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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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ボディーガード

警護を始めてから、既に1週間が過ぎていた。

そして昨日山瀬さんから聞いた話によると、警察が大がかりに動いている事が、脅迫してきたマフィア幹部に悟られたようで、警戒を強めてくれとの事だ。

そんな事を言われても、俺は素人だし、今までも出来うる精一杯をやっていたわけで。

そんな話を昨日メグミとカエに話したら、「私も協力するよ!」なんて言いだした。

確かに犯人を捕らえたり、犯人にダメージを与える事を考えれば、二人は頼もしい。

カエの毒針攻撃にかかれば、狙ってきた犯人を殺す事だって可能だし、メグミの糸とスパイダーネットで簡単に捉える事もできるだろう。

更にメグミの蜘蛛なら、校内の監視も手分けできるからありがたい。

しかし、学校も休まなければならないし、それ以上に、危険があるこの仕事を手伝って貰ってもいいのだろうか?

まあ酷く即死させられるような事がなければ、俺の生命力パワーでなんとかなりそうな気もするが。

自分の傷でしか試した事はないけど、生命力パワーで、体の傷等が治せる事はわかっている。

葛藤の末、結局学校付近に止めた車の中で、二人には待機してもらう事になった。

メグミの蜘蛛は、既に校内の色々なところで、監視活動をしている。

これだけ監視の目があれば、そう簡単には狙えまい。

それに、こんな方法で監視できるなんて、相手は知らないから、来れば必ず監視に引っかかるだろう。

二人のおかげで、かなり今日は精神的にも楽だ。

今ならもし狙ってきても、なんとかなりそうな気がした。

昼休みが過ぎ、午後は麻美ちゃんが体育の授業だ。

一番危険にさらされる授業でもある。

まあ本当にこの日本で、ライフルで射殺とかができるのかって疑問もあるけれど、拳銃は実際多く入ってきているとニュースではよく見るし。

一応グランドを狙える位置には、Gを配置してある。

冷静に考えると、いつも此処までする必要が有るのかと思うと同時に、これでも足りないのではと不安が襲ってくる。

日本で住んでいる平和ボケと、映画やなんかで見る情報がぶつかっているようだ。

私はグランド周りを掃除するフリをして、辺りの建物に目を光らせる。

どうもGを通した視界では心許ない。

それは思い過ごしなのだけれど、視界と言えない此の感覚は、味わった事のある人にしかわからないだろう。

すると、一番警戒していた近くのビルの屋上に、なにやら光ものが見えた。

外か!

俺は慌てて、体育の授業中の麻美ちゃんの方に走る。

それと同時に、Gを屋上へと向かわせる。

流石に冬なので、外は続けて監視を続ける事が困難だから、時々移動させて監視しているのだ。

違う事を祈るが、もしそうならやばいかも。

体育の授業で50m走をしていた麻美ちゃんの近くまで来た時、Gの視界が光るものを捉えた。

「違ったか・・・」

光っていたのは、どうやらスコップで、ビルの屋上の植物の世話に来たおじさんが持っているものだった。

「あのぉ~用務員のお兄さん、今授業中なんですけど?」

「あっ!すみません。」

俺はすっかり、授業中だと言う事を忘れて、女子中学生の集まる中にいた。

(バカ・・・)

なんとなく、麻美ちゃんの視線が冷たかったが、女子中学生はワイワイガヤガヤ俺を更に取り囲んでいた。

「うわぁ~格好いい用務員のお兄さんだぁ~」

「今校内で噂になってる人って、この人なんだぁ~」

「ホントだ。なんでこんな人が用務員なの?」

「噂だと、好きな先生がいるとかで、近づく為に用務員してるらしいよ。」

「ええ!じゃあ今近づいて来たのは、もしかして体育の先生の・・・」

「本田先生?」

「きゃー!!」

「えっ!ちっ、違うわよ!えっ!でも・・・」

「うわ~先生顔赤いよ~」

「きゃー!!」

俺、頭痛くなってきた。

女子中学生恐るべし。

そう思っていたら、俺の携帯がなった。

そしてすぐに切れる。

これは、あらかじめ決めていた、連絡方法。

すぐに切った場合、不審人物発見、電話している場合じゃないから警戒してほしいという時のもの。

俺は振り返って、校門方向を見ると一人の不審人物が、歩いてくる。

一目で不審人物と言うには理由がある。

手には拳銃、顔はサングラスとマスクで隠された、いかにも不審人物だ。

その姿に笑いたかったが、そんな余裕は、状況からも精神的にもなかった。

「みんな逃げて!!」

俺はその不審人物を見たまま、後ろにいるであろう中学生達に支持した。

悲鳴と共に、皆が校舎の方に逃げる様子が感じられる。

それにあわせて、不審人物がそちらに走りだした。

俺はそれの前に立ちはだかるべく走った。

不審者の動きを見れば、生徒達がどう逃げているかわかる。

そしておそらくそのターゲットは、麻美ちゃんだ。

不審者は拳銃を構えた。

当たったら痛いだろうなと思いながら、それでも立ちはだかり距離を詰める。

後ろから悲鳴のような声が聞こえるが、何を言っているか聞き取れない。

なんとなく全てがスローに流れる感じで、徐々に音すら消えそうな感じだ。

人間集中力が高まると、その対称だけしか見えなくなる事は、俳優をしていたから知っている。

観客は見えなくなり、その声も最後には消えるのだ。

今この世界には、俺と不審者しかいない。

拳銃は俺の後ろに向けられているようだ。

もしそこに麻美ちゃんがいたら危ない。

俺は自分の体を盾にする。

何故だかわからないが、集中力が此処まで高まっている時は、何でもできる気がする。

一応俳優時代は、体を鍛える為のトレーニングは欠かした事はない。

アスリートとは言わないが、それに負けないくらいの運動神経は持っているはずだ。

まあ体は二十歳そこそこのものだけど、経験し記憶した事は全て残っているのだ。

演技の為に、いくつかの格闘技も習っていたから、体は勝手に動く。

音の中で、一際大きな音、銃声だけが耳に入ってきた。

それと同時に、お腹の辺りに酷い痛みが襲う。

防弾チョッキを付けているから、此処なら大したダメージは無い。

そうは言っても拳銃で撃たれているから、流石に痛いし、衝撃は半端じゃない。

立ってはいられす、少し吹っ飛ばされる形で、俺は後ろに倒れた。

校舎の方から少しだけ悲鳴が聞こえた。

俺はすぐに立ち上がり、もう一度不審者の前へと走った。

再び拳銃を構える不審者。

今度は明らかに俺に向いている。

先に俺をやってしまおうと言う事か。

頭を撃たれたら、やばいかな?

そんな事を考えながらも、不審者に直進して走る。

なんとなく発射のタイミングがわかった。

今度はかわしても、後ろには誰もいない。

銃声の直後、顔のすぐ左を弾が通過した気がした。

直後、目の前の不審者が苦しみだした。

右を見ると、カエとメグミがいた。

どうやらカエが針で攻撃したようだ。

苦しみ方からすると、かなり強い毒を使ったのだろう。

本当はカエに、人を攻撃するなんてして欲しくはなかったが、状況が状況だから仕方がない。

俺は不審者との距離を一気に詰めて、懐に潜り込んで拳銃を持つ手を取った。

そして一本背追いで、不審者を地面にたたきつけた。

すぐに手を取って身動きが取れない状態に押さえた。

それを見て、メグミが用意していた、玩具の手錠を不審者にかけた。

玩具と言っても、本物と変わらないくらいしっかりしたやつだ。

これで、大丈夫だろう。

いつの間にか不審者の手から放れていた拳銃は、カエが拾っていた。

音も景色も、戻っていた。

「大丈夫!?」

「撃たれたよね!?」

心配そうに俺を見る二人の顔が、すぐ近くにあった。

それが少し照れた。

「あ、ああ。大丈夫だ。二人ともありがとう。」

ふと自分の下にいる不審者を見ると、後ろ手に手錠をかけられ、苦しそうにしてた。

遠くからパトカーと救急車のサイレンが聞こえた。

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