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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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出陣

「戻ってこい」たったこれだけのメッセージだったが、俺は全てを理解した。

いや、勝手な推測だが、全ては山田の仕業だと思った。

二人を誘拐したのはもちろんだが、鈴木を殺したのも、きっと山田だ。

どうしてかはわからないが、俺が秘密を話した事が知られてしまったんだ。

だいたいそうだよな。

常に監視されている事は知っていた。

だから秘密を話す時は、車の中か、マンションの部屋で話してきた。

だけど、此処が安全だなんて、どうして思ったのだろうか。

車やマンションに盗聴器をつけられている可能性もあるじゃないか。

今更盗聴器を探しても仕方が無い。

既に鈴木は死んで、今大切な仲間である二人もさらわれてしまったのだ。

なめていた。

国の秘密機関とはいえ、そうそう大それた事はできないと思っていた。

だが、平気で人を一人殺し、今また二人を・・・

とりあえず俺は、二人がすぐに殺される事はないと判断して、まずは体調を整える事にした。

秘密を守る為だけなら、秘密を知る者を殺して、それだけで済む事だ。

なのに人質としてとらえて、俺を呼びだしている。

何か別の目的があるのだろう。

どういう状況が用意されているのか分からないが、とにかく体調を万全にする事だ。

鈴木の残した、ただの栄養剤だと言っていたアレで、少しは回復していたとしても、まだまだ万全とは言えない。

それにもうずっと食事もとっていない。

しっかり食事もとって、山田に会いに行く。

俺は荒れた部屋はそのままに、冷蔵庫の中にある物を適当に胃袋にいれて、明日の決戦に向けて、ペッドに入った。


朝は、スッキリ起きる事ができた。

体調は十分に回復していた。

俺はゆっくりと朝食をとる。

今更焦っても仕方がない。

俺はやれる事をやって、二人を助けるだけだ。

鈴木のように死なせはしない。

食事を終えると、俺はいつものように、鏡の前で身だしなみを整える。

いつもと同じように、今日も出て行くのだ。

準備が終わった。

部屋の状況を指差し確認する。

普段は、電気、水道、ガス、戸締りと確認するが、戸締りは必要ないかなと思った。

となりの部屋へ移動した。

こっちは、沢山のGがいる部屋だ。

ドアをあけると、いつもの状態そのままだった。

流石にこっちには入らなかったようだ。

俺は一部のGを鞄に入れて、後のGに声をかけた。

「俺が死んだら、みんな此処から出て、自由に生きてくれ。今までありがとう。」

少し涙がでてきた。

Gにこんな事を言って泣けてくるのは、俺くらいだろうなと思うと、少し笑えてきた。

部屋を出てドアを閉めた。

なんとなくだが、もう此処には帰ってこれない気がした。

車に乗り込み、フッと息を吐いた。

少し緊張してきたので、落ち着かせる為だ。

なんだろうか、この感覚。

売れない俳優をしていた頃に、よく感じていた感覚だ。

この感覚、俺は嫌いじゃない。

最近はテレビにもでていたし、ドラマにも出た。

しかし、こんな緊張を感じる事がなかった。

贅沢な話だが、売れない俳優をやっていた時の方が、面白かったのかもしれない。

エンジンをかけた。

昨日左腕に打った、ペン型の注射器が目に入った。

なんとなく鈴木が俺に話しかけてくるようで、俺はそれをポケットに入れた。

アクセルを踏んだ、車が動き出した。

山田のいる秘密機関は、マンションからさほど遠くはない。

車で行けば、ほんの数十分だ。

住宅街のど真ん中にあり、誰も秘密機関だとは思わない場所。

運転していたら、すぐに目的地についた。

すると従業員だろうか、すぐに車を駐車スペースへと誘導された。

今日来ることは分かっていたという事だろうか。

車を止めて降りると、男についてくるように言われた。

俺は男についてゆく。

目的の部屋につくまで、他に人と出会わなかった。

掃除のバイトもいなかった。

「此処です。」

案内してくれた男に、部屋に入るように促された。

俺は特にためらう事もなく、思いきってドアを開けた。

部屋の中には、ようやく来たかと言わんばかりの顔をした山田が、こちらを振り返った。

部屋を見渡した。

俺は驚いた。

部屋に、身動きが取れないようにされているメグミとカエがいる事は予想できたが、後二人男が立っていた。

山瀬さんと吉沢さんだった。

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