愛さんも蜘蛛を助けたか、それとも何かウィルスに感染したのか。

「最近、蜘蛛を助けたりした事はある?」

「ええ、前に来ていただいた次の日から、ブルーランドの方へ旅行に行っていたんですが、その時に。」

ブルーランドは、北極にほど近い、とにかく寒い国だ。

最近の温暖化により、永久凍土が溶け、一昔前より生活圏が広がり、最近旅行客に人気の島国。

「俺と同じだ。」

「高橋さんもブルーランドへ?」

「いや、俺は南極なんだけど、原因が同じって事。」

「この能力を得る原因ですか?」

「うん。」

俺は頷いてから、詳細を話した。

南極に行った事。

そこでGを助けた事。

愛さんの事はわからないが、未知のウィルスに感染していた事。

前々から思っていたのだが、未知のウィルスってのが、この能力に関係しているのではという事も話した。

新種のウィルスは、毎年色々と見つかっていたりするわけだが、完全に未知のウィルスってのはそうそうない。

二人の行った場所を考えると、最近永久凍土が溶けてきている場所だ。

氷の中にウィルスがあったのか?

強引な推測だが、なんとなく当たっている気がした。

他にも、俺の能力で命令できるのは、Gである事。

それを使って、現在仕事をしている事。

マンションにGを集めて飼っている事も話した。

ただ、西口悠二が若返って、高橋光一になっている事は伏せた。

これは国から止められているから。

「一応これは、他言無用でお願いしたいんだけど、良いかな?」

「はい。良かった。私だけじゃ無かったんで、少し安心です。」

愛さんは、どうやらこの能力を得た事が怖かったようだ。

確かに、ある日いきなりこんな能力に目覚めて、原因も分からなければ、宇宙人に改造されたとか、不安になるかもしれないからな。

ああ、それはないかな。

まあとにかく不安で、誰かに話したかったのかもしれない。

それでも、話したからと言って、不安は消えないだろう。

俺はもう死ぬつもりだった人間だから、未知のウィルスとか言われても、別に怖くはない。

しかしこれから人生いきてゆく人間にとっては、何時なにが起こるかもしれない恐怖が有るに違いない。

だから少しでも安心してもらえるよう、俺は言った。

「俺はもう1年以上になるけど、体の不調とか無いし、むしろ昔より快調なくらいだから、心配する事は無いと思うよ。」

俺は笑顔で愛さんを見た。

「はい。」

返事を返す愛さんが、出会ってから初めて高校生に見えた。

「じゃあ、これからも同じ能力を持つ仲間として、何か有れば連絡を取り合おう。」

俺は、名刺を差し出した。

「あ、持ってます。」

そう言えば、電話がかかってきていたんだ。

「そうだったね。」

「えっと、メール送ります。」

こうして俺は、同じような能力を持つ愛須愛さんと、情報交換をする理由で時々会うようになった。

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