08 未成年だよね
兄妹は顔を見合わせた。
「君、未成年だよね?」
「ええ」
「それで産むつもりだと」
「そうよ」
兄の問いに、妊婦は胸を張ってうなづいた。
「お腹の子の父親はそれ知ってんの?」
妹の指摘に妊婦は顔を曇らせた。
「まだ……」
妹はため息をついた。
「そりゃ親もおろせって言うでしょうよ」
兄妹はそっくりな仕草でこりゃ駄目だと頭を振った。
「産むのはあたしなのよ!親とか彼氏は関係ないじゃん」
妊婦の言葉に、兄は首を振った。
「関係ないはずがない。確かに産むまでは君1人の問題だ。おろすにしろ産むにしろ、リスクは君だけのものだし、それは間違いがない。だけど君がその子を産んだ場合、君の親はその養育費なんかの負担を被るんだぞ。彼氏だって何も知らずに父親になっていたと知ったら驚くだろう。10年、20年後に、色々相続だのなんだの問題が出てくる可能性だってある。それとも、産んだら産みっぱなし、生きるも死ぬも知ったこっちゃないって言うつもりか?」
「ちゃんと自分で育てるわ!」
「どうやって?」
「もちろん働くわ」
「じゃあその間の赤ん坊の面倒は誰が見るんだ?保育園だってお金が掛かるし、住む所、着る物、食べる物。それらの費用を全部まかなうのは大変だぞ」
「兄。そんな先の話はどうでもいいんだよ!今はこの現状についてだろ!」
妹は兄を止めた。
「まず話し合うべきでしょう。彼氏とも、両親とも。その上で自分の意地を貫くって言うのならいいんじゃないの?」
「だけど、実際問題として……」
「そんな事は本人が一番わかっているよ。その本人が苦労していいって言ってるんだし、他人がとやかく言うことじゃない」
妹の言葉に、兄は渋々引き下がった。
「話し合いの決着つくまでなら家に置いておくのは構わないよ」
妹はそういった。
「でも……」
妊婦は俯いた。
「なんでそんなに彼氏に言うのが嫌なのか知らないけど、子供を産もうと考えてるなら、それを相手に言うのは義務だよ」
「だけど、産むなって言われたら……」
「そう言われたらおろすの?」
「……」
「もちろん産む・産まない、それは本人が決定するもので相手の意思は必要じゃないよ。相手が産むなって言ったって関係ない。だけど、その子供の父親は間違いなく相手でしょ。認知問題、相続問題、養育費問題、その他色々社会的にも法的にも相手に影響があるんだから、知らせないで事後承諾ってのはないんじゃないの?生まれた赤ん坊をいきなり差し出して、あなたの子だから結婚して育てなさいって言うつもりだった?」
「……」
妊婦は俯いて答えなかった。
兄妹は顔を見合わせた。