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十二、起床




「アレシア、私もアレシアの事好きよ。好きというか大好きというかああもう言葉には表せないっ! でもね、私は朝ご飯作らなきゃいけないの。だから早く起きなきゃいけないの。だけどアレシアが私ともっと一緒に寝たいなら……」

 私を抱き枕として利用し、耳元でぶつぶつと呟くお母さんの声で私は起こされた。まだ部屋全体が暗い青色に染められている中、耳元でそういう事されたので私の心は一瞬ドキッとさせられたよ。

「お母さん?」

 お母さんの発言の内容は、私を利用してサボタージュしようとしてるという事でいいのだろうか。あなたは何をしているの? というか、もしかして昨日の夜から抱き着いたままかい。

「あ、アレシア。起こしちゃった?」

 お母さんは体をもぞもぞとベッドの上で動かし、私と顔を合わせる。申し訳なさそうな口調で言うけど、いつまでも耳元で語りかけられてたら普通起きちゃうだろうさ。私は首を縦に振る。

「おはようございます、お母さん」

「おはよう、アレシア」

 お母さんは少しの間私に微笑みかけた後、私に頬擦りをしながら体をベッドから起こした。私とお母さんからシーツがずり落ちるが、お母さんの温もりが私を暖めてくれる。

「まだ眠いなら、寝てもいいのよ」

 ベッドから下りたお母さんは私を抱っこしたまま魅力的な提案をしてくる。だが、私にはやる事があるのだ。

「いや、起きます」

「そう? じゃあ一緒に起きましょうか」

「はい」

 私をベッドに下ろしたお母さんは衣類棚に近付き、戸を横に引いた。中には数十着の衣服が掛かっている。着替えるのだろうか。ただ、何か、お母さんの服にしては小さい気がする。さらにはやたらとフリルが付いていたり、鮮やかな原色が使われてたり、早い話が私の好みではない服が多い。極め付けは意味ありげなお母さんの笑みだ。ウフフフフ……と怪しい笑い声を上げてたり。うん、すっごく嫌な予感がする。さっさとこの場から逃げよう。

 サンダルを履いてベッドから下りた私は忍び足で部屋の出口に歩いて行く。そして

「私、皆を起こして来ますね!」

と言い残して部屋を抜け出した。

 背後から聞こえるお母さんの嘆き声を泣く泣く無視して小走りに廊下を進み、ディーウァの眠っているであろう客室に入る。案の定、ベッドではディーウァが行儀良く仰向けに眠っていた。

 私はディーウァの枕元に近付き、シーツを剥ぎ取って肩を揺すり始める。

「起きて下さいディーウァ」

「……御主人様?」

 お、存外早いお目覚めだね。目をパチリと開き、私を見つめるディーウァに相談を持ち掛ける。

「そうです、私です。お願いしたい事があるんです」

「何でしょうか?」

 ディーウァは肌寒い気温をものともせず、はだけたシーツから抜け出しベッドに腰掛ける。生地の薄いナイトガウンを着ている為、目線がもろに胸元に来てしまった私は少し動揺してしまった。ここまで精密にしなくてもいいだろうに。

「サイトの事なんです」

 おかげで考えていた前置きは吹っ飛んで、いきなり本題を口に出していた。

 まあ、それはいい。本題はサイトの事なのだから。昨日は家族と幸せ一杯に過ごしていたので考えが及ばなかったが、そろそろあいつを捜さないと可哀相だ。私と同じく精神に何かをされたサイト。私の場合は多大な魔力が何かの動きを阻んでいた為大事には至らなかったが、サイトは……彼を最後に見た時、とても苦しそうだった。

「サイトを最後に見たのは確かディーウァだったはず。何か、覚えていないか?」

「申し訳御座いません。私はあの時背後から急襲されたので、レーダーにすらデータは残っていないので御座います」

 そりゃディーウァも万能じゃないんだろうけどさ。何かないのか。少しでも手掛かりがあると助かるんだが。

「戦闘機のレーダーは背後から来る敵を探知出来ないのか?」

「はい、その通りで御座います」

「そっか。なら仕方ないな」

 となると手掛かりは、魔族の国に乗り込むでもしないと手に入らないな。他にも何も告げずに別れたイエラウ様やプルチェさん達ともどうにかして連絡を取りたいし、サハリアお……お姉ちゃんやファルサリアさんの安否も知りたい。サハリアお姉ちゃん達はロミリア共和国内部の人間だから後でお父さんに頼めば教えてくれるとして、エルフであるイエラウ様達とは独自に連絡手段を考えなくては。

「御主人。御主人は私を超深部攻撃機として【物質創造】して下さいましたね」

「そうだけど?」

「お忘れで御座いますか? 私に戦闘支援としての【物質創造】の一環として、人工衛星創造能力を付加されたでは御座いませんか」

 私の思考を遮ってディーウァが何やら興味深い話をして来た。

「何?」

 ただ、それは事実なの? 全然記憶にない。

「本当か?」

 私の懐疑的な視線にムッとするディーウァ。

「勿論で御座います!」

 きっぱりと言い放つ。ふーん、そこまで言うなら信じようじゃないか。

「でも、人工衛星と言ったって色々ある。具体的には何が出来る?」

「GPS衛星、通信衛星、画像偵察衛星、電子情報収集衛星、早期警戒衛星、地球観測衛星の中から三百機程度なら自在に配備可能で御座います」

「おぉ、すごい」

 通信衛星があれば一度あっちに行ってイエラウ様に機材を渡せば会話が可能だし、地球観測衛星があれば地図が作れる。そしてもし三百機の配備が可能なら、もしこの星が地球と同規模なら、GPSは誤差数センチ以内に収まる精度で位置特定が可能になり、通信は世界中何処でも可能になり、画像偵察は数分に一回は新しい情報が手に入り、電子情報は……いらないか、早期警戒……弾道ミサイルがこの世界にあるなら必要だな。うわぁ、夢の広がる話じゃないか。後々捜索に入るとしても、有力なデバイスになりそうだね。ただ、捜索に出たらお母さん悲しむだろうな、時期は慎重に見極めないと。私には【物質創造】の力があるんだから、家にいながらでもそれなりの事は出来るし。

「ディーウァ、そういう事なら人工衛星設置して貰えないか」

「御主人様の為ならば喜んでやらせて頂きましょう」

 やる気に満ちたディーウァの目はキラキラと輝いている。頼りがいあるね。

「設置にどれだけの期間が必要かな」

「一週間頂ければ、アメリカ合衆国にも劣らない衛星網をお見せ出来るかと思われます」

 アメリカ合衆国? あぁ、米国ね。うーん、地球の知識が若干薄れてる。一度紙に書き出した方がいいかもしれない。

「ではディーウァ。頼む」

「お任せ下さいませ、御主人様。ただ私には人工衛星を管制する能力は御座いませんので、そこは御主人様、お願い致します」

 管制能力か……L級司令船を【物質創造】すれば、出来るな。

「んー、まあ、うん。分かった」

 私は了承しておいた。


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