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イフ  作者: 秋華(秋山 華道)
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二人の女子高生と初仕事

人捜しスタート直後から、隣の部屋のGは、ほとんどが出払った。

もし今、何か急ぎの仕事を頼まれたら、Gが大量に必要なものは受けられないが、まあ少し時間が有ればすぐに集められるし問題はないだろう。

そのへんが、Gの良いところだ。

ハチだと冬場は活動すらできないし、蜘蛛も数が減るとか色々欠点がある。

ただ、Gには無い攻撃力が他には有るし、温暖化しているとは言え、Gも冬は動きが鈍くなる。

そろそろ秋も終わる時期だし、華恵ちゃんが仕事参加するのは、これが終わればしばらく無理だろう。

それにしても、今回の仕事は暇だ。

ただ待つだけ。

「あぁ。又負けちゃったぁ。」

「ふふ、カクゲーは自信あるから。」

事務所のテレビに備え付けてあるゲーム機。

俺はほとんどシミュレーションゲームしかしないのだけれど、どうやら華恵ちゃんとメグミが、自分のソフトを持ってきたようだ。

それにしてもメグミがカクゲー得意だとはね。

それに華恵ちゃんもゲームが好きなようだ。

「今度はこれで勝負よ!」

華恵ちゃんの取り出したゲームは、かなり昔に流行ったパズルゲーム。

まあさっきやっていたカクゲーも、かなり古いタイトルだったから、二人とも最近のゲームはやっていないのだろう。

「ふふ、パズルゲームも得意よ。」

・・・

どうやらメグミは、ゲーム全般が得意なようだ。

メグミは華麗に、色とりどりの変な生き物を、色を合わせて積み上げる。

華恵ちゃんは、完全に色を合わせているから、ほとんど積み上がっていない。

一見華恵ちゃんの方が勝ってるように見えるが、メグミは連鎖による一気の勝利を目指しているようだ。

「そろそろいくよ!」

「此処まま押し切るわ!」

華恵ちゃんの意気込み虚しく、すぐにメグミの連鎖が決まった。

華恵ちゃんのエリアに、無色の変な生き物が積み上がって、そして負けた。

「ああ!愛強い!」

「子供の頃は、毎日やってたからねぇ。」

メグミは少し寂しそうにこたえた。

確かに、ゲームが強いってのは、今では一つのスキルにはなるかもしれない。

でも逆に言えば、それだけ練習する時間が有るって事。

すなわち暇人だとか、友達がいなかったとか、寂しかった幼少時代を過ごしてきた事が伺える。

それに現状、俺のマンションにあっさりと転がり込んできた事を考えれば、未だに何かがあるのかもしれない。

まあただ単に、通ってる高校が近いから此処に住んでるって話もあるけれど。

でも親が許してるのが信じられない。

俺は一応、両方の両親に電話した。

話としては、我が会社での住み込みアルバイトの許可を得た訳だけど。

両方の両親とも、迷いや否定的な言葉は一切無く、だた「よろしくお願いします。」とだけ言われた。

とにかく、深く考えていても仕方がない。

何かあるならいずれ本人が話してくれるだろう。

俺はそこで思考を切って、経理の仕事に取りかかった。

万屋イフは会社と言っても、社員は俺だけだ。

会社法が改正されて、資本金は1円から、社員も取締役も一人で会社を立ち上げる事が可能になったから、俺は会社にしたのだが、全て一人ではやはり辛い。

まあ仕事の数もたかがしれているから、辛いと言う事はないはずだけど、その理由が鬱陶しいのだ。

俳優をしていた頃は、税務署への申告は、払いすぎた税金を返してもらう為だったから、頑張って申告したのだけれど、今は払う為の申告なのだ。

何故わざわざ払う為に、仕事をしなくてはならないのだ。

更にはそれ以上に、どう説明したら良いのかわからない利益はどうすれば良いのか。

経費は?

ゴキブリを飼う為に部屋を借り、餌を買う。

部屋は倉庫とでもするのか?

餌は、バイトの二人への食事代にするか。

難しい。

収入の方も、麻雀の代打ちで100万円って、どう説明するのか。

これは領収書も出してないから、そのままポケットに入れるか。

これって脱税になるんだよな。

ああ、どうしたら良いんだ。

でもまあ、今年はあの100万円を除けば、そんなに収入は無いし、ギリギリ黒字になる程度だから、心配は儲かるようになってからしよう。

そんな事を考えながら、俺はキーボードを叩いた。


人捜しの仕事を受けてから、5日が経った。

ハチとの交信の為、実家に戻っていた華恵が、我がマンションに戻ってきた。

いつのまにか、華恵ちゃんの事も、華恵と呼び捨てにするようになっていた。

「見つけたよ。」

会うと開口一番、華恵は笑顔でそう言った。

「えっと、陳かロバートを見つけたのか?」

「うん。両方見つけたみたいだよ。」

どうやらハチから、見つけた旨、報告を受けたようだ。

「おお、よし!早速確認して連絡しよう。」

「うん。」

華恵は部屋のPCのマウスを握ると、大手検索サイトの地図を開く。

此処では最新の地図情報を、無料で見ることができる。

世の中便利になったものだ。

地図で示した位置は、都内のかなり中心だった。

「よし、そう遠くは無いから、自動車で向かおう。」

俺は華恵をつれて、ターゲットが潜伏しているマンションを目指す。

一応確認の為に、実際に自分の目で見ておきたい。

とは言っても、Gの視覚にリンクして、Gの目を通して見るのだけれど。

ただ、Gの視覚に意識を繋ぐ為には、ある程度近くまで行かなければいけない。

だから俺は、マンションの近くまで行く必要があった。

30分ほどで、ターゲットのマンションが見える所まできた。

自動車を止めて、Gを数匹放つ。

華恵も報告を受けたミツバチを放ち、案内を頼んだ。

「では、案内して。」

するとミツバチを先頭に、その後をヤマトGがついて飛んで行った。

見つけたのは高層マンションの窓からのようだ。

流石にあそこだと、Gや蜘蛛には見つけづらい。

俺は意識をGへと飛ばした。

Gの見ているものが流れ込んでくる。

空を飛ぶ感覚を、間接的に感じた。

流石に、空を飛ぶ感覚は少し怖い。

そうこうしている間に、目的の部屋の窓まできた。

カーテンがしてあって、中が見えない。

Gはベランダに舞い降りると、排気口から進入を試みた。

あっさりと中に入る事ができた。

そしてすぐに、ターゲットの二人を視覚に捕らえた。

「よし!確かにあの二人だ。連絡しよう。」

「良かった~」

喜ぶ華恵を横目に見ながら、俺は携帯電話で、山瀬さんに電話をした。

「はい、港川の山瀬です。」

「万屋イフの高橋ですが。」

「ああ、どうしたんだい?みつかったのかい?」

相変わらず声からは、優しさと落ち着きが伝わってくる人だ。

しかし本当はくえない男で、少し苦手。

「ええ。都内のマンションの一室です。」

「見たのかい?」

「一応確認はしています。」

「そっか。では、場所を教えてもらえるかな。後はこちらで捕らえるから。」

そう言われて、俺は住所を教えた。

これで後は、山瀬さん達が来て捕まえる事ができれば、仕事は終わりだ。

俺は車のシートを少し倒して、待つことにした。

一応Gには、見つからないように部屋で待機して貰っている。

特に動きは無い。

ただ待つ時間がしばらく続いた。

10分くらい経っただろうか。

パトカーのサイレンと共に、数台のパトカーと覆面パトカーがマンション前に止まった。

「おいおい、何故そんな登場するんだよ。」

案の定、部屋の中のロバートが気がついて、ベランダからパトカーを確認していた。

そして陳と言葉を交わすと、すぐに部屋を出た。

でもまあ、これだけの警察が集まれば、簡単には逃げられないだろう。

しかし、ゆっくりと入り口辺りでたむろしている警察をよそに、ロバート達は裏の駐輪場の方へと向かった。

追跡させているGの視覚には、今にも壁を乗り越えて、マンションの敷地から出ようとしている二人の姿が映る。

「やばいな。逃げられる。華恵、ハチで逃走を邪魔してくれ。俺もGでやる。」

「オッケー。」

壁の外側から、数匹のスズメバチと、大量のミツバチ、更には何匹かのGが、逃走しようとする二人を襲った。

足止めは、とりあえずうまくいっているようだ。

俺は電話する。

「山瀬さんですか?裏から逃げようとしてますよ。早く裏に回ってください。」

「へえ、凄いね。今も二人を追跡してたんだ?」

「離れた位置から、裏を確認していただけですよ。とにかく早く頼みます。逃げられても料金は頂きますよ。」

俺は言いたい事だけを言って、電話を切った。

それにしても、この山瀬って人は何を考えているのだか。

「すぐに山瀬さん達が裏に回るはずだから、ハチ達は引かせよう。」

「わかった。」

俺達は能力で意識を繋いで、虫達に戻るよう支持した。

追跡用Gだけはそのまま追跡していたが、すぐに駆けつけた警官によって捕まる二人を視覚に捕らえる事になった。

「ふぅ~。終わったみたいだ。」

「良かったわね。無事仕事が終わって。」

「今回は、見つけてくれた華恵のおかげだよ。」

「見つけたのは、この子だけどね。」

華恵が指さす所には、ミツバチが飛んでいた。

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