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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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運命の番組

社長室の奥から、まさかの人物が出てきた。

全国最大の暴力団、浜崎組の幹部である吉沢さん。

俺の顔を見た瞬間、吉沢さんも驚いていた。

話を聞くと、浜崎組と銀座興業のつながりは、40年以上になるらしい。

そして現在は吉沢さんが、主に銀座興業とやり取りしているという事だった。

正直この程度の事なら、俺はこの吉沢さんを交えた話に、さほど驚きはしなかっただろう。

だけど俺を驚かせたのは、銀座興業社長が西口悠二のファンで、西口悠二である俺が、自分の事務所以外で売れるのが許せなかったという話だ。

だから、自らの力はもちろん、暴力団浜崎組の力も借りて、俺に仕事がまわらないように工作していたらしい。

これを聞いた時、心の中は流石に冷静ではいられなくなっていた。

だけど、吉沢さんが軽い感じで話しかけてきてくれたので、俺はなんとか余裕を持って話す事ができた。

それにしても、俺がもし南極であのまま死んでいたら、こんな事も知らずに人生終わっていたのか。

本当に世の中腐っているんだなと、改めて思った。

俺は20年ほど前の事を思い出していた。

そう言えば、俺の所属事務所の社長が、俺に移籍する気はないかとか、聞いてきた事があった。

当然俺は、お世話になった事務所を出るなんて選択肢は無かったので、全く無いとこたえたはずだ。

もしかしたらあの時、この人が俺を引き抜こうとしていたのかもしれない、そう思った。

ただ、今更そんな事を振り返っても仕方がない。

俺は迷わず、社長の誘いに「お願いします。」とこたえた。

こうして俺は、いとも簡単に、最大手芸能プロダクション、銀座興業に所属する事となった。


仕事はいきなり入ってきた。

流石に最大手芸能プロダクション、簡単に仕事を持ってくる。

最初の仕事は、テレビCMのメインとしてだった。

先に聞かされた報酬額が、以前の俺の数カ月分のギャラである事に、俺はあきれるしかなかった。

格差社会とか言われているけれど、格差がありすぎると思った。

それでも俺は、俺の全てをかけて仕事に打ち込んだ。

可愛い女子高生二人も、応援してくれている。

カエとメグミとは未だに一緒に暮らしていたが、一緒に食事する機会も徐々に無くなっていた。

月九ドラマのゲスト出演として役をもらった。

クイズ番組の回答者としてテレビにも出た。

そして7月からのドラマの主演まで決まっていた。

そんなある日、やはりと言うべきか、当然と言うべきか、あの山田から電話が入った。

内容は、当然ながら、目立つなという事だった。

しかし俺は人権を主張し、俺を知る人物もいないから大丈夫だと言って、その要求を突っぱねた。

言ってみれば案外うまくいくもので、あの山田もしぶしぶ納得してくれたようだった。

「どうなっても知らんぞ!」

最後は怒鳴られて電話を切られたが。

気分がスッキリしたその日は、7月から出演するドラマの番宣の為、バラエティー番組に出ていた。

番組の宣伝を格好良く決めて、俺は満足していた。

まだまだ俺の事を知る人は少ないが、出演したものはそれなりに好評で、司会をしている人気お笑いタレントも俺を盛り上げてくれた。

後は、ゲスト出演者が座る席に座って、色々な人の芸を見ていた。

時々コメントを求められ、思った事をぶっちゃけて言った。

芸人はチラッと嫌な顔をしていたが、番組としては盛り上がっていた。

そんな番組が終盤にきた時だった。

新人さんいらっしゃいのコーナーで、特に芸人でもなさそうな一人の少年が立っていた。

何かをやれる雰囲気が全く無かったので、逆に俺の気を引いた。

「ではお願いしまっそー!」

司会者のフリを受け、少年は人差し指を立てた。

特に何も起こらないが、俺はなんだか嫌な予感がした。

少年は「おいで!」と一言いった。

特に何も起こらない、そう思った瞬間、沢山のコバエが、少年の指に止まった。

その後少年は、手を振ったり、走ったり、派手に動いてコバエを操っていた。

間違いない。

能力者だ。

俺がいて、メグミがいて、カエがいて。

身近にこれだけいるのだから、他にいても当然だ。

以前そんなにはいないだろうと思った事もあったが、温暖化が進んでいるのだから、今後人数は増える、そう感じた。

結局、この少年のやった事は、どんなトリックでやっているのかなんて言われて、真剣に考える人は少なかった。

色々な動物が人になつく、その程度に考える人も多いのだろう。

数日後には、この番組は問題無く、テレビで放送された。

そしてその日を境に、世界が大きく動く事になった。

そんな日にかかってきた一本の電話は、久しぶりに鈴木からだった。

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