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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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終わりから始まりへ

プロローグ2です。

目の前に、神がいた。

神は言う。

「お前に、能力を与えよう。」

俺は問う。

「何故そのような能力を?」

神は言う。

「一寸の虫にも五分の魂、助けられたものは、必ずその恩に報いる。」と。

俺は気がついた。

ああ、もしかしてあの時のGか。

でも俺は、もうこれから死ぬのだ。

今更、何が俺に与えられたとしても、もう遅い・・・

光が見えた。

天国か?地獄か?

俺は、光へと飛び込んだ。


目が覚めた。

どうやら先ほどの神は夢だったらしい。

俺はベットに寝ていた。

天井には、天国へ誘う光だと思われた光を発する、電灯がついていた。

ようやく意識がしっかりしてくる。

俺は南極ツアーの団体から抜け出して、死ぬ予定だったんだ。

寒さの中で眠れば、死ねると思っていたけど、見つかって助けられてしまったらしい。

こんなところでも、俺は半端な奴なんだな。

苦笑いが出た。

俺は起きあがった。

周りには誰もいない。

体を少し動かしてみるが、特に問題は無かった。

むしろ南極に行く前よりも、体の調子は良いくらいだ。

それよりも、いったい此処は何処だろう?

俺は部屋の中を見渡す。

病室である事はわかる。

ベットには、ナースコール用ボタンが付いているし、俺の名前、西口悠二と書かれているから。

壁にはカレンダーが付いていた。

2008年6月と書かれていた。

妻が亡くなって、丁度1年後のカレンダーだ。

南極に行ったのも、丁度1年後だったから、何年も寝ていたなんてオチはなさそうだ。

「あれ?、日本?」

病室の雰囲気もそうだけど、カレンダーは明らかに日本語だ。

俺はベットから立ち上がる。

「ん?なんだ?」

また俺は不思議に思った。

カレンダーの文字が、はっきり見える。

俺は視力が悪かったから、普段はメガネをしていた。

老眼になると、視力が復活するのか?

そうなると逆に、近くが見えなくなると聞いた事がある。

俺は自分の手を見てみた。

はっきり見える。

近くが見えなくなったなんて事もなさそうだ。

「えっ?!」

また俺は驚いた。

自分の、歳をとって荒れてシワができていた掌が、まるで若かった頃のような手に見えた。

左手で右手を触る。

間違いなく、俺の手だし、でも若い頃のような手だ。

俺は数歩あるいて、近くの鏡の前に立った。

「あっ・・・」

今日一番驚いた。

そこに映る姿は、間違いなく30年前の俺だった。


俺が病室で目覚めた後、1年間は大変だった。

聞いた話によるとこうだ。

ます俺は、南極で倒れているところを助けられた。

パスポートを持っていたから、身元は簡単に分かったのだけれど、写真と実物が違いすぎた。

日本大使館に連絡が入り、俺の身元を確認したそうだ。

一応俳優として活動していたから、俺の情報を得るのは容易かったらしい。

そこでその姿が、二十歳の頃の俺と同じだと確認できた。

これは不思議な事だ。

日本政府は、速やかに、そして内密に俺を帰国させた。

そしてとりあえず、政府系の病院に入院する事となる。

間もなく俺は目覚めた。

その後、まず俺に、西口悠二であるのかどうか聞いてきた。

それは間違いないから、俺はそうだとこたえる。

では、その姿はどういう事かと聞かれた。

それは俺にもわからない。

俺はそのままこたえた。

その後は、俺自身問題は無かったが、政府は俺を解放せずに、とにかく体を調べられた。

なにやら新種のウィルスが発見されたとか、そんな話も聞いたけど、1ヶ月もしないうちにそれは無くなったらしい。

ウィルスは、俺の体から離れた瞬間に死滅して、その性質も何もわからなかったようだ。

それでも1年は、政府監視の元での生活。

はっきり言って、辛かった。

辛かったけど、生きる事に悩む事はない。

はっきり言うと、金の心配がない。

しかし、やはり辛かったのだ。

金と自由、両方あってこそ、幸せは掴めるのだと思った。


解放された俺は、特に行く場所も帰る場所もない。

更には、西口悠二の名も、戸籍上から消されていた。

新たに俺に与えられた名前は、高橋光一。

ごくありふれた名字と名前の組み合わせ。

そう呼ばれてもピンとこないけれど、そのうちなれるのかもしれない。

もっとも、俺がこの先、生きていければだけれど。

とりあえず政府からは、1000万円を貰った。

当面生活には困らない。

そして、若返った体があれば、バイトもできるし生きてはいける。

でも、働く気なんてもうない。

この世知辛い世の中、頑張った者が損をするんだ。

再び辛い思いをするなんてまっぴらごめんだ。

俺はなるべく郊外のボロアパートの一室を借りて、生きる事にした。

お金は、高橋光一の名で預金した。

ただなんとなく過ごす日々が過ぎてゆく。

特にやりたい事もなかったから。

そんなある日、部屋に一匹のGがあらわれた。

羽のついた大きいヤマトGだ。

あの寒い大陸で見た虫を思い出す。

なんとなく手をだしたんだ。

そして、「こっちこい!」って話しかけたんだ。

すると、ヤマトGは、俺の掌に乗って、俺を見つめていた。

もしかして、言葉がわかるのか?

「あそこに落ちてるティッシュを、持ってきてくれ。」

言ってみた。

するとヤマトGは、言われたとおりティッシュを持ってきた。

俺は、あの時に見た夢を思いだした。

神が、俺に能力を与えると。

助けられた恩には報いると。

Gの能力か。

Gが俺の命令を聞き、思いどおりに動かせる。

そしてGと言えば、生命力かな。

俺が死ななかったのは、そのせいか、なんとなくそう思った。

早速いろいろ試す事にした。

「あの店から、1万円札を持ってこい。」

そんな命令を繰り返してみた。

あっという間に、俺は金持ちだ。

つい数年前まで、1年かけて稼いだ金額が、たった1日で手に入った。

夜にニュースで、ゴキブリがお金を持って飛んでいたとか、レジからお金が盗まれたとか、そんなニュースが流れていた。

金を手に、少し罪悪感がわいてきた。

しかし、こんな能力、使わない手はない。

俺は早速都心に引っ越した。

都心の方が稼げるし、前まで出来なかった生活ができる。

確かに豪華な生活はできた。

お金を盗んでも、狙う場所と金額さえ間違えなければ、そう話題にもならない。

3ヶ月で飽きた。

いや、むなしかった。

全てが簡単に進む事も、つまらないものだと実感した。

だったら、この能力を使って、面白くて難しい事。

できれば、俺と同じように生きる事に苦しんでいる人々の、何か力になれたなら・・・

だから俺は、会社を作った。

「万屋イフ」を・・・

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