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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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秘密

俺は今事務所で、メグミとカエ、そして何故か、山瀬さんとテーブルを囲っていた。

先ほど年に一度の定期検査を終え、スキップして帰ってきたら、まあ事務所に3人がいたわけで。

それもなんだか少し不安と言うか、神妙な面もちと言うか。

理由はわかってるんだけどね。

きっと今日の検査の事だろう。

俺は、最近この3人が会っていた事を知っている。

もちろん知らないふりをしていたけど。

そして、俺のジャケットに盗聴器らしき物が仕掛けられている事も。

俺は知っていて、あえてそのジャケットを着て、今日でかけたのだから。

政府機関も、俺の監視はしているが、そこまでのチェックはしていない。

何故なら、この事がばれて一番困るのは、俺自身であるからだ。

こんな事が世間に知れたら、マスコミは俺のところに押し寄せるだろう。

そして、世界の権力者が、若返りの秘密を知ろうと、俺を欲するだろう。

もしかしたら危険人物として、暗殺される事も十分考えられる。

だから約束はしたが、それは俺自身の為である部分が大きいのだ。

「約束どおり、君の秘密を調べたよ。」

少し歯切れが悪い。

俺と山田の会話は全て聞いたのだろうし、俺の眠っている間の山田の言葉もおそらくは聞いているのだろうから、きっと全てばれてるだろうな。

「でしょうね。一応全部、この場で話してみてください。」

「いいのかい?」

「俺は喋るなと言われているだけですから。」

はっきり言って、このところの事をふまえれば、俺が喋ったのとなんらかわらないかもしれない。

でも俺は喋っていない。

「君の本当の名前は、西口悠二。どういうわけか、若返る事になった。これが30年前の写真だ。」

山瀬はそう言って、この前見せられた写真を出してきた。

メグミもカエも、その写真は既に見せられていたようで、特に驚きはない。

「若返りの秘密を調べる為に、政府機関に閉じこめられていたが、結局解明できず、今君はそれを喋らない事を条件に、高橋光一として普通に生活している。」

「いやぁ~そこまでばれましたか。もう否定できませんねぇ~」

俺は白々しく頭をかく。

「いやしかし、そんな事が本当にあるのか?いや、あるのですか?」

「ははは、今まで通りで良いですよ。それに山瀬さんは、私が超能力者だと思っていたんじゃないんですか?それから見れば、あってもおかしくないでしょ?」

「いや、そうなんだけど・・・」

山瀬さんは、頭で理解していても、現実をみてやはり信じられないようだ。

チラッとメグミやカエを見ると、あまり驚いていないようだ。

まあ、実際能力の事を知っているし、自分たちも能力者だ。

これくらい有ってもおかしくないと思っているのだろう。

俺が二人を見ている事に、山瀬さんも気がついたようだ。

「あれ?お嬢さん方はあまり驚いてないですね?」

「えっ?ああ、ちょっと放心状態になってるっていうかぁ~」

「えっ!うん。そうそう、放心状態。いやビックリです。はい。」

おいおい、メグミはまだマシだけど、カエは明らかに嘘ってばれるぞ。

俺は苦笑いした。

「君たちは知ってたんだね。」

「えっと、知らなかったんですけど。」

けどってなんだよ。

また苦笑い。

「いえ、それくらい有っても不思議じゃないって言うか。超能力は世の中に溢れてるっていうか。」

カエ、パニックでもう何言ってるかわかってないでしょ。

「なるほど。君たちが共に行動しているのは、君たちもそうだったと言う事か。」

まあ、若返ったのは俺だけだけどね。

「えっと、私は政府機関にとらわれてはいないですよ。」

「うん。同じ能力者ってだけで。」

うわっ!

はっきり言っちゃってるし。

「能力者?若返る事ができるのか?いや、君たちも50歳を越えている、のですか?」

「違いますよ。そんな事できません。」

「そうそう、似たような事ができるだけってか、あ・・・」

カエはばつが悪そうに、俺の顔を見上げた。

俺は笑顔を返してやった。

まあどうせ喋っても良いと思っていたし、カエが隠し事ができないのは、きっと長所だろうから。

でも今後、他にばれないように、少し教育は必要だろうけど。

「もうほとんどばれたし、みんな!喋ってもいいだろう?」

俺はメグミとカエを見た。

「まあ、光一が良いって言うなら。」

「私は、任せます・・・」

メグミはあきれたように、カエはションボリと下を見ながら了解した。

「俺達は、同じ能力者なんです。」

俺は山瀬さんに顔を向けた。

「若返る能力なのかい?いや、話や今までの行動を総合すると、それだけでは無いように思いますが。」

「若返る事は、私だけの能力です。まあ、やろうと思ってできるわけではないですけど。」

「高橋さんは、色々わかってるみたいですね。それなのに今日の定期検査では、全く解明されていないような感じだったんですが・・・」

流石に山瀬さんはするどい。

「ええ、俺が自分の能力に気がついたのは、政府機関を出てからですから。もちろんそれについて知っているのは、俺と、彼女たちだけです。」

「えっと、それはもしかして、政府に知れるとまずい事なのですね?」

まあそういう事になる。

俺は頷く。

あの山田の研究チームが、必死に調べてもわからない事を、実は本人がそれ以上の事を知っているのだから。

ばれたら又政府機関に閉じこめられるか、そしてもしかしたらもう二度と機関を出る事もできないか。

最悪能力を恐れて殺される事も十分考えられる。

「山瀬さんが誰かに話したら、俺の命もやばいかもしれませんね。」

俺は軽く笑った。

「笑い事じゃないよね。私も最初それが怖かったんだから。」

メグミは少し怒ったように俺を睨む。

「えっと・・・そうなの?虫と話せるだけなのに?」

「えっ?!虫?」

ははは、またカエは喋ってるよ。

いいんだけど。

それにしても、山瀬さん驚いてるよ。

その程度の能力だからね。

「ええ、その程度の能力なんですよ。まあその能力のおこぼれ程度に、若返る原因があると思っていただければ。」

「いやでも、高橋さんだけは若返り能力がある事はどうして?」

「まあ、話せる虫の種類によって、少し付加能力があるっていうか、そういう事ですね。」

「彼女達とは、話せる虫が違う?なら彼女達は?」

山瀬さんは聞きたい事が山ほどあるようで、次々に質問してくる。

一部内緒にはしたけど、結局話せる虫の種類、付加能力の一部、そして能力を得た原因と思われる事を山瀬さんに話した。

「まあそういう事なんで、内緒でお願いしますね。」

「あ、ああ。しかしまさか、そんな事が本当にあるなんて。常識に捕らわれてはいけないと頭で理解しても、やはり常識を逸する事は、受け入れ難いものですね。」

山瀬さんは、普段の余裕のある山瀬さんでは無く、おそらくは素になって、椅子の背もたれに体重をかけた。

「話して良かったの?」

メグミが小さな声で、俺だけに言ってきた。

「大丈夫。この人は信用できる。」

俺も小さな声で言ってかえした。

「そっかぁ~。でも、この程度の能力だと、世界を変えるには、まだまだ足りないなぁ~」

そう言えば、俺の内緒の事を調べる事ができたら、世の中を変える手伝いをするって約束だったっけ。

でもまあ、この程度なのですよ。

人一人暗殺するとか、その程度ならできるだろうけど、世の中動かす事なんてできる能力ではない。

もちろん、実際暗殺をして脅したりして少しずつやれば、それなりの成果も望めるだろうけど、俺や山瀬さん、それにこの子達ができる事ではない。

「政治家の悪を暴くとか、盗聴とか、その程度しかできないか。」

「まあ、そういう事です。」

「人探しも、虫に探してもらってたんだね。」

「そうです。」

「害虫退治は・・・」

「近寄らないように話すだけです。」

「なるほど・・・」

山瀬さんは少し嬉しそうだった。

理由はわからないけど、知りたかった事がわかったからなのだろう。

しばらくボーっとした後、山瀬さんは帰っていった。

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